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1703/1997

フェンリル達の様子を視てもらいました



「と、とにかく朝なのよう。朝のフェヤリネッテちゃんの総回診なのよう」

「……それ、絶対ユートさんから言うように言われたよね、フェヤリネッテ?」

「ん? そうなのよう。こう言えば、皆おとなしく視させてくれるって言っていたのよう」

「はぁ……」


 有名なドラマのセリフ……まぁ、名前とかはフェヤリネッテになっているけど。

 何故知っているかと考えれば、答えはすぐにわかる。

 俺がここにいる以上犯人はユートさんしかいないし、知らないはずだからなぁ。


 後フェヤリネッテ、そういう時のニュアンスは視るじゃなくて診るだけど……まぁこれはどっちでもいいか。

 結局、体調を診るわけで、そのためには魔力を視る必要があるんだから。


「そういえば、欠伸の話をしているくらいから、フェンリル達の寝息は聞こえていたけど、苦しそうな鳴き声は聞こえなくなっていたっけ」

「そうですね、言われてみれば……でしたら、もうフェンリル達は?」

「それを確認するために、私が来たのよう。早起きしたのよう。ゲルダちゃんと寝るのはやすらぐのよう」


 徹夜した俺達とは違って、フェヤリネッテはばっちり寝ていたらしい。

 まぁ、フェンリル達を見守る役目は俺達なんだからそれは当然なんだけど……頭の奥にぼんやりとある眠気と体の重さも手伝って、なんとなく釈然としない気持ち。

 早起きしてくれたみたいだし、気にしてくれているのは間違いないから、別にいいか。

 あと、寝る時はいつも一緒だろうに、ゲルダさんとの寝心地は今必要ない。


「それじゃ、調べるのよう」

「結局、視るから調べるになってるし……どっちでもいいけど。とにかく頼むよ」

「任されたのよう」


 それからしばらく……といっても、触診などもなくただフェヤリネッテがふわふわ飛びながら、フェンリル達を文字通り目で見て、魔力を視るだけなのでそんなに時間はかからない。

 大体五分程度だろうか、それで厩舎にいるフェンリル達全てを視てくれた。

 全てのフェンリル達が起きて、小部屋から出てきて並んでくれたのも早く終わった理由の一つだろうけど。

 話し声だけでなく、単純に自然と目が覚めたフェンリルもいたようだけど、フェンリル達は朝早いんだなぁ……野生としては、暗い時は寝て明るい時に起きて活動するというのは理にかなっているのか、その野生が残っているのかはともかくとして。


「このフェヤリネッテちゃんが保証するのよう。フェンリル達の魔力の乱れは完全になくなっているのよう!」


 俺達と並んでいるフェンリル達の間で、ふわふわと浮かんでいるフェヤリネッテが、腰……がどこにあるのかモコモコの毛でよくわからないけど、とにかく腰らしき場所に両手を当てて、ふんぞり返るようにしながら宣言した。

 良かった、ちゃんとフェンリル達は元気になって、俺が作ったゼンマイの効果もあったって事だな。

 一晩程度と言ったフェヤリネッテの見立ても正しかったみたいだし、並んでいるフェンリル達には当然カナンビスの影響を受けていたフェンリルもいて、少し前のような体調の悪さは感じられないしな。

 ちなみに、体調が悪くなったフェンリル以外もフェヤリネッテが視たのは、念のためだ。


 カナンビスの薬……香りの本には記されていたけど、基本的に未知の薬に近いからな。

 近くにいたフェンリル達にどんな影響があるかわからなかった。

 夜を徹して見た限りでは、他のフェンリル達の体調が悪くなる事はなかったし、今も元気に尻尾を振っているから大丈夫なのはわかっているけど。

 だから念のため、だな。


「はぁ、安心しました。これでもし、次にカナンビスのせいで何かあっても、タクミさんが作った薬があれば大丈夫ですね」

「うん、まぁそうなんだけど……でもなぁ……」


 ゼンマイは間違いなくカナンビスに対抗するための植物、というわけではない。

 単純に、フェンリル達の体内で悪さをしている、つまり魔力を乱している毒素を抜くための薬草だ。

 多分カナンビス以外でも効果はありそうではあるけど、それはともかくとして……また同じ事が起こるのなら、もっとちゃんとした薬草を作った方がいいと思う。

 治るまでに時間もかかるし。


 時間に関しては、飲んでもらう量が少なかったとかかもしれないが。

 まぁそれ以前に、同じ事がまた起こらないのが一番なんだけどな。

 森の調査をフェンリル達に協力してもらっているのを、考え直さないと……。


「タクミさん、何か気になる事があるのですか?」

「ワフゥ?」

「どうしたのよう?」


 俺が考え込んでしまったのを気にして、クレアやレオ、フェヤリネッテが窺うようにしている。

 フェンリル達も、首を傾げてこちらを見ているな。

 どうでもいいけど、レオ程じゃなくても大きな体をしているフェンリル達が並んで、一斉に首を傾げている様子は面白い。


「んー、いや。なんでもないよ」


 ここで考える事じゃないし、エッケンハルトさんやルグリアさんなどとも話さないといけないだろうから、とりあえず首を振って誤魔化しておく。


「とりあえず、体調が悪かったフェンリル達はあまり深く寝られずに、休めなかっただろうから……今日は無理せず、眠いならここで寝てもらうのがいいかな」

「そうですね。ふふ、それにそれはタクミさんも、ですよ?」

「ワッフ」

「まぁね。クレアやレオもだけど」


 フェンリル達には無理をしないようにしてもらうとして、俺達も寝ていないので無理はできない。

 元気になったフェンリルを見たのも手伝って、寝不足よりも徹夜明けのハイな状態の自覚もあるし、今日は無理せずゆっくりさせてもらおう。

 どうしても考える事があるから、気になってしまうけど……。


「……さすがに外に出ると、朝陽が眩しい」

「目がしょぼしょぼします……」

「ワッフワフ~!」

「レオは元気だなぁ」


 フェンリル達が厩舎から駆け出るのと一緒に、俺達も屋敷に戻るために外に出た……のはいいけど、地平線の向こうから世界を照らす太陽が、容赦なく俺とクレアの目を襲う。

 厩舎の中は十分に彩光が取れているけど、早朝だとまだ少し薄暗くもあったからなぁ。

 目が慣れるまでは少し痛みも感じるだろうけど、こればっかりは仕方ない。

 レオの方は、フェンリル達に混じって厩舎の外を駆け回っているけど。


 徹夜明けでも元気だなぁ……さすがシルバーフェンリルってところか。

 駆け回っているのは、ずっと伏せの体勢で俺達に寄りかからせてくれていたから、体を解す意味もあるのかもしれない。

 ありがとうな、レオ――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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