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徐々に効果が出ているようでした



「でも……んー、少しずつって事は量が足りなかったのかな? 一瞬でとまでは考えていなくとも、ある程度は即効性を期待していたんだけど」


 風邪のような症状の病にかかった人達に、ラモギを飲ませた時のような、すぐに治る即効性を想像していたんだけどそうではなかったみたいだ。

 量がもっとあれば、もう少し効いたのかもしれないけど。

 初めての薬草だから、どういう風に効いていくのかがまだよくわからないからなぁ……。


「量は確かに少し足りなかったのかもね。フェンリル達の体は大きいから……一部の薬って、体の大きさに量が比例するから。ただ、だからってこれ以上作って飲ませるのはやめておいた方がいいかもしれない」

「それは、俺も考えてた。フェヤリネッテの保証付きではあるけど、未知の薬草だから。絶対に副作用がないとは言えないものだし」


 ユートさんが言うように、薬というのは体の大きさ……というか体重によって量が変わったりする。

 わかりやすい例では、子供は一錠で効果を出す薬も、大人は二錠飲む必要があるとかだな。

 まぁそれだけじゃなくて、年齢によって内臓の働きが違うからとかもあるみたいだけど、まぁさすがに医者じゃないので俺はそこまで詳しく知らないが。

 ともあれ、ゼンマイもそれと近い考えでフェンリル達に一番効果的な量はもっと多くしないといけなかったのかもしれない。


 ただ、副作用などがある場合も考えると、これ以上与えるのはやめておいた方がいいかもしれない。

 薬草の図鑑にも載っていなかった、未知の物だから……今回は緊急として使ったけど、また使うのであれば安全性をできるだけ確かめてからにしたい。


「何はともあれ、フェンリル達の回復を早めたのは間違いないと思うよ。多分、魔力の動きからすると放っておいても二、三日……もしかしたら一週間くらいかかるかもしれないけど、いずれ元に戻っていたと思う。新しくカナンビスの影響を受けない限りね」

「今の状態なら、多分一日なのよう……? ううん、一晩でなんとかなると思うのよう」

「数日苦しむはずが、半日程度に短縮できたのならまぁ、頑張った甲斐があったってところかな」

「うん、そうだね。それに、治癒に向かっている状態って事は、それだけ苦しいのも薄れていくわけだから。自信を持っていいと思う。タクミ君はフェンリル達が苦しんでいるのを和らげる事ができたんだって」


 少しでも苦しむ時間が短くなったのなら、悩んで『雑草栽培』を使って良かったと思う。

 さっきまでの様子だと、何かを食べればまた戻してしまう可能性もあるし……食欲があるかはともかくとして。

 数日、状態が良くなるまで絶食しないといけない、なんて事になっていたかもしれないからな。

 食べるのが好きなフェンリル達だから、それはそれでまた別の意味で苦しんでしまいそうだし。


「あ、でも……徐々に良くなるのか。もしかして……?」

「どうしたの、タクミ君?」

「いや、シェリーの時にちょっと……薬草で回復に向かわせたけど、見た目はともかく徐々にって事は……」

「持続時間、ですか。タクミさん」


 俺の言葉を継ぐように、クレアが口を開く。

 そう、シェリーの時は見た目に酷い怪我をしていたけど、それを薬草で癒したように見せかけ、実際は少しずつ傷の治療をしていた。

 そしてシェリーの怪我が完治に近くなったところで、俺の力が尽きて気絶して倒れた……あの後目を覚ました時に、セバスチャンさんとの話しで便宜上持続時間って言っていたっけな。

 ほとんどが状況からの推測だけど、それと似たような状態であれば今も俺の体からギフトに関する力が注がれているという事になるわけで。


「一晩、かぁ。シェリーの時よりは短いから、大丈夫かもしれないけど……力が移って行っている実感がないのは厄介だなぁ」

「……あぁ、成る程。そういう事ね……つまり、今薬草がフェンリル達の体の中で効果を発揮している間は、ずっとタクミ君がギフトを使っているのと同じような状況ってわけだ。まぁ、魔法でもそういうのはあるから……人間が使うのじゃないけどね。僕もそう言うのには気を付けているけど」


 さすがに、ギフトを使う事に関しては一日の長どころか、とんでもない年数の差があるユートさんだ。

 俺とクレアの言葉から、どういう状態かを察したらしい。

 ユートさんの言葉からは、持続時間の考え方は間違っていないとわかる。


「で、でしたら、タクミさんは休んだ方がいいのではないでしょうか? フェンリル達の様子は、私達が見ますので」


 焦ったように、俺へと言い募るクレア。

 倒れた時目の前にいたから、特に心配してくれるんだろう。

 それは嬉しいけど……。


「けど、休んだからってどれだけ効果的なのか、わからないんだ。ギフトに使う力は、多分寝ている方が回復するんだろうけど……」

「それでも……あんな、またタクミさんが倒れる姿は見たくありません。少しでも休んだ方がいいのなら、その方が……」


 拳を握ってそう言うクレアの顔には、全力で心配している様子が見て取れる。

 心配をかけてしまって申し訳ないと思うけど、俺だからかもと考えると嬉しくもある……と今思うのはいけないかな。

 そんなクレアの様子を見たからではないだろうけど、ユートさんが話し始める。


「不思議だよねぇ。起きていてもいいんだけど、寝ている方が回復する気がするし、寝なくても回復するような気がする時もある。しかも、どれだけの力を使っているかとか、どれだけ残っているのかとかは、その人ごとの経験則でしか測れない。僕は長いからまだしも、タクミ君はまだその辺りははっきりとわからないんじゃないかな?」


 どうでもいいけど、ユートさんはギフトの事を隠す気があるのかちょっと疑問だ。

 これだけ詳しければ、ユートさんもギフトを持っていると考える人も出てきそうだし……まぁ、すぐ近くには俺とクレア、リーザとレオくらいしかいないからいいのかもしれないが。

 クレアは俺が話した事をユートさんは知っているし、レオやリーザの前ではある程度ユートさんも話しているから、大丈夫だとは思うけども。

 レオはともかく、リーザはよくわかっていない様子だしな……ともあれ俺のギフトに対する力の話だ――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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