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危険な植物が材料として使われているみたいでした



「かもしれんな。しかし……もし森に入った何者かが、理由はわからんが香りを放つ薬を作っていたのなら、この薬草も使っている事になる」

「カナンビス……? 聞いた事があるような……あ、もしかして! あのカナンビスですか!?」

「だろうな。その名の薬草は他にないだろう。これは危険だな……」


 ヴォルターさんの言葉に頷き、エッケンハルトさんとカナンビスという植物を思いだしたらしいクレアの話を聞く。

 危険とも言っているし、何やら常用する事でどんどん毒が蓄積される、依存性もあって厄介……などの話をしているから、間違いないんだろう。


「これはつまり……あれなのか」


 頭に浮かんだ日本語の名称は漢字二文字だ。

 地球では医療用の麻酔に使われたり、調味料にその植物の実が使われたりはしている。

 まぁ一部の国で嗜好用に認められたりはしているみたいだけど……あぁ、だからカナンビスって言うのか。

 若干違うけど、確か別名として近い呼び方があったはずだ、何語かは知らないけど。


 こちらの世界の物と、地球での物が同じ効果と言えるかはわからないが、エッケンハルトさん達が話している内容、そしてルグリアさんやパプティストさん、ライラさんなど部屋にいる全員の表情を見るに、似たような効果があるんだろうな。

 ロエなど、地球にある植物と似ていても効果が強いこちらの世界だと、もしかしたら地球にある物よりも効果……毒性などが高い可能性もあるかもしれない。

 そう考えると、エッケンハルトさんが顔をしかめ、クレアが驚いている理由も納得できる。


 こうなると、調合してでき上がった薬を火にかけて蒸発させ、香りを広がらせるという使用方法も、繋がっているように思えるな。

 偶然とは思えない……。


「すみません、ちょっと聞いていいですか?」

「……うむ」

「その、確か薬草はどこも栽培して数を増やす、というのはまだやっていないんですよね? 少なくともこの国では。まぁ、カナンビスという植物を薬草と言っていいのかは、俺には微妙に思えるんですけど、そのカナンビスを栽培していたりは……」

「タクミ殿の言う通り、ここで薬草のための畑を作る試みがこの国では初めてだ。他の国までは知らんが……それに、分類上カナンビスを薬草としてはいるが、禁忌の植物と定められて使用、売買などは禁止している。反すれば、厳しい処罰がなされるくらいにな」


 おおよそ、俺が知っている危険薬物に対するものと近そうだ。

 こちらの世界での認識も、地球とほぼ同じと考えていいんだろう……もしかしたら、ユートさんが知っていて禁止するように定めたのかもしれないな。

 所持の禁止と言わなかったのが少し気になるが、とりあえず今は考えないでおこう。

 隠れてはともかく、おおやけには栽培されたりはしていないのは間違いなさそうだが。


「それじゃあ、薬を作るのも……」

「本来であればできないはずだ。もしカナンビスを発見した場合、悪用を防ぐため周囲を焼き払うようになっている」

「それだけ厳重なんですね」


 でも、本当にカナンビスを使用して作られる薬が、今回の原因になっているのならどこかでカナンビスを入手しているという事になる。


「まぁ昔からの法だからな。だが特に貴族のような領地を治める者は、厳しく教え込まれるぞ。興味すら湧かない程にな」


 まぁ、貴族が手を出さないように、領地にも蔓延させないようにという措置なんだろう。

 昔からっていう事は、やっぱりユートさんや地球からきた誰かが法を定めるのに関係しているのは、間違いないと思う。


「ただ毒性はそこまで強くありません。あくまで、常用した際の影響が危険というだけです。取り締まられているので、人が目にする機会はほとんどないですし、どこかで見つけても使用する事はそうそうないでしょう」

「少なくとも、公爵領ではスラムも含めて使用されたなどの報告は一件もない。まぁ、百年以上さかのぼればどうかはわからんが。国全体でも多くはないはずだ」

「ですけど、一度でも使用してしまえば……」

「毒によって直ちに異常をきたす、というわけではありませんが……その魅力に取りつかれてしまうと言われています。毒性が強くないと言いましたが、取りつかれる事も含めれば強いと言えてしまうのかもしれません」


 要は、数が少ないし作ってもいないから、ほぼ見かける事はなく使用例などもないに等しいけど、一度使ったら止められなくなる依存性があるってわけだ。

 一つや二つで体に異常が出る程じゃないから毒性は弱いと言える。

 ただ強い依存性を毒としてみれば、毒性が強いとも言えてしまう、厄介な植物って事だな。


「ほぼ決まりではあるが、カナンビスが使われているとなると厄介だな……何かをしている、という予想で調べを進めるだけでなく、私ももっと積極的に動かねばならん」

「そうですね……考えたくはありませんが、もし領民が使っていたらと考えると。公爵領、それからこの国全体に広まるなんて事も、ないとは言えませんから」


 さっきまでより、深く眉間にしわを寄せるエッケンハルトさんに、同じく顔をしかめているクレア。

 こういったものは一度広まると根強い問題になってしまうだろうから、できるだけ早く解決した方がいいんだろう。

 薬を作るためだけにカナンビスを使っている、と断定はできないのだから。

 相手の目的もまだわからない気持ち悪さもあるから、安心ができないというのもある。


「薬以外に使われていない、という保証はありませんが……数は少ないはずです。元々、繁殖力の低い植物らしいですから」


 ヴォルターさんが言った繁殖力が低い、というのは唯一いい情報かもしれない。

 俺の知っている地球の物はそれなりに繁殖力があったとは思うけど、こちらの世界の物は違うんだろう。


「それで、こちらに書かれている薬の作り方を……」


 そう言って、薬の作成方法が書かれている場所を指し示すヴォルターさん。

 そこには、薬に必要な材料である五種類の薬草のうち、二種類を絞って出た液体を混ぜた物と、残り三種類の薬草を乾燥させたうえで煮た後に取り出し、先に混ぜて作っていた液体の中に漬け込む。

 さらにその状態で煮た三種類の薬草を磨り潰して濾した後、残った液体に魔力をゆっくりと注ぎ込むことで完成する……と書かれている。

 調合方法まで書かれているというのは、使っている材料の一つが危険である事はともかくとして、かなり詳しく研究されているって事なんだろうけど……。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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