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使われた薬に目星をつけました



 生き物の分類に関しては、今見ているのは香りが主題の本なので、こういった分類を詳しく知るには別の魔物の本で調べる必要があるだろうけど、その分類によって大まかに効果のある香りというのが決まるらしい。

 こちらも、分類とは別に例外があるようだが。

 ちなみに、両生類との分類が詳しくない俺には難しい爬虫類などは、地海棲型に分類されているようだ。

 地上と海中の両方に棲む事ができるのが絶対、という分類方法ではないみたいだな。


 ……他にも節足型というのがあったが、こちらは虫が多く含まれているのであまり考えないようにした、虫苦手だし。

 とにかく、魔物というか生き物の分類はある程度されていて、それによって効果のある香りが違うという事までは研究されているみたいだな。


「フェンリル達なら、獣型で間違いないでしょうね。四足歩行ですし」


 まぁ、後ろ脚だけで立ってヨタヨタと歩いているのを見た事はあるが、基本的に四足歩行で間違いない。

 それにしても、以前見たあれはどうして後ろ脚で立って移動していたんだろう? 近くにいた子供達との遊びかもしれないな。

 あんまり体に良くない動きだから、高い頻度で見かける場合は注意しておかないとな。


「そうですね。獣型に作用する香りや臭い、さらに興奮作用がある物に関しては……」


 再びペラペラとページをめくるヴォルターさん。

 本の四分の三ほどのページをめくった当たりで止まる。


「二種類の香りによって、興奮させる作用が引き出せるみたいですが……おそらくフェンリル達が嗅いだというのはこちらでしょう」

「興奮……確かに書いてありますね。嗅覚が特に鋭い獣型に嗅がせる事で、興奮させる効果がある薬……植物を使った薬みたいですね」

「もう片方は興奮作用だけでなく、酩酊状態とも書かれているな。酩酊……酒に酔った状態だと、今回の事とは違うのだろう」

「どちらかというと、酔うからこそ興奮もするという書かれ方ですね」


 ヴォルターさんが示したページを、俺、クレア、エッケンハルトさんがそれぞれ覗き込んで見る。

 植物を使った薬を散布する事で、獣型の魔物を興奮させる物と、もう一つヴォルターさんが除外した方は、葉や枝、実などから発せられる香りを直接嗅ぐ事で酩酊状態を引き起こす物だな。

 というか、後者は書かれている特徴的にマタタビみたいなものだろうな……要はマタタビ反応って事だ。

 この本を書いた人などが香りの効果を見て、酩酊状態のように見えたからそう書かれているのかもしれない。


「今回は酩酊状態、という話ではないみたいですから……こっちのえっと、エクサイターオドレム? の方ですね」

「んと、ほのかな香りで魔物を誘う……ですか」


 香りを出す薬には名が付いていて、エクサイターオドレムという物らしい。

 クレアが効果の部分を読んでいるけど……要は、一部の魔物を興奮状態にさせて暴れさせるとかそういった物のようだ。

 誘うというのは香りを使って誘き寄せながら、興奮状態にする事で御しやすくするために使うからだとか。

 まぁ、暴れ方にもよるし魔物によっては危ないだろうが、真っ直ぐこちらに向かって来るのなら、対処のしようがあるからってところだろう。


「ふむ、興奮する事で魔法を使うような繊細な思考ができなくなる、とも書かれているな」

「まるで暴走させるためにあるような感じではありますけど……」

「こちらには、獣型の魔物に対して効果がある。人には気付きにくい程薄い香り、とも書かれています」


 エッケンハルトさんが読んでいる部分を見て呟く俺に、ヴォルターさんがページの隅を示して教えてくれる。

 既に読んだ事のある本だから、ある程度どこに何が書かれているのかを覚えているのかもしれない。

 ともあれ、人が気付きにくい、薄い香り……か。


「ルグリアさん、調査隊の人達は森の中ではこれといった臭いはしなかったんですよね?」

「はっ。フェンリル達はおそらく感知したのでしょうが、我々はそういった臭いなどはわかりませんでした。草木の香りくらいしか……」


 ルグリアさんに聞くと、隣にいるパプティストさんと一緒に頷いた。

 森の中だから木や草の香りなどは当然あるとしても、他に気になる臭いや、違和感を感じる臭いなどは感じなかったみたいだな。

 気付きにくい香りなら、森の中の臭いに隠されて人間に嗅ぐ事は難しいのかもしれない。


「そうですか……ほぼ決まりですね」

「うむ、そうだな」


 本に落としていた視線をエッケンハルトさんに向けて、お互い頷く。

 絶対とまでは断言できないかもしれないが、状況を考えるとエクサイターオドレムという香りを出す薬が使われたのだろう。


「えぇっと、作り方とかは……」

「次のページ、こちらに使用方法と作成方法が書かれています」

「ありがとうございます。えぇっと……ふむふむ」


 一応作り方などをと思って呟いたら、ヴォルターさんが本のページをめくって書かれているところを示してくれた。

 お礼を言って読んでみる。

 まず使用方法は、液体の薬を火にかけて蒸発させる事で特有の香りが広がるらしい。


 何か物に含ませてとか、薬を振り撒くというわけではないらしい。

 作成方法のところにはまず、必要な材料である五種類の薬草……二つを除いて『雑草栽培』で作った事があり、販売もされているような一般的な物が書かれていた。


「うぅむ……この薬草だが、これが香り以上に問題になりそうだ……」

「カナンビス……ですか? ん……?」


 目を見開いたエッケンハルトさんが、五種類の薬草の名称が書かれた部分を指し示す。

 そこにはカナンビスと書かれていて、俺がこれまで一度も作った事のない薬草で、借りている薬草図鑑にも書かれていなかったと思う……全部覚えているわけじゃないから、もしかしたらどこかにあったのかもしれないけど。

 ただ本の文字が翻訳されるのと同時、頭の中で別の単語……というより、日本語での名称が浮かび上がった。

 え、これってまさか……。


「毒性の強い薬草、ですね。薬を作るまでの行程が多いのは、もしかするとこのカナンビスがあるせいなのかもしれません」


 毒性が強い……本当にあの植物なのか?

 薬草と書かれているから、分類としてはそうなんだろうし、俺の知っている用途でも薬扱いされたりもするが、俺としてはあまり薬草として考えたくはない物だ――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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