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とにかく対処しなければいけないようでした



「調合で魔力を、注ぐ……?」


 絞る、混ぜる、乾燥させる、煮る、漬ける、濾すまでは調合法として本で勉強して知っている事だ。

 まぁ、使う薬草の種類の数や行程が多くて面倒そうではあるけど。

 ただ魔力を注ぎ込むなんて、調合法として正しい事なのか……というかそもそも、調合と魔力を注ぐというのは共存する工程なのか?


「タクミ様、一部の薬を作る際に魔力を使う調合というのはあります。そうですね……おそらく、父から渡された本に記されているかと」

「セバスチャンさんから……あぁ、あの本ですね。そう言えばまだ読めていないですけど……エッケンハルトさん、クレアやルグリアさん達も、ちょっと待っていて下さい」

「あ、はい」


 ヴォルターさんに言われて思い出し、急いで寝室の机に置いたままの本を取りに行く。


「薬師になるための上級調合……よし」


 机に置いてある本を持ち、すぐに皆が待つ執務室へと戻る。

 こんな事なら、コカトリスの事を調べるより先に、調合の本を読んでいた方が良かったな……と思ってしまうのは後悔先に立たずってところだな。

 薬の調合方法が、こうやって関わってくるとは未来が視えるわけでもない俺にわかるわけがない。


 ただこうしてこのタイミングで本を渡せるセバスチャンさんは、ある意味先見の明があると言えるのかもしれない。

 おそらく偶然で、ミリナちゃんが先に勉強していたからってだけなんだろうけど。


「お待たせしました。――ヴォルターさん、この本の……」

「確かこの辺りに……ありました。こちらになります」


 執務室に戻って、ヴォルターさんにどこに書かれているかを聞くと、ペラペラとページをめくって机に置き、魔力を注ぐ調合法が書かれている所を示してくれた。

 さすがヴォルターさんだ、きっと……というか間違いなく、この「薬師になるための上級調合」の本を読んだ事があるんだろうな。


「魔力を注ぐ事で、調合のために使った薬草の成分を変化させ、効果を上げる、逆に効果を下げる、別の効果に変化させる事が可能になる……か」


 どうやら、魔力を注ぐ調合法というのは確かにあるらしく、それによって通常の調合とは違った現象が起こるらしい。

 地球では考えられなかった調合法だな。


「もしかして……薬の香りがフェンリル達だけで、ルグリアさん達のような人には特に何も効果を示さないのは、魔力を注いだ調合法のせいなのかも?」

「材料である他の薬草の中には、臭いの強い物などもありますから、タクミ様の考えている通りなのかもしれません。今タクミ様が読んだ部分で言いますと、効果を下げるといったところでしょうか」

「臭いを抑えるという、効果を下げる現象を起こさせて、嗅覚の鋭い獣型の魔物に作用するようにしている……のかもしれませんね」


 だとしたら、カナンビスの危険な毒性や依存性は消えているのかもしれない。

 薬の効果はあくまで、香りを嗅いだ相手に対してで、裏を返せば薄い香りを嗅ぎ取れなければ効果が出ないという意味にも取れる。

 まぁ麻酔的な効果で考えれば、興奮作用ではなく鎮静作用があってもおかしくはないが……カナンビス自体をまだよく知らないから、なんと言えない。

 もしかたら、魔力を注ぐ事で効果を変化させているのかもしれないし。


「安心する要素ではあるが、カナンビスを使っている時点で本当に安心はできないがな……この事は公爵家やユート閣下とも共有し、調査する事とする。ルグリア、パプティストにも協力してもらうぞ?」

「はっ! 禁じられた植物が使われているのです、もちろん協力させて頂きます! 不届き者を、白日の下に晒して見せましょう!」

「現状は、タクミ様、エッケンハルト公爵様に指揮権がありますからね。了解しました」


 あれ、エッケンハルトさんはともかくとして、俺にも指揮権があるんだ……まぁ、調査隊として動いてもらっているから今更かな。

 テオ君を保護というか、迎え入れているからエッケンハルトさんとかにも指揮権とか命令権みたいなのがあるのは、なんとなくわかるんだけどなぁ。

 あと他にも、多分ユートさんにもあるんだろうとは思う。


「事が事だ、白日の下にというのは少し不味いかもしれんが……誰が関わっているかまだ一切わかっておらんからな。だが、それでも必ず突き止めるぞ!」

「「はっ!!」」


 公表できるかどうかは、関わっている人次第ってところか……。

 ともあれ、エッケンハルトさんの覇気のある言葉に、膝立ちになってルグレアさんとパプティストさんが短く言葉を発し首を垂れる。

 悪い企みがあるかも、とは予想していたけど思った以上に大事になりそうだ……。

 まだ薬草園を開始する前なのに、どうしてこんな近場で事件が起こってしまうのだろうか、と思ってしまうがぼやいても仕方ないな。


「タクミ殿」

「あ、はい」


 考えが逸れていたのを、エッケンハルトさんに呼ばれて切り替える。


「この先の調査も含めてだが、タクミ殿にも協力してもらいたい」

「それはもちろんです。森の異変というのがレオの嗅いだ臭いとも関係するのなら、放っておけませんしフェンリル達もいますから」


 獣型の魔物に効果を発揮する薬、人には効果がないとしても何が起こるかわからない。

 これから薬草を作るのに、その薬草……と気持ち的にはあまり言いたくないが、植物が関係しているんだから放ってはおけないからな。

 場所が近いのもあって、悪い方向へ考えると薬草や植物が忌避されるような事件に発展する可能性が、というのは考えすぎとも言えないだろうし。


「お父様、私は至急ラクトス周辺から情報を集めます。それと、こちらに人を……」

「そうだな。ここからだと、一番ラクトスが動かせる人員が多いだろう。あまりあちらを手薄にはしたくないが仕方ない。まぁ、タクミ殿やレオ様の噂があるおかげで、多少であれば問題にはならんだろう」


 噂っていうのは、もしかして俺がディームを捕まえたりした前後で、悪い事をしたらレオと俺が捕まえに来る……みたいな話のあれだろうか?

 実際はそんな事ないんだが、その噂が広まってからラクトスの治安が多少良くなったらしいから、文句は言えない。

 今も、人……つまり衛兵さんなどを呼ぶんだろうけど、クレアの提案でエッケンハルトさんが頷いているくらいには、役立っているみたいだからなぁ。

 というかエッケンハルトさんも、あの噂は知っていたんだ……まぁスラムに密偵を送って情報を集めているくらいだし、知っていておかしくないか――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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