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なんとかフェンリル達に薬を飲んでもらいました



「ワウゥ、ワフ?」


 こちらを窺うように、でも少しだけお尻を高くして警戒しつつ、何をしたらいいの? と問いかけるような鳴き声のレオ。


「よしよし。無理矢理なんて飲ませないからなぁ。えらいなぁレオは。それでなレオ? レオの言う事なら、多分嫌でも聞くだろうから……フェンリル達に、あの桶に入っている液体を飲むように言って欲しいんだ」


 警戒しているレオを撫でながら、フェンリル達に声をかけて欲しいとお願い。

 絶対服従、と言う言葉が頭に浮かぶけど、とにかくフェンリル達にとってシルバーフェンリルの言葉は絶対らしい。

 だから、そのレオから言ってくれれば匂いが嫌でも飲んでくれるだろう、というのがこの手段の肝だ。


 昔の記憶を利用して、ほとんどレオを脅しているようなものだから、レオだけはもしかしたら納得してくれないかもしれない方法だ。

 ……レオには後で、ご褒美をあげないとな。


「ワフゥ……ワウ」


 気が進まないながらも、溜め息を吐いた後に頷いてくれるレオが、フェンリル達の方に体を向けて少しだけ近付く。

 フェンリル達の事が心配なのはレオも変わらないけど、薬を飲むのを嫌がる気持ちはレオもわかるので、無理強いはしたくなかったんだろう。

 すまないなレオ、頼ってしまって。

 だって、もし無理矢理飲ませようとする場合は、フェンリルの口に手を突っ込むとかそういう事をしないといけないだろうから……危険なんだ。


 フェンリル達がそうしようと思わなくても、反射的に口を強く噛み締めたら、どうなるかは推して知るべしだ。

 それだけでなく、反撃とかされたら俺達にはどうする事もできないだろうしな。


「ワフ、ガウワウガフワフ!!」


 語気強めに、レオがフェンリル達に向かって鳴く。

 内容としては、そこにある薬を飲まないと良くならないからさっさと飲め、みたいな感じだ……さすがに、俺が訳したように雑な命令口調ではなかったけど。


「ガ、ガウゥ……」

「グルゥ……」

「ガゥ……」



 半分のフェンリルが、レオの声を聞いて渋々と言った感じで桶に口を近づける。

 ただ、まだもう半分のフェンリルは抵抗しているようだ。


「ワウガウ! ワッフワウガウ!!」


 今度は、俺が作った物だから大丈夫だし、元気になるから我慢しろ、みたいな事を言ったようだ。


「ガ、ガフ……」

「ガウン……」

「グルル……」


 残っていたフェンリルも、仕方なさそうに桶へと口を向けた。

 さすがに全てのフェンリルが一度に口を付けて飲める程、大きな桶じゃないから順番だけど、とりあえずゆっくりと、恐る恐るではあるがゼンマイの薬を飲み始めてくれた。

 ようやくだな……とりあえず、さすがレオだ。

 ちゃんとフェンリル達も言う事を聞いてくれる。


「よしよし、ありがとうなレオ。本当に助かった。……これで、フェンリル達も元気になればいいんだけど」

「ワウゥ……」


 レオを褒めながら、撫でてやりつつフェンリルの様子を見守る。

 レオも、心配なのは変わらないのでさすがにいつもみたいに、撫でられて気持ち良さそうな声を出さず、俺と同じく見守っていた。


「ペロ……ペロ……ガフッ、ガハフッ!」


 ゼンマイの味が悪かったのか、咳き込みながらもなんとかある程度飲んでくれるフェンリル。

 そういえば、匂いはともかくどんな味がするかまでは調べていなかったな……ちょっとした興味から、後で味見してみるか。

 フェンリル達だけに、不味い物を飲ませるのは悪いからというのと、一応俺が作った物でもあるから薬草の事を知る一助として、と考えるとしよう。

 そうこうしている間に、カナンビスの影響を受けたフェンリル達が全員ゼンマイを飲み終わる。


 その辺りは、ライラさんや他の使用人さん達が様子を見て、飲む量がある程度均等になるように誘導してくれた。

 さすがに、完全に均等にというわけじゃなかったが……次に作るような事があれば、フェンリル達それぞれに器を用意した方が良さそうだ。

 今回は焦っていたのもあるから、そこまで気が回らなかったな……次からは気を付けるけど、というか次がない方がいいんだが。


「……少しは、マシになったみたい……かな?」


 ゼンマイにはそこまで即効性がないのだろう、とはいえ、さっきまで落ち着かない様子で動き回っていたり、尻尾を垂らして立ったりお座りしたり、を繰り返していたフェンリル達。

 その頻度が減っているような気がする。

 まだ唸り声をあげる事もあるけど、その声も心なしか小さくなっているようにも聞こえる。


「むむむぅ、なのよう……」

「少しずつ、魔力が整っている感じ……かな?」


 フェヤリネッテがフェンリル達の合間を縫うように飛び回って、ユートさんが目を凝らして見ている……いや、視ている。

 おそらく、フェンリル達の乱れている魔力がどうなったかを調べているんだろう。


「どう、かな?」


 神妙な面持ちになるのを自覚しながら、ユートさんに聞いてみる。

 俺の隣に来たクレアやリーザも同様だ。

 今気づいたけど、俺達や調子の悪いフェンリル達を囲むように、屋敷の人達や従業員さんの一部、それからフェリーを始めとした他のフェンリル達に囲まれていて、固唾をのんで見守っていた。

 ティルラちゃんもコッカー達を乗せたラーレと一緒に、フェンやリルルとこちらを見ていて、傍にはいつの間に移動したのかシェリーもいる。


 皆、様子がおかしくなってしまったフェンリル達の事を心配しているんだろう。

 今ではもう、すっかりフェンリル達も仲間として受け入れられていると思うと、嬉しい。


「そうだね……さっきまでよりはマシ、なのは間違いないみたいだよ。なんというか、少しずつだけどゆっくりと魔力が整っていっているように見えるかな。――フェヤリネッテちゃんの方はどうかな!?」


 ゼンマイの効果は確かにあるみたいで、徐々に魔力が整っていっている状態なのは間違いないらしい。

 俺に応えつつ、ユートさんは口に手を当てて大きな声で飛び回っているフェヤリネッテを呼んだ。


「ちょっとずつ、改善されているみたいなのよう。これが続けば、いずれ魔力が完全に整えられるはずなのよう!」


 呼ばれて戻って来たフェヤリネッテからの言葉に、少しだけ安心。

 ユートさんとフェヤリネッテの両方から、効果があると言われたんだから、ゼンマイを作って間違いなかったって事だろう――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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■7巻書影■mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


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