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1705/1996

悪い大人達は放っておいて休む事にしました



 いつもならユートさんやエッケンハルトさんにからかわれて、慌てたり恥ずかしそうにしたりするはずのクレアも、今は徹夜明けで俺もそうだけど、うまく頭が回らない状態で逆に二人をたじたじにさせている。

 俺自身どこかぼんやりとしているのを自覚しているし、クレアもそうなっていてもおかしくないわけで。

 だからこそ、純粋な疑問、邪な大人達と違って綺麗な考えで問い詰められるのかもしれない。

 まぁ何が言いたいかというと、結局純粋無垢である事が、邪な大人達に対抗する手段として一番有効だとわかったってところだ。


 俺もユートさん達にからかわれたり、対処に困ったりした時は、同じように純粋な笑顔で返そうと思おう。

 ……ユートさん達の言っている意味がわかっている俺が、純粋かどうかは論議する必要があるかもしれないが。

 いかん、俺も本格的に頭が回っていないな。

 ユートさんに対して溜め息を吐いてから、少しはマシになっていた眠気が再び襲ってきたし。


「ふわぁ……何はともあれ、さすがに少し寝たいので、部屋に戻ります。クレアもゆっくり休んで。それと、一緒にいてくれて凄く助かったし、色々話せて良かった。ありがとう」

「あ、はい。そうですね、私も休む事にします。お父様には、起きた後で聞きましょう。でも、そうですね……私もタクミさんの事が色々知れて良かったです。フェンリル達には申し訳ないですが、こういう機会があってよかったのかもですね」

「ははは、そうだね……」


 欠伸を噛み殺し、とにもかくにもまずは寝て休む事を優先するため、エッケンハルトさんを問い詰めようとするクレアを止め、お礼を言う。

 考えないといけない問題は残ったままだし、苦しい思いをしたフェンリル達もいるけど、クレアと二人……レオもいたけど、とにかくゆっくり話す事ができて良かったと思う。

 新しい目標もできた事だし。


「レオも疲れただろう? ありがとうな、一緒にいてくれて」

「レオ様、ありがとうございました。おかげで、夜でも暖かったです」

「ワッフ。ワファ~」

「あ……ふぁ……す、すみません」

「レオもクレアも眠いんだから仕方ないよ」


 外壁を乗り越えた後こちらを見ていたレオにクレアと一緒に声をかけ、お礼を言うと誇らしげな返事をした後すぐ、欠伸をした。

 俺はさっき欠伸を噛み殺したばかりだけど、クレアは油断していたんだろう、欠伸をして恥ずかしそうに謝るのに笑いかける。


「本当に、夜何かあったとしか思えない雰囲気のように見えるのですが……」

「タクミ君には誤魔化されたけど、本当に何かがあったんじゃないかな……?」

「それはつまり、男女としての?」

「ほら、見られている方がいいって言う人もいるからね。タクミ君とクレアちゃんが、そんな趣味だとは思わなかったけど」

「むむぅ、さすがにそれは父として複雑な気持ちになるのですが……」


 などと、屋敷へと向かう俺やクレア、レオの後ろからエッケンハルトさんとユートさんの話声が聞こえた。

 ……俺やクレアを変な趣味にするんじゃない、と突っ込みたいけどそんな元気もなく、そうするとさらに休む時間が遠ざかる気がしたから、無視する事に決めた。

 邪推して、邪な考えばかりの大人……悪い大人に昇格したあの人達、疲れている時はスルーするに限るな……。


「はぁ……ようやく部屋に戻れた。疲れている時に、あの二人は強烈だなぁ」


 屋敷に戻り、休むから朝食はいらないと伝えた後、クレアと自室の前で別れてそれぞれの部屋に入って、思わずため息混じりに呟く。

 エッケンハルトさんは、大柄だしでなんとなく圧力なようなのもあるし、ユートさんは色々とめんど……厄介だからなぁ。

 疲れと眠気は、ギフトの力を消費し続けていたからっていうのもある気がするけど。

 さすがにロゼ・ワインで回復できるとはいえ、使い続けていると同義な状態を続けていれば、疲れも溜まるんだろう。


 ちなみに、部屋の前でクレアと別れる前に日課とも言えるハグはしておいた。

 忘れると後々クレアが拗ねてしまう可能性もあるんだけど、それだけじゃなく、夜通しずっといてくれた事や、話しを聞いてくれた事に対して感謝を伝えたかったから。

 クレア自身疲れや眠気で忘れていたのか、ハグした後は恥ずかしそうにしていたけど……。


「ワフゥ」

「パパ、ママ、おかえりなさい!」


 そんな事もありつつ、部屋に入って一息とばかりに息を吐くレオ。

 そんな俺達を迎えてくれるのは、満面の笑顔で元気そうなリーザだ。

 疲れてさらに眠い時に、子供の元気さは辛い……と思う人もいるだろうが、俺とレオにとっては疲れを吹っ飛ばしてくれるような癒しだ。


「リーザ、ただいま。いや、おはようかな? 昨日はよく寝られたかい?」

「ワフ、ワッフワフ」

「うん。ライラお姉さんがね、ずっと一緒にいてくれたから大丈夫!」

「そうかぁ、良かったなぁ。――後で、ライラさんにはお礼を言っておかなきゃな」


 リーザも俺達と一緒に厩舎に来たがったけど、いろんな事情でライラさんに任せた。

 そのライラさんは休んでいるのか、今朝はまだ見ていないが……リーザが懐いているのもあって、ちゃんと寝られたみたいだ。

 あんまり一人で寝たがらないリーザは、基本的に俺と一緒に寝るのが好きというか、そうじゃないと安眠できないみたいだからなぁ。


 少しずつ、慣れて行ってもらわないと……親離れじゃないけど、リーザも成長しているわけで、いつまでも俺と一緒のベッドで寝るわけにもいかないからな。

 寂しいとは思うけど、それも子供の成長という事だろう。


「んー? パパもママもおねむなの?」


 さすがリーザ、とここで褒めるのは親バカなのだろうか? ともかく、俺やレオの様子に気付いたリーザは、俺達の前で首を傾げた。


「まぁ、ずっと起きてたから。さすがに眠いよ……」

「ワァフ……」


 ぐっすり寝て元気なリーザに癒されたとはいえ、眠気や疲れが全てなくなるわけじゃない。

 人には精神で乗り越えられる部分もあれば、どうしたってあらがえない限界があるんだから……なんて大層な事を考えるのも寝不足のせいだとしておこう――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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