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1702/1997

そして夜が明けました



 クレアやレオと話し、外へと向かったフェンリル達は外にいる人達に任せる事にした……体調の悪いフェンリルでもないからな。

 厩舎の外では、一応俺やクレアがいる事もあって護衛の人達が数人、交代制で見張ってくれているはずだ。

 いつもは、屋敷の警護のついでに見廻りをする人がいるくらいだけど。

 ……レオもいるし、フェンリル達が大量にいる厩舎で、何か危険な事が起こるとは思えないけど……カナンビスの薬の事もあるし、作って森の中で使った何者かの考えがわからない以上、警戒するに越した事はない。

 と、マリエッタさんが言っていた。


 エッケンハルトさんとユートさんは、ニヤニヤしながらできるだけ少数か護衛を付けなくても……とか言っていたけど。

 あれは、夜通し俺とクレアが一緒にいる事に対して、変な考えを持っている顔だった。

 ちなみに、エルミーネさんやセバスチャンさんもエッケンハルトさん程じゃなくとも、面白そうと言っているような表情が隠せていなかった。

 ほんともう、公爵家の使用人は……一部だけだろうし、そこにユートさんも混じっているけど。


「あ、戻って来た」

「ふふ、眠そうな顔が可愛いですね」


 少しして、厩舎を出て行ったフェンリルがおぼつかない足取りで、寝ぼけ眼のまま戻って来た。

 野生の本能は消え去っているんじゃないか? と思えるくらい無防備に眠そうな、というかほぼ寝ているような顔だなぁ。

 確かにクレアの言う通り可愛いけど。


「うん、そうだね……っと、よしよし。もう少しで完全に夜が明けるけど、まだ大丈夫だからお休み」

「お休みなさいね」

「ガフ~」

「ガゥ~ン」


 戻って来たフェンリル達は、俺達の横を通る際に帰って来たという証明なのかなんなのか、俺やクレアに鼻先を寄せて頬をこちらに擦りつける。

 寝ぼけているのかな? と一瞬思ったけど、とりあえず撫でると満足したらしく、まだ眠そうな鳴き声を発して自分達の小部屋へと戻っていった。

 フェンリル達にとっては大事な事だったのかもしれないし、ゆっくり寝られるなら特に気にしない。

 それにしても、寝ぼけ眼でも間違えずにちゃんと元いた場所に戻れる、これが帰巣本能か……違うかな?


「ふぁ……あ、すみません」

「ううん。さすがに眠くなっても仕方ないよ。ふぁ~……」

「ワファ~……」


 窓の外から朝陽が差し込み、厩舎の中も明るくなってくると、さすがに眠気が強くなってきたからかクレアが欠伸を噛み殺した。

 でもそれは欠伸である事には変わらず……俺やレオにもうつって、思わず大きな口を開けてしまった。

 まぁ、いつもは多少の夜更かしくらいはするとしても、基本的に規則正しく生活しているからな、俺もクレアもレオも。

 完徹なんて、日本での仕事で残業した時以来だけど、眠くなるのも当然だし欠伸くらいはでるうえ、うつったら我慢なんてできないよな。


「タクミさんやレオ様まで……大丈夫ですか?」

「うん。ん、ん~……ふぅ。欠伸ってなんでかわからないけど、うつってしまうものだからね。俺もレオもクレアも、ずっと起きていたせいってのもあるけど」


 眠気を追い払うように、座ったままでレオに寄りかかっていた背中を離して、上体だけを伸ばしつつ深呼吸。

 こうするだけでも、少しはマシになるもんだ。

 クレアも俺を真似るようにしていたけど……そうすると、大きめの胸部装甲が強調されて……いやいや、朝から何を考えているんだ。

 頭を振って、邪な考えは振り払っておく。


「うつる? そうなんですか?」

「……うん、そうだよ。理由は解明されて……いたっけな? それらしい理由とかは何か言われていたと思うけど……」


 クレアは俺の邪念に気付く事はなく、欠伸がうつると言った方に興味がいったようだ。

 欠伸が移る理由ってなんだっけ? 眠気で上手く回らない頭を回転させる……確か大きく脳波がどうとか、色々それらしい事が言われていたのを聞いた事はあるけど。

 電話口とかでもうつったりするし、本当に正しいかどうかわからないし、理由はわからないが正しいかな。


「そうなのですね。でも確かに言われてみれば、誰かが欠伸をすると、他の誰かも欠伸をすることが多い気がします」

「そうだね。あ、そういえば……」

「どうしたんですか?」

「前に、親しい間柄だからっていう理由も聞いた事があってね。まぁいくつかあるそれらしい理由の一つなんだけど。だから、人間同士だけじゃなくて、人と犬……今で言うと俺という人間と、レオというシルバーフェンリルにもうつったってところかな」


 欠伸がうつるのは人同士限定ではなく、人から犬、犬から人という事もあるみたいだからなぁ……犬に限らず猫とかでもかな。

 あくまでそれらしい理由っていうだけで、あまり親しくなくてもうつる事はあるんだけども。


「じゃあ私とタクミさん、それにレオ様……ここにいる私達が親しいって事ですね」

「正しい理由かはともかく、それはそうだろうね」

「ワッフ」


 妙に嬉しそうなクレアに笑いかけつつ、レオと一緒に頷く。

 ここでこうして、一緒に毛布に包まりながらレオに寄りかかっている状況で、親しくないなんてことはないからな。

 俺もクレアが嬉しそうにする理由がなんとなくわかったから、もう欠伸がうつる理由はそれでいい気がした。


「おやようなのよう! 元気してるのよう?!」

「フェヤリネッテ!?」

「っ! びっくりしました……」


 クレア達と話していると、突然厩舎の中に響く大きな声と共にフェヤリネッテが乱入。

 静かだったから驚いた……朝から元気だなぁ。


「ワフワウ!」

「ご、ごめんなさいなのよう……」


 レオが抗議するように、というか静かにしろ! と言うように鳴くと、途端におとなしくなって謝るフェヤリネッテ。

 そう言うレオの鳴き声も、結構大きかったが……ほら、小部屋からフェンリル達が顔を出している、目が覚めたんだろう。

 フェヤリネッテの声とレオの声、どちらで起きたのかはわからないけど。

 そんな周囲の様子を見つつ、テーブルに置いてある時計を見てみると、もう完全に朝と言っていい時間だった。


 朝食までは時間があるし、普段でも起きるには少し早めだけど。

 厩舎の窓からは、明るい日の光が差し込んでいた……クレアやレオと話しているのが楽しくて、こんな時間になっていたのに気付かなかった。

 久しぶりの完徹だけど、俺一人だったら多分気付かぬうちに寝ていただろうなぁ、昔何度も何度も経験した寝落ちってやつだ――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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