レオの朝食を忘れそうになってしまいました
「おはようございます。朝食の用意が出来ておりますよ」
「おはようございます。ありがとうございます、頂きます」
翌日、少しだけ遅めに目を覚ました俺は、すぐに身支度を整え、宛がわれた部屋を出た。
村長であるハンネスさんの家は、他の村人達の家よりも少し大きく作られていて、空き部屋があったようだ。
息子夫婦……ロザリーちゃんの両親は別の場所に住んでいて、今この家にはハンネスさんとその奥さんの二人で住んでいるらしい。
ロザリーちゃんは、病気に罹った両親を助けたいと考えて、ハンネスさんと一緒に村を出たと、昨日の宴の途中に聞いた。
「美味しいですね」
「公爵様の屋敷で出す物より、粗末な物でございますが……」
「全然、そんな事ありませんよ。屋敷で食べる物も、これも、どれも美味しいですよ」
居間に来て、奥さんが用意してくれた朝食を頂く。
朝食は、屋敷で出る料理と比べると見た目には劣ってしまうが、それでも味はどちらも美味しいと言えるものだ。
特に野菜が多く入った暖かいスープは、明け方まで起きてた体に優しく染み渡るように感じる。
「おはようございます。お早いお目覚めですね」
「ハンネスさん、おはようございます。寝るのが遅かったので、少し遅く起きてしまいましたが……」
お婆さんの料理に舌鼓を打ちながら頂いていると、別の部屋からハンネスさんが起きて来た。
寝る時には、空が明るくなり始めてたから数時間しか寝ていないが、それでも後数時間もすれば昼と言える時間に起きたのだから、早い目覚めとは言えないだろう。
……ハンネスさんは、村人に付き合って俺と同じくらいまで起きてたから、あの時間から寝るとなると、確かに早い目覚めなのかもしれないけど。
「ご馳走様でした……美味しい朝食、ありがとうございました」
「いえいえ、こんな物しか用意出来ず、申し訳ないくらいです……」
朝食を取り終わり、奥さんに改めてお礼を伝える。
奥さんの方は、謙遜しきりだったが、十分に美味しい食事だったので、俺は満足だ。
「ワウー!」
「ん? レオか?」
外からレオの鳴き声が聞こえたので、ハンネスさんの家を出ると、お座りをした状態で尻尾を振って待っているレオがいた。
「レオおはよう。よく寝られたか?」
「ワフワフ」
朝の挨拶とばかりに、レオの体を撫でる。
レオは頷きながら尻尾を振っているな……馬と一緒にしっかりと寝られたみたいだ。
「ワフ? ワフワフ!」
「ん? どうした?」
体を撫でている俺に鼻先を近づけて何やら匂いを嗅ぐレオ。
すると、何故か俺を咎めるように鳴き始めた。
どうしたというんだろうか……?
「ワフ、ワフワフ。……クゥーン」
「あ……そうか、朝ご飯か……すまない……」
どうやらレオは、匂いで俺が先に朝食を取った事に気付いて抗議していたみたいだ。
レオの方は、馬と一緒に寝てたから、当然朝は食べて無いのだろう。
馬のように干し草を食べるわけにはいかないからな……。
「すみません、ハンネスさん。レオにも朝食をと思うんですけど、何か食べる物はありますか?」
「おぉ、これは気が付きませんで……申し訳ありません、レオ様。すぐに用意させますので……」
「ワフ!」
家の入り口から、中にいるハンネスさんに声を掛ける。
レオに食べさせる物を、と聞いてすぐに出て来たハンネスさん……レオに深々と腰を折って謝っている。
レオの方は、良きに計らえ……と言わんばかりに頷く。
「こら、レオ。せっかく食事を用意してくれるんだ。偉そうにしちゃいけないぞ。ちゃんとお礼を言いなさい」
「ワフ……ワフゥ。ワフワフ」
「レオ様にそんな……頭を下げられると私の方がどうして良いのかわからなくなりますから!」
調子に乗ったレオをたしなめて、ハンネスさんにお礼を言うように言と、レオは申し訳なさそうな表情にして、謝るように頭を下げた後、お礼を伝えるように鳴いた。
そんなレオの反応に、ハンネスさんは恐縮しているようだったが、レオが癖になっちゃいけないからな、ちゃんとお礼を言って偉そうな態度を取らないようにしないと。
「昨日の余り物で申し訳ありませんが……こちらを」
「ありがとうございます。さ、レオ」
「ワフ。ワフワフー」
「本当にタクミ様の言う事を聞くのですね。旦那から聞いた時は、半信半疑でしたが……」
「レオは賢いですからね。人を襲う事もありませんし、子供好きでよく遊ぶ子ですよ」
ハンネスさんから、レオの食事をと伝えられた奥さんは、昨日の宴で余ったソーセージを温めなおして持って来てくれた。
量は昨日程じゃない代わりに、パンも一緒に用意されている。
レオが奥さんにお礼を伝えるように鳴いた後、勢いよく食べ始めるのを、奥さんやハンネスさんと一緒に眺める。
奥さんの方は、ハンネスさんから話を聞いても、シルバーフェンリルが俺の言う事を聞くとすぐには信じられなかったようだが、レオの様子を見て完全に信じてくれたようだ。
見た目で怖がられる事が少なくて、ここは良い村だなぁ、レオ。
「村長! ちょっと来てくれ!」
「ん? どうしたんだ?」
「いや、昨日薬師様と一緒に来ていた人なんだけどな……」
「……フィリップさんですか?」
「薬師様……ちょうど良かった、一緒に来てくれませんか?」
「……はぁ」
ソーセージを食べるレオを眺めていると、遠くからハンネスさんを呼びながら近づいて来る村の男性。
その村人は、村長に事情を伝えようとしているところで、聞いていた俺はフィリップさんの事だと気付いた。
俺も一緒に来るように言った村人は、フィリップさんの事で何かあったらしい。
「すみませんが、レオを見ていてもらえますか? 子供達が来たら遊ばせて下さい」
「はい、畏まりました。そろそろロザリーが起きて来る頃でしょうから、レオ様の相手をさせますよ」
「お願いします。レオ、ここでちょっと待っててくれ」
「ワフガウ」
奥さんにレオの事を任せ、俺は村人と一緒にフィリップさんの所へ向かう。
まだ食べてる途中だったレオは、ソーセージをもぐもぐさせながら返事をするように頷いた。
行儀が悪いような気がしたが……まぁ今は良しとしよう……。
しかしフィリップさん、どうしたんだろうか……?
……昨日はかなり酔っ払ってた様子だから、何か問題でも起こしてしまったのかな?
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