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ヴォルターさんを呼んで来てもらいました



「うーん……フェンリル達の様子が変わったのも、レオの感じた臭いと繋がるとは思いますけど。臭い、臭いかぁ……」


 そういえば、最近フェンリル達……だけじゃなく、レオも逃げ出したくなる程の強烈な臭いの植物を作ったっけなぁ。

 まぁあれは、様子がおかしくなるという以前に臭すぎて皆逃げただけだけど。

 ある意味、興奮状態とはいえるかもしれないが、さすがに関係ないだろう。


「あれ……待てよ? 臭い……におい、匂い……他にもどこかで?」

「タクミさん、どうされましたか?」

「タクミ殿? 今は結論を出せる程の情報はないから、考えすぎない方が良いとは思うが……?」


 ふと、脳内……記憶に引っかかるものを感じて、首を傾げる。

 クレアやエッケンハルトさんが、俺の様子を気にしているようで声をかけて来るが、ちょっとだけ待って欲しい……今何か……。

 におい……確か文字で見たような……他にも以前、近い事を話で聞いた?


「あぁ! 思い出した! におい、香りだ!」

「タ、タクミさん!?」


 頭の中でひらめいた……というか、記憶が繋がって思わず出してしまう大きな声。

 隣にいたクレアがびっくりしてこちらを見ている。

 エッケンハルトさんや、ルグリアさん達も同じくだ。


「あ……すみません、つい」

「いや、まぁ構わんが……香りと言っていたな? どういう事だタクミ殿?」

「えぇっと、前に話で聞いたのと、見た覚えがある事柄が……っと、その前に、ちょっとヴォルターさんを呼んできます」

「え、ヴォルターですか?」

「はい。多分ヴォルターさんに聞けばわかるかも……もしわからなくても、俺が見た物は知っているはずだから」


 いきなり関係ないヴォルターさんの名が出たからだろう、キョトンとして首を傾げるクレアに言う。

 ……そんな顔も、ちょっと可愛いと思ってしまうのはともかくとして、今は繋がった記憶と諸々を確かめるのが先だ。


「タクミさんが見た物……ヴォルターが知っているのですか?」

「うん。本の事だから、よく図書室にいるヴォルターさんに聞けば何かわかるかもしれない。それに、もしヴォルターさんがわからなくても、本の中から探してくれるかもしれないからね」


 さらに聞いてくれるクレアに、少しだけ興奮してしまった気持ちを抑えつつ答える。

 いかんいかん、記憶と繋がったからっていきなり飛び出そうとしたら、クレアだけじゃなくエッケンハルトさんや、ルグリアさんとパプティストさんも驚いてしまうよな。

 気付けば、椅子に座っていた腰が浮いて立ち上がろうとする格好になっていたので、大きく息を吸い込みながら改めて立つ。


「確かに、ヴォルターは父親のセバスチャンに負けず劣らず、書物に詳しいな。本邸でもよく、書物に埋もれていたのを記憶している」

「まぁ、セバスチャンさんとどちらが詳しいか、というのはわかりませんけど……この屋敷にある本の事なら、ヴォルターさんかなって」


 屋敷の本の多くは別邸から持ってきたものだけど、本邸の物も混じっているし、新しく買ったのもあるみたいだからな。

 それなら、こちらに来てからも図書室でよく本を読んでいるヴォルターさんの方がってわけだ。


「えぇっと、この時間ヴォルターさんは……」


 ヴォルターさんの一日の過ごし方を全て知っているわけではないが、ほとんどが図書室かヴォルグラウと一緒に過ごしている。

 だから、ヴォルグラウがいる庭かフェンリル厩舎か、図書室のどれかに行けば高確率で会えるはず……。

 というわけで、俺が呼びに行こうと思ったんだけど、ルグリアさんとパプティストさんが請け負ってくれたので任せる事に。

 二人で別れて探せば、すれ違ったりと余計な時間が省けるだろうからと。


 それならと、ヴォルターさんの所へは二人へ任せ、俺は繋がった記憶、香りや臭いについて考えをまとめておく事にした。

 クレアやエッケンハルトさんはいてくれるけど、こういう時落ち着いて考えるためにライラさんが淹れてくれたお茶が欲しいところだなぁ……なんてことも考えつつ。

 あと、もしヴォルターさんが図書室にいればついでなので、そちらに行くパプティストさんに伝言も頼んだ。


 参考書……というより、俺が図書室に行った時に見かけた本を持ってきてもらうためだ。

 それを以前にチラリとだけど見ていたから、こうしてヴォルターさんを呼ぶ事に繋がったわけだからな。


「お待たせしました。タクミ様、私をお呼びとの事ですが……?」

「すみません、ヴォルターさん。呼びつけてしまって」


 十分も経たずに、パプティストさんがヴォルターさんを連れて執務室に戻って来る。

 そのヴォルターさんは本を二冊持っているので、俺が頼んだ伝言を聞いて持ってきてくれたんだろう……頼んだのは一冊だけど、もう一つはヴォルターさんが読みかけとか、もしくは近くて参考になる内容の物かもしれない。


「どうぞ、お飲み下さい」

「ありがとうございます」


 一足先に、庭やヴォルグラウのいる方にはいなかったと、ルグリアさんがライラさんと一緒に戻って来てくれていた。

 ライラさんは、すぐに俺達全員に対してお茶の準備を始めて、ちょうどヴォルターさんが到着するタイミングで、淹れてくれたお茶を出してくれる。

 お礼を言いつつ一口……うん、やっぱりライラさんの淹れてくれたお茶が一番落ち着く気がするな、この世界に来てから、よく飲んで親しんでいるからかもしれないが。

 ともあれそのライラさん、先程ルグリアさん達が来る前にクレアと話していたような、様子がおかしいと言った雰囲気は全くなく、いつもと変わらない様子に見えた。


 多分、何かはあるのかもしれないが……それを俺達に見せないようにしているのなら、今突っ込んで聞く必要はなさそうだ。

 このことは、クレアに任せているわけだから、俺はいつも通りライラさんと接していればいいだろう。


「えぇっと、それでヴォルターさん、持ってきてもらった本ですが……」

「はい、こちらになります。もう一冊は、似たような記述がみられる内容になっておりますので、一応」


 俺とクレアがいる机に、ヴォルターさんが持ってきた本を置く。

 そこには「香りの全て」と「香りの作用」という題名の本が二冊……俺が頼んだのは「香りの作用」の方だな――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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■7巻書影■mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


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