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1679/1997

シェリーが呼びに来ました



「本邸側や、ラクトスとは別の街とも連絡を取り合い、人員を持って来させよう。さすがに数日で森の全てを調査はできんだろうが、出入りを見張るくらいはできる」

「そうですね。調査するに至った内容を公にするのは憚られますから、できる限り内密に。公爵家の中で、ですが公爵領全体の問題として対処いたします」

「うむ、それがいいだろうな。ティルラは……さすがにこの問題に取り組むにはまだ少々早いだろう。ラクトス含め西側はクレアに任せる」

「はい。承りました、お父様」


 綺麗な礼をして応えるクレアさん。

 エッケンハルトさんもだけど、こういう時矢継ぎ早に指標を決められるのは、貴族として……当主様とその娘として教育を受けてきた経験があるからだろうか、さすがだ。

 俺なんか、どうしたらいいのかとさっきからずっと頭の中でぐるぐると考えるばかりで、どう動けばいいのか思い浮かばない。


 最低限、リーザを含む子供達にはしばらく村を出ないようにとか、レオやフェンリルに協力してもらって、と考えているくらいだ。

 どう協力してもらえばいいかも、まだだし。

 あ、でもこれくらいは俺でも思いつくな……。


「ヴォルターさん、できるだけカナンビスの詳細がわかる本。それと、使われていると予想される薬に関して、他にないかを探してもらえますか? 今ここにある本だけで、全てがわかるわけではありませんから。あまり、カナンビスに詳しくはなりたくはないですけど……」

「畏まりました。幸い、いくつか心当たりがあります。それと、まだ他にも知られていない事がないか、父と相談し探してみます」

「お願いします」


 本も含めた知識に関してなら、ヴォルターさんとセバスチャンさんが頼りになる。

 何が企まれているのか、この先どう対処していくのかはともかく、知識を蓄えておくのは後々のためになるだろうから。

 まぁ、ヴォルターさんにも言ったように危険な植物に関して詳しくはなりたくはない、という気持ちもあるけどな。

 できる事なら、怪我や病を治すといった人の役に立つ薬草に関して詳しくなりたいものだ。


「あとは……カナンビスの薬が使われたと、最悪を想定して治療法というか対処法を考えておいた方が良さそうですね」


 魔物を興奮状態にする、特に獣型に対してという事はフェンリル達にも効果が出てしまう可能性が高い。

 現に、ルグリアさん達と一緒にいたフェンリル達は異変を感じているし、レオが嫌な臭いがするといった時にはリーザも気分が悪そうだった。

 確かその時にも、フェンリル達はちょっと変な感じがしたそうだし。


 リーザにも効果が出てしまうのか、という疑問はあるがともかく、もしもの事を考えてこちらも動いておいた方がいいだろう。

 普段は穏やかなフェンリル達が、何かの拍子に薬の効果を受けて興奮し、周囲に何かしらの被害を……というか暴れたりしたら大変だし。


「カナンビスの対処法か……私が知る限りでは、体内にある成分が完全に排出されるまで。つまり依存してしまう事がなくなるまで、一切触れさせないというのが一番のようだが」


 俺の言葉を受けて、エッケンハルトさんが眉根を寄せながら答える。

 要は、とにかく我慢させるってところか……俺が知っている対処法と大きく変わらなさそうだ。

 ただ依存性が強い物というのは、それが一番大変だからなぁ。

 地球では基本的に禁止じゃないけど、タバコなんかもそうだ。


 一切興味がない俺からすると、独特な臭いがするだけで、何故そんなに煙を吸いたがるのかと疑問ではあるんだけど、好きな人は、というかはまった人は中々抜け出せないらしいから。

 禁煙外来、という専門外来ができるくらいだし。


「……古くに作られた薬であるためか、一応の対処法。解毒薬という物もあるようですが……この本には書かれていません。ですが……ん?」


 カナンビスを使った薬について書かれている本を見ながら、ヴォルターさんが話す途中で執務室の出入り口、扉の外側から突然ガシャガシャと音がした。

 言葉を止めたヴォルターさんだけでなく、俺やクレア、部屋の中にいる全員がそちらに視線を向ける。

 音はどうやら、扉の取っ手を動かす音のようだけど……。


「この音は……?」


 取っ手から音が聞こえるにも関わらず、誰かが入って来る様子もない。

 誰かが外から入ろうとしているなら、鍵がかかっているわけでもないし、開けて入ればいいだけのはずなんだけど……。

 と疑問に思っていると、今度は扉の下部からカリカリというひっかくような音が聞こえた。


「もしかして……?」

「キュゥ……キャゥ……」


 可能性を考え、クレアと顔を見合わせたのとほぼ同時、か細い声が外から聞こえてきた。

 あんな声、というか鳴き声を出すのはシェリーしかいないだろう。


「……」

「キュゥ!」

「シェリー! どうしたの!?」


 無言のままライラさんが扉に近付き、開け放つと外から飛び込んでくる一つの影。

 というか形も大きさも、想像通りシェリーだった。

 そのシェリーは、ようやく扉が空いたからか鳴き声を上げながらクレアの所へ向かい、ててて……と駆けていく。

 どうやら、扉の取っ手を動かしていたのもカリカリと引っ掻いていたのもシェリーだったんだろう。


 多分だが、取っ手に飛びついて開けようと思ったけど開かず、どうしたらいいかと迷って引っ掻いて主張していたんだろうな。

 レオも、マルチーズの頃にはよくやっていた……さすがに、シェリーみたいに取っ手に飛びつくのはあまりなかったが。

 今は体が大きくなって、器用に扉を開けられるようになっているけど。


「キャウキャゥ、キュゥ~」

「そうなのね、わかったわ。わざわざありがとう、シェリー。――タクミさん、レオ様が呼んでいるそうです。なんでも、フェンリルの事で」

「レオが? フェンリル達から聞き取りが終わったら、セバスチャンさんか誰かが来ると思っていたけど……」


 抱き上げたシェリーから、何事かと聞いたクレアが話してくれる。

 なんとなく、ちょっとした事くらいならシェリーが伝えたい事というのも、鳴き声の調子でわかるけど、さすがに今回は複雑でクレアに通訳してもらわないとわからなかった。

 ともあれ、フェンリルの事を任せていたレオが俺を呼んでいるというのは……。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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