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1686/1997

『雑草栽培』で作っても失敗続きでした



「そうそう、多分その大葉。ほら、ゲームの世界樹の葉と見た目が似てるでしょ?」

「え……でも、大葉ってそんな地面から葉っぱだけ生えてくるような物じゃ……というか、世界樹の葉の見た目とか知らないし」

「まぁ僕やタクミ君が知っているのはね。でも、この世界じゃ大葉は葉っぱだけで生えてくるんだよ」


 そ、そうなのか……思わぬところで、思わぬ発見というか思わぬ物を作ってしまった。

 とりあえず、世界樹の葉はユートさんのゲーム知識で勝手に似ている認定をしていただけって事で良さそうだ。

 そりゃそうだよな、物語に出て来る効果があるかはともかく、世界樹なんて大仰な名前の付くような物の葉っぱをこんな感じで作れるわけないよな。

 ……瀕死のシェリーを助けた時の物は、それらしい効果をしていたけども。


「はぁ……変な驚き方をするから、こっちもビックリした。とりあえず、次のを作るよ。早くフェンリルを助けないといけないし……えーっと、魔力に作用するという部分を強く思い浮かべた方がいいのかな……」

「大葉があれば、もっと食が豊かになるって言うのに……タクミ君は淡白だなぁ」


 食が豊かになるのは歓迎だし、いい事だと思うけど、それよりも優先順位が明らかに高い事が目の前にあるからな。

 淡白と言われても、今は構っていられない。

 フェンリル達の方は、どうやらもう戻す事はなくなったみたいだが、まだ苦しいのか唸っているようだし、落ち着かない様子だから。

 まぁこうしてユートさんとフェヤリネッテと話しながらやれているからこそ、落ち着いて考える事ができるというのはあるかもだけど……一人でやろうとしていたから、それだともっと差し迫った感覚になって焦りばかりが募っていたかもしれない。


「うーん……魔力を整える、整える……」


 それから何度か、フェヤリネッテに確認してもらいつつ『雑草栽培』で薬草を作ってみる。

 だが、どれもカナンビスに対処できるような薬効を持った物はできず、苦しみ続けているフェンリル達を助ける事ができない。

 考え方が違うのだろうか?


「……結構、良さそうな薬草はあるんだけどねぇ」


 そう言うユートさんは、俺が作った薬草の一つを手に持っている。

 何番目に作ったかは覚えていないが、それは雑草と言うのが相応しい見た目で、細長く稲のような草で磨り潰すと柑橘系の香りがする。

 ユートさん自身も知らない物らしいけど、なんとなく香りからレモングラスかな? と思うが、実際に香りだけでどうなのかはわからない。

 ともあれ、今は新しい薬草の効果などよりも、苦しんでいるフェンリル達のためにカナンビスの解毒をする薬草の方が優先だ。


「魔力を整えられる薬草、と考えているからこれまで作ったのはそういった効果が、多かれ少なかれあるんだろうけど……でも肝心のカナンビスに対処できる物ができないのはどうしてだ……」


 まぁ、話に聞いただけで本当にあるのかわからないし、『雑草栽培』でも作れない物なのかもしれない。

 それこそ、実はありふれた植物で農業などで使われる植物だったりする可能性、という事だってある。

 カナンビスに対処する効果が知られていないだけとか……人の手が入っていたり、農作物のようなのだったりすると、『雑草栽培』では作れないからなぁ。


「その『雑草栽培』? がどういう仕組みなのか私はよくわからないけどなのよう。でも、考え方を少し変えてみるのもいいかもしれないのよう?」

「考え方かぁ。確かに、ここまでやって作れていないのなら、何か間違っているんだろうね」


 作った薬草は十を超える。

 その中の一つとしてカナンビスの解毒ができる物じゃないのだから、フェヤリネッテも言っているようにやっぱり考え方を変えないといけないのかもな。

 疲労回復薬草とかは偶然で、シェリーを助けた時などは今以上に一刻を争う状況で必死だったし、運も良かったからできたんだろう。

 少しだけ焦る気持ちが湧いてくるのを抑えつつ、どうしたらいいのかを考える。


「ふぅむ……タクミ君、これまでは魔力を整えるという部分を強く考えていたみたいだけどさ、それはいったん忘れてみた方が良いんじゃないかな?」

「確かに考え方を変えるっていう意味ではそれもありかもしれないけど、カナンビスは魔力を乱すんなら、それしか……」

「もしかしたら、それが間違っているのかもしれないのよう? 魔力を乱すカナンビスの効果は、結果的にそうなっているだけなのよう。言葉にしづらいのだけど、魔力を乱す事がカナンビスの毒と言うわけじゃないとかなのよう?」

「魔力を乱すのは毒じゃない……?」


 ユートさんの言葉に難色を示した俺に、フェヤリネッテからの助言。

 ただ、毒じゃないのならなんだって言うのか……。

 いや待てよ? 毒というのは俺達人間が勝手に言っているだけで、カナンビス自体が毒と言うわけではないとも考えられるのか。

 実際に、本来は魔力を乱す効果は人間にしか現れず、妖精は食べて暮らしていたりするわけで……どこから見れば毒になるか、という話だ。


 人間でなければ、薬にしたりしなければ影響はなく、毒とも言えない。

 つまり視点が変われば意味も変わるというか……。


「だとしたら、どういう考え方をすればカナンビスの効果を取り除けるのか……いや待てよ?」

「お、何か思いついたかい?」


 俺の顔を覗き込むように、ユートさんから聞かれるけど頭の中で閃いた事に集中して、応える余裕がない。

 ここは、考えに集中させてもらおう。

 えっとつまり、それが毒だと考えてどうにかする……魔力を整えるのではなくて、何らかの効果その物を取り除けば、もしかするとカナンビスの影響をなくせるのかもしれない。

 解毒するとか、ラモギのように病気を治すとかではなく、単純に体内に入り込んだなんらかの植物の効果、植物だけじゃなくてもいいが、ともかく本来体内にはなかった異物を取り除く感覚で……。


「……なんとなく、できそうな予感がする」


 ユートさんやフェヤリネッテが俺に注目している気がするけど、それに構う余裕はなく、再び地面に手を触れさせる。

 頭の中で欲しいと願う考えと、俺の中にある『雑草栽培』という能力がピッタリとはまったような感覚。

 これまでは、どこかで本当にできるのかと疑っている部分があったけど、今度は大丈夫といった保証は何もないけど、そんな感覚に包まれながら『雑草栽培』を発動。

 すると、これまでと違う変化が俺の手と地面の間で……。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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