自信が持てるよう頑張ろうと決意しました
「レオ様だけでなく、『雑草栽培』があるおかげでティルラ、それからランジ村、ラクトスとその周辺の病も収める事ができました。さらに今日はフェンリル達も……忘れてはいけないのが、シェリーとリーザちゃんも、ですね。全部、タクミさんがいたからなんですよ?」
「うーん……まぁ、そう言われると確かに?」
もしかしたら、他の可能性というのもあったのかもしれないけど……助けになれたというのは間違いない。
それくらいはさすがに俺でもわかっている。
『雑草栽培』や、レオの功績が大きいとは思うけど、それもクレアに言わせれば俺がいたからって事なんだろう。
「だから、タクミさんは自信を持っていいんです。『雑草栽培』というギフトも、しっかりタクミさんの中に根付いて、有効に使っているのですから。タクミさん以外だったら、どんな使い方をしていたかわかりませんし、誰かの助けになっている保証もありません」
やった事はないし、やらないように気を付けているけど……おそらく『雑草栽培』は毒草とかも作れるだろう、それこそカナンビスも作れるかもしれない。
いい事、悪い事、どちらにでも使おうとすれば使える能力だ。
それを人のために、誰かの助けにと使っているのは俺の考えだ……まぁそのついでに、ちょっと生活のため商売のタネに使わせてもらっているけど。
「タクミさんは、偶然授かった能力のように言っていますけれど、私達から見れば、それも間違いなくタクミさんの力なんです」
「そう、だね」
努力して身に着けていないとしても、『雑草栽培』が使えるのは間違いなく俺だけ。
ユートさんが特に注意していないし、気の遠くなる程長い年月ギフトを使い続けているから、何かのきっかけで消えてしまうような頼りない能力でもないと考えられる。
「これから先、タクミさんがずっと付き合っていく能力なんです。自信を持ってあげた方がギフトも喜ぶと思いませんか?」
「……そうかもね」
驚いた、俺が考えようとしていた事をクレアが言うとは。
でもそうだな、偶然か必然か、そこは重要ではなく俺の能力であるのならば、それをちゃんと受け入れて自信を持たなくちゃな。
それもまた、自分を認めて自信を持つという事に繋がるんだろう。
「グルゥ……」
「おっと。よしよし、大丈夫。もう少し我慢しようなー?」
「ふふ。フェンリルもタクミさんを頼っているんですよ。真っ直ぐにタクミさんの所に来ましたから」
話している俺とクレア、それからレオの所に小部屋から出てきたフェンリルの一体が、俺に鼻先を寄せて来たので、話しかけながら撫でる。
クレアも微笑みながら撫でている。
話し声で寝るのを邪魔したかな? と一瞬思ったけどそうではなく、カナンビスのせいで体調が悪いフェンリルが気を紛らわせるために来ただけみたいだ。
「……そうだね、クレアの言う通りもっとちゃんと、自信を持てないじゃなくて持てるようにならないとね」
しばらく撫でられて、満足したらしいフェンリルを見送り、小部屋に入っていく後姿を見ながら呟く。
それなりに懐かれている自覚はあるし、頼られているのならその俺が自信がないようではいけないな、とも思う。
クレアが言ってくれた、まとまっていないとも言っていたけど、それでも言葉を尽くしてくれた事を忘れないようにして、努力していかないとな……。
自信を持つために、努力しないといけないのはちょっと情けないが、えてしてそういうものなのかもしれない……何もせず、頑張る事さえしないのに自信なんて付くものじゃないだろうから。
「えぇ。自信満々になり過ぎて、心配をかけるばかりというのも困りますけどね?」
「言うだけ言っておいて、それはないんじゃないかなぁクレア? まぁ、もちろんそんなことにならないように気を付けるけどね」
「ワッフワッフ」
いたずらっぽく笑うクレアに、俺も同じく笑い返しながら、レオも笑うように鳴く。
大半は俺が吐露した話のせいな気がするけど、ちょっと重い雰囲気になったのを払拭しようと冗談交じりで言ってくれたんだろう。
おかげで、なんとなく気持ちが楽になった。
色々と気を使わせちゃったなぁ……うん、頑張ろう。
なんて考えていた矢先に。
「はい、タクミさん。喉が渇いたんじゃないですか? ちゃんと、ロゼ・ワインを飲みましょうね」
「あー、うん。そうだね……ありがとう」
ちょっとおろそかになっていた、ギフトの力を回復するためのお酒……ロゼ・ワインを飲むのを忘れていたのを、クレアが気付いてグラスに注いでくれた。
ほんと、頑張らないとなぁ……。
「クレアの方も、喉が渇いてない? ずっと話し込んでいたし、少し乾燥しているから」
フェンリル達がいるからというわけではないだろう、藁が敷き詰められている所が多いからとかかな? とにかく、フェンリル厩舎は夜でも少し乾燥している空気が流れている。
だから、クレアの方も喉が渇いていないかと思って聞いてみる。
気遣われたから、俺からも気遣わないと見習った……という事でもある。
「ふふ、そうですね。私も少し喉が渇いたかもしれません。私も頂きますね」
「どうぞ」
なんとなく、俺の考えを見透かされているような笑みを湛えるクレアに、テーブルに置かれている水をグラスに注いで渡す。
クレアは酔った時に、前後不覚と言うか……色々とやらかしてしまった経験があるため、お酒は基本的に控えている。
まぁ、薬酒や少したしなむ程度に飲むくらいはするんだけど、さすがにフェンリル達の様子を見るためにここにいるわけで、酔わないまでもお酒を飲む気にはなれないので水を飲んでいた。
さすがにレオにお酒を飲ませるわけにはいかないし、飲もうともしないので俺一人で飲んでいるのは、なんとなく絵面的にどうなんだろう? と思ったりもするけれど。
でも、そうしないとギフトの過剰使用になってしまって、力の枯渇みたいな感じで意識を失う可能性があるから仕方ない、と自分に言い聞かせている。
元々ユートさんもそうだったらしいけど、あまりお酒を好まないのにギフトを使うためにお酒を飲まないといけないなんて、便利な能力なのか何なのか少しわからなくなってしまうなぁ。
もしかするとそうする事で、釣り合いを取っているとかかもしれないけど……いや、考えすぎか。
お酒好きな人だってギフトを持つ可能性はあるだろうし、今ではユートさんも結構なお酒好きっぽいし――。
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