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何故か酔う事がありませんでした



「ここのワインは~、良い物だな~。ちょっと飲み過ぎちまったよ~。タクミ様もどんどん飲むと良いぞ~」

「ちょっとどころではなく、かなり飲み過ぎのように見えますけど……」


 呂律が怪しくなるまでは行って無いが、動きはフラフラしているため見ていて不安だ。

 それに、途中で合流してからずっと敬語を使っていたはずなのに、今では砕けた口調になっている。

 一応、俺に様を付ける事は忘れて無いようだけど……まぁ、本来様を付けなくても良いんだけどな。


「あっはっはっは! 何もない護衛の仕事だけかと思ったら、こんなに良い事があるなんて~思わなかった~なぁ。久しぶりに良い酒が飲めてら~」

「どれだけ飲んだんですか……ちょっと休憩した方が良いんじゃないですか?」


 酔っ払い相手は得意じゃない。

 俺も結構ワインを飲んでるのにフィリップさん程酔ってないのは、よっぽど多くのんだのか、それともフィリップさんがお酒に弱いのか……。


「大丈夫だ~よ~。ここのワインは強くで有名だから~、飲める時に飲まないと~。普段は高くて手が出せないし~」

「ワインが強い……?」


 段々何が大丈夫なのかわからなくなって来たフィリップさんだが、その中でワインが強いと言っていたのが気になった。

 酒類で強いと言えば、アルコール度数が高いという事だと思う……値段が高いのは美味しさから納得出来る事だ。

 当然だか、度数が高ければ少ない量で酔ってしまう。

 お酒に強い人も、弱い人も関係なく、度数が高ければ高い程酔いやすいというのは当たり前。

 フィリップさんがお酒に強いのか弱いのかわからないが、結構な量を飲んでる俺が酔わないのはおかしい気がする……俺、ビールでも缶1本で酔い始めるくらいなんだが……。


「あはは~ははは~。タクミ様も楽しんで下さいね~」


 笑いながら、明後日の方向にフラフラと移動するフィリップさんを見送った後、広場に集まっている他の村人達の様子を窺ってみた。

 ……フィリップさんは、周りに人がいるから大変な事にはならないだろう……飲み過ぎて変な事をしないかだけが心配だけど……。

 他のテーブルで楽しそうにワインを飲み、料理を食べる村人達は、半分以上の顔が赤くなって酔っているように見える。

 病気は治ったから、それが原因で顔が赤いという事は無いだろう。

 さすがにレオと遊んでる子供達は、お酒を飲んだりはしていないが、成人してるように見える人達はほとんどが飲んでいる。


「……酔ってない人は、そもそもあまり飲んでないな……」


 顔が赤くなく、普通の様子でいる人はほとんどが、ワインの入ってる器をテーブルに置いたままで、料理を食べる事に集中している。


「タクミ様、どうかなされましたか?」

「いえ……何かあったというわけではないんですが……」


 俺が村の人達の様子を見ている事に、疑問を持ったハンネスさんが話しかけて来た。


「このワインですが……結構酔いやすいんですか?」

「そうですね……私はあまり酔わないので、詳しくはわからないのですが……村の者達は飲むとすぐに酔うと言っていますね。それに、美味しさも相まって酔いやすい事も評判なようです」


 予想通り、ここの村で作ってるワインは度数が高いようだ。

 酔いやすい事が評判に繋がる理由は俺にはわからないが……値段が高くても、少ない量で酔えるからコストパフォーマンスが良い……という事かな……?

 もしかしたら何かに使うとか、違う理由があるかもしれないが、今はその事は別にいいか。


「おや、タクミ様。もう樽を空にされたので? 代わりを持って来ましょうか?」

「……いえ、大丈夫です。一応、水をお願いします」

「わかりました」


 俺のテーブルの横にある樽は、ハンネスさんが持って来た時、並々と入っていたのは間違いない。

 さすがに俺一人で全て飲んだわけじゃないけど、美味しかったから調子に乗ってガブガブ飲んでいたのは間違いない。

 それだけの量を飲んだにも関わらず、俺は酔いを感じる事も無く平然としている。

 ……何でだろう……?


「おかしいな……俺、こんなにお酒に強く無かったんだけどな……」

「ワフ?」


 考えてる疑問を呟くと、隣で満腹から少し眠そうにしているレオが首を傾げた。

 レオの横には、遊びに来たのだろう子供が数人、モサモサの毛にじゃれついている。

 尻尾を使って子供達の相手をしているようだ……器用だな……。


「レオ、何故か酔わないんだけど……なんでだ?」

「ワフ……ワフゥ?」


 思わず隣のレオに聞いてみたが、当然ながら理由を知ってるわけがないよな。


「タクミ様、お水をお持ちしました」

「ありがとうございます」


 首を傾げるばかりのレオをそのままに、ハンネスさんが持って来てくれた水を受け取って飲んだ。

 ……この世界に来て体質が変わったとかか……? でも、酔わない事以外に今までの感覚と違う事は無いんだがなぁ……ギフトが使える事くらいか……。

 お酒に酔わないという事が、酔っていい気分……という経験では無く、気分が悪いという経験しかしていない俺にとっては良い事なのかもしれないが……。

 酔わないのなら、もっとワインを飲んでも良かったかな……? そんな事を考えつつ、念のため水で我慢して村で行われた宴は深夜まで続けられた。

 ……家の中に入れないレオは、さっさとフィリップさん達が乗って来た馬の所に行って寝入ってたが……俺もさっさと寝れば良かった……二日酔いは無くとも、明日は寝不足になるだろうな……。


「そう言えば、酔っぱらってどこかへ行ったフィリップさんはどうしたんだろう?」


 宴の後、ハンネスさんの家に用意された俺の寝床に入った時、フィリップさんの事を思い出した。

 千鳥足でフラフラしてたから、変な所に迷い込んでないかちょっと心配だ。

 朝起きたら、知らない村人の家に迷い込んでた……何て事になってなければ良いんだけど……。


「起きたら隣に知らない女性が……何て事になってたら、フィリップさんが屋敷に帰った時メイドさん達から白い目で見られそうだなぁ」


 そんな事を呟きつつ、ほんのり空が明るくなり始めたのを窓から見て、就寝した。

 起きる時間は近いけど、出来るだけ寝ておかないとな……。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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