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カナンビスの怖さを聞きました



 ユートさんに言われて思い出すのは、薬酒を作る時の事。

 混ぜる薬草を試しに食べた時セバスチャンさんやヘレーナさんもそうだけど、なんとなく効果が出て体が元気になったような気がした。

 プラセボ効果とか、即効性があるからとかも考えたけど、セバスチャンさんは魔力に作用する可能性を言っていたっけ。

 魔力によって、体の調子も変わるのか……?


「前に魔法の講義をする時にさ、魔力は血液みたいに体を循環しているって言ったよね?」

「うん」

「血液と全く同じじゃないけど、似たような性質も持っていてね。だから、体内の魔力が整っていると調子がいいし、乱れると悪くなる。わかりやすく言うと、血液がサラサラだと健康で、ドロドロだと不健康、みたいなものかな」


 ほんとに、そんなところまで血液の考え方と似ているのか。

 実際に血管を通っていたり液体だったりはしないから、性質として似ているというだけなんだろうけど。


「じゃあ、フェンリル達が苦しんでいるのって……」

「カナンビスの影響で、体内の魔力が乱されているからだと思う。タクミ君の推測が正しければね」

「それを聞くと、カナンビスのせいでってのが証明になる気がする」

「でも本来、カナンビスって人間くらいにしか影響しない物なんだ。まぁこの国は人間主体というか、ほとんどが人間だから当然禁止しているんだけど。それを薬にして、魔物に影響を及ぼすなんて……うーん、話しを聞くに、その臭いを発生させるもとになった薬っていうのは、対魔物ように作られた物っぽいね」

「一緒にいたルグリアさん達は特に臭いを感じず、影響もないみたいだから、そうなのかも。というか、人間にしか影響しないって事は、獣人には?」

「僕は試した事がないけど、影響はないって話だね」


 獣人に影響がないと言われて、少しだけ安心……リーザには効かないって事だからな。

 っといけないいけない、今フェンリル達が苦しんでいるんだから、安心してばかりはいられないな。


「カナンビスが凶悪なのは、その依存性。タクミ君が地球で見聞きした事はあると思うけど……」

「あぁうん。えっと……」


 日本でも当然禁止、というか所持すら禁じられているあれの事だろう。


「あれ以上にね、止められなくなるんだ。この国では使われないように厳しく取り締まっているけど、そんな事を知らない、考えていない国でね、ちょっと見た事があって……」


 簡単にユートさんが話してくれるカナンビスの事。

 毒性というのは基本的に魔力を乱す事ではあるけど、それ以外にも体を蝕む成分もあり、常用していればすぐにわかるくらい見た目も含めて体がボロボロになるらしい。

 その毒性に慣れる、というより癖になる事で常用し、感覚が鈍くなってしまったら禁断症状などもひどい事になるとか。


 精神的には直接の影響はないらしいが、体がボロボロになっても求めてしまうようになるんだ、平然とはしていられないだろう。

 一度、無理矢理引き離してやめさせようとした人もいたみたいだけど、その人は禁断症状に耐えられなくなって暴れた挙句に自壊してしまったんだとか……心も体も。

 自壊っていう表現を、人の慣れの果てを伝えるのに使うユートさんに、ちょっとだけ恐怖を覚えた。


「毒性も怖いけど、依存してしまったらもう抜け出せない。いや、抜け出そうともしないし、周囲が止めても徒労になって、その人自身が終わる。体は生きていても動かす事はできず、意識があっても精神は壊れて呼びかけに反応する事もない……」

「俺が考えていたのより、随分と凶悪な物だ」

「そう、さっきも言ったように凶悪なんだよ。一度や二度なら、一応引き戻せる可能性はある……らしいけど、それもあくまで可能性。その依存性に囚われたらもう戻れない。禁止するのも当然でしょ?」

「確かに……」


 麻酔にも使われているあれを想像していたから、そこまで凶悪だとは思っていなかった。

 いや、そのものが既に凶悪ではあるんだけどな。


「って、話し込んでる場合じゃなかった! フェンリル達を助けないと……」


 こうしている間にも、まだフェンリル達は苦しんでいる。

 レオが近くにいてくれるからか、クレア達が皆で撫でてくれているからか、先程までよりは少し落ち着いているようではあるけど、やっぱり戻してしまうフェンリルもいるみたいだ。


「そうだね……っても、カナンビスのせいなら、どうしようもないんだけど」

「いや、そうでもない……かもしれない。カナンビスに対抗するための薬草も、あるかもしれないって話だから」

「カナンビスに!? それは凄い発見だし、僕は聞いた事ないけど……本当に?」

「ヴォルターさんの言う事を信じるなら、だけど。本当にあるのかどうかって真偽は定かじゃないけど、何かの本に書かれていたらしいんだ。それで……」

「本にかぁ、じゃあそれで今タクミ君はその薬草を作ろうとしていたわけなんだね。『雑草栽培』なら、薬草というか植物ならお手の物だし」

「お手の物って程じゃないけど、でもできるかも、できればいいなって」


 ヴォルターさんの読んだという本が、本当の事を書いていたのかどうかはわからない。

 けど、今はそれに頼ってできるかどうかはわからないけど、やるしかないんだ。

 ユートさんの話を聞いて、一度でもカナンビスの影響を受けてしまった怖さを聞いたら、尚更だ。


「それで、さっき言ってた魔力が乱れるって話なんだけど……それを整えるようにすれば、カナンビスの効果をなくす事ができると考えていいのかな?」

「うーん、それだけじゃないともいえるけど、とりあえずはそうかな。僕も、カナンビスを全て知っているわけじゃないから……」


 参考までに、ユートさんに意見を聞くと腕を組んで首を傾げられた。

 実際に人がカナンビスで壊れるのを見た事があるからといって、なんでもわかるわけじゃないか。


「あ、そうだ。おーいフェヤリネッテちゃん!」


 ポン、と手を軽く打ち付けたユートさんが、フェンリル達の周りをグルグル飛び回っているフェヤリネッテを呼んだ。

 フェヤリネッテなら何かわかるんだろうか? というか、いくらフェヤリネッテが小さいからって、飛び回っていたら邪魔になりそうだから、呼んでくれてよかったのかもしれない。

 フェンリルの体の大きさと対比すると、虫みたいな感じなっているし……かなりフェヤリネッテに失礼な考えだけど――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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