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フェンリル達の様子を確かめました



 レオがマルチーズだった頃、何かしらで体調を悪くして戻す事は何度かあった。

 散歩の時に、好奇心に引かれて口にしてしまった道端の雑草が原因の事もあれば、食べさせ過ぎてしまった事、水の飲みすぎや病気だった事もあったっけ。

 まぁ吐いた物や状態によって理由は様々だったが、一応の対処法は心得ている。

 犬に対しての知識だし、専門家と言える獣医さんが近くにいないため素人判断になってしまうのは、不安でしかないが……。


「クゥーン、キューン……」


 レオ自身にはどうする事もできないためか、俺に助けを求めるような視線と声を向けられる。

 さらに……。


「ガッゲッ……ハァッハァッハァッ……」

「ハッハッハッハ……ガ、ガウ……」


 息が荒く、今もまだ続けて戻して苦しそうな様子のフェンリルを見ていると、何もしないわけにはいかない。

 手をこまねいて考えているだけでも、ただ時間を浪費してしまうな……よし!


「クレアは、リーザと一緒にレオといてくれ。これからちょっと汚れるから……」

「そんな、私もタクミさんと一緒に……!」

「きっと大した事はないから大丈夫。それに、こういうのは慣れている俺の方がね?」

「わ、わかりました」


 大した事がない、というのは気休めというか嘘だけど、とりあえずクレアは頷いてくれた。

 まだフェンリル達がどんな状態なのかはっきりとわかっていないんだから、本当に大丈夫なのかという保証はないけど。

 多分クレアなら、フェンリル達のために自分が汚れる……比喩ではなくそのままの意味で、汚れても気にはしないだろうけど一応な。

 

「セバスチャンさん! 水を……桶に二つ程用意してくれますか!? あと、タオルも!」

「はい、畏まりました!」


 まずはこれからする事のための用意を、セバスチャンさんにお願いする。

 水の桶の一つは俺用、汚れるのを覚悟しなきゃだから洗うためだな。

 もう一つは、フェンリル達に飲ませるためだ……飲ませた方がいいかどうかは、これから調べるわけだけど。


「ゲェ……ガッ……ハァッハァッハッハッハッハ……!」

「よしよし、苦しいよな? もう少しだけ我慢しててくれ、今から調べるから……」


 苦しそうなフェンリルに近付き……俺が近付くのとほぼ同時に、また新しく戻してしまったが、そのフェンリルの体を撫でつつ声をかける。

 そして、戻して地面にぶちまけられた吐瀉物へと手、だけでなく顔も近づけた。


「この臭いは……レオ、戻し始める前にフェンリル達は何か食べたか!?」

「ワフ!? ワウ、ワウワフゥ!」

「成る程な……」


 臭いの元は、少し前に食べたおやつのお肉のようだ。

 多分レオも食べたんだろうけど、それはともかく……続いて吐瀉物をかき分けるように、手で探る。

 さすがに体が大きなフェンリルだけあって、食べた量も量だから、戻す量も多いな……。


「うん、特に異物はないな。白っぽい泡と、食べてまだ消化されていなかった物くらいだ」


 変なものを食べた異物は混じっていないし、血を吐いてもいないから、重大な病気というわけではなさそうだ。

 誤飲や誤食が原因でもない……レオの時はよくわからない葉っぱが混じっていて、慌てたもんだ。


「こっちは……よしよし、苦しいよな。うん、頑張れ」

「ハッハッハッハ……! ガッ、ゲェッ!」


 別のフェンリルの方の様子を見るため、そちらに近付き同じように声をかけつつ、汚れていない体を擦りつけるようにする。

 撫でるのもそうだけど、こうすると少しだけ安心して苦しさが紛れるようだ。

 だけど、戻すのは続いているか……。


「ただ、何度も戻すうちに白っぽい泡が多くなっている、か」


 犬の事だが、透明な液体や泡を吐く時は大体水か唾液の可能性が高いはず。

 特に泡は精神的な問題、不安感や緊張感、興奮のし過ぎなどでも吐く事があるため、重大な病気の可能性はさらに下がる。

 それでも、実際に病気の可能性というのは消せないんだが、こうなるまでの経緯や理由に目星をつけているから、何かしらの病気の線は消せるな。


「興奮のし過ぎ、精神的な問題……やっぱりそうなんだろうな」

「タクミ様、お待たせしました!」

「ありがとうございます! 一つの桶はフェンリル達に! 焦らず、ゆっくりと飲ませて下さい!」

「畏まりました!」


 考えているうちに、水が並々と入った桶を数人がかりで二つ持ってきてくれるセバスチャンさん。

 一つは吐瀉物に触れた俺の手を洗うためだったから、小さいのって言っておいた方が良かったか……まぁ、落ち着いたように見せかけていただけで俺自身も慌てていたから、指示が抜けるのは仕方ないと思っておこう。


「もう一つはこっちに……!」

「タクミ様!」

「ありがとうございます!」


 俺の指示通り、フェンリル達の前に一つの桶が持っていかれている間に、さらに吐瀉物を調べる。

 それが終わって、残っていたもう一つの桶の水で手を洗っていると、ライラさんがタオルを差し出してくれた。

 お礼を言い、受け取ってそれで手を拭く。

 戻したフェンリル達は、使用人さん達に促されるように桶を囲んで、ゆっくりと水を飲んでくれている。


 水を飲む事で、また戻す可能性も考えたけど……良かった、水の刺激で再び戻すフェンリルはいないようだ。

 実は意外と、こういう時に水を新たに飲ませて落ち着かせようと考えない方がいい、というのがあったりするけど、今回は大丈夫みたいだな。

 状況にもよるけど、胃に入す水が刺激になってさらに戻す事もあるからな……。

 日本であれば、脱水症状には気を付けつつできるだけ水を飲ませず、迅速に動物病院に連れていく、が正解なんだけど、ここにはないから様子を見つつやって行かないと。


「キューン……?」


 レオから自分にも何かできないか、と訴えるような視線と声。


「あぁ、レオはフェンリル達の傍にいてやってくれ。それだけで、気分が違うだろうから」

「ワフ!」


 フェンリル達にとって、絶対的な存在であるシルバーフェンリルのレオが近くにいてくれる、それだけできっと少しは気持ち的に楽になるだろうからと、傍にいるよう伝えると、任せろと言わんばかりに力強く頷いた。

 気持ち悪くて落ち着かず、不安感もあるだろうからそれが和らぐといいんだけど……。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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