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まともな目的ではない事が予想されました



 パプティストさんは、発見した足跡の事などをここに来るまでに、大まかにルグリアさんと共有してあるらしいけど、実際に調べた人からという事でそのまま話を聞く。

 兜を外したら、多分ルグリアさんに任せて自分は話そうとしなかっただろうけど……。

 とりあえず、兜越しに少しだけくぐもった声での報告を聞くところによると、やはりここでも目立った異変やおかしなところというのは見つからなかったらしい。

 まぁ、フェンリル達が臭いを感知して様子がおかしくなったのであれば、人の目から見て何かがあるとすぐにわかるもんじゃないか。


 臭いに関しても、人にはわからないくらい弱い臭いなんだろうし。

 嗅覚が鋭いフェンリルならではだ。


「何もなし、という結果を持ち帰ろうと諦めかけた時に、我々の物ではない足跡を発見したんです。先程も言ったように、フェンリルから離れて少し奥に進んだ場所です」

「人の足跡、で間違いありませんか?」

「間違いありません。魔物の物はなく、人の足跡でしょう。靴の跡でしたから」


 裸足で森に入る奇特な人間はほぼいないと思う……森の中で靴を紛失したとかならともかく。

 それに、魔物の多くは人の足と形が違うからな、靴の跡が残っていればわかるだろうし、パプティストさんが断言できるほどはっきり残っているなら、間違いないだろう。


「つまり、人がそこまで入り込んでいたという事になるわけか。その足跡は、どれくらいのものと見た?」

「そうですね……二日から三日前のものだと思われます。まだはっきりと残っていました。それより以前だと、数日前の夜に雨が降っていましたから、あれだけはっきり残りはしないでしょう。ただ、真新しいとも言えないようでしたので、そのくらいかと」

「二、三日前……そんなに最近、あの森に入った人がいるんですね……」


 ランジ村以外にも、場所を変えればあの森の近くに村はあるみたいだから、そこから入る人はいるんだろうけど……西という事はラクトスとランジ村の間になる。

 ランジ村からラクトスの間で、森付近には村はないし、それは東側で見つかった足跡の付近も同じくだ。

 東側はさらに東に進んだら川があるが、他に人が住んでいるような所はないと聞いている。

 つまり、村などからではなく、何かの目的があってわざわざそこから森に入っているという事。


「ランジ村を避けている……というのは北側に近付いていない様子と、見つかりたくないという心理から、でしょう。そうなると、何かを企んでいる可能性もありますね」

「うむ。まぁ、フェンリル達の様子が変わった、というのとレオ様が感じた嫌な臭いというのも気になるが……それらが繋がっているとしか考えられない状況。まともな企みではない気しかしないな」

「ですね。まともなら、別に隠れるようにランジ村を避ける意味はありませんし……」


 届け出、とかは森に入る時に必要ではないけど、誰かに見つかっても構わないはずだ。

 それこそ、隠れなくてもいいような理由や目的があるのなら、誰かに話しているだろうし、繋がりなどから痕跡が残っているはず……。


「エッケンハルトさん、ランジ村以外からの情報とかっていうのは?」

「いくつか届いたが、めぼしいものはないな。森に入る者というのはもちろんいるが、わざわざランジ村の近くまで来て、だが村を避けるように入るなんて事をしている者達の話はない。まぁ、まだ調べつくしたと言う程でもないから、これからになるが……」

「でも、大まかな情報としてないのなら、森に入って足跡を残した人は……人達ですかね?」

「はっ。複数の人物からなる足跡でしたので、一人ではないでしょう。少なくとも、三人以上はいるかと」


 そう言えば人数を聞いていなかったと、パプティストさんに聞くと、確実に複数いて単独ではないらしい。

 者達とも言っていたし、東側の足跡も複数だったらしいから、西側でも同じか。

 同一の集団の可能性が高いわけだ。


「複数ならなおさら、大まかな情報として一つも入ってこないのは、隠しているからでしょうね」

「そうですね……タクミさんの言う通り、隠していないのならこの付近で森に入る何者かの話があってもよさそうなものですから」


 俺の言葉に、クレアが頷いてくれる。

 森に入ると一言で言っても、わざわざランジ村近くまで来るための移動、森には魔物もいるわけで、その対処や森に入るのに必要な物などの準備というのは必ず必要だ。

 そもそも、ランジ村の近くまで来るのに最低でも一日以上かかるんだから、食料などがいるわけで。

 隠そうとしなければ、そういった準備などは周囲に知られてしまって当然だ……人の出入りが多いラクトス以外では、旅をする者や街や村に出ようとする人は、例外を除いて珍しいらしいし。


 ちなみに例外は、商隊とか兵士さんとかだな。

 その例外に当てはまる人なら、特に気にされないけど……。

 さすがに兵士さんとかならエッケンハルトさんが知らない事はないだろうし、調べたらすぐにわかるだろう。

 だとしたら、商隊というか旅の商人とかっていう可能性は一応残るのか。


「何が目的か……それがわかれば、絞れそうではありますが……」

「今のところ、足跡以外にはレオ様が感じた嫌な臭いと、フェンリル達の様子が変わったくらいしか、情報がないからな。目的とかはさすがに見当もつかん……」

「ですよね。臭いかぁ……他に、これといった痕跡はなかったんですか?」

「はい。足跡以外には何も。注意深いのか、他の痕跡はありませんでした。何分森の中であり、調査に不慣れな事もあって、痕跡を消すのに慣れたような相手であれば、我々には調べるのは難しいかと。足跡を消そうとしている跡、というのはありましたがそれくらいです。その程度であれば痕跡を調べられますし、向こうも森で完全に消せるとは思っていないのでしょう、杜撰なものでした」


 一応聞いてみるが、パプティストさんからはそんな答えが返って来たし、ルグリアさんも首を振っている。

 まぁ、近衛騎士隊でエリートとはいっても、この近くの森に詳しいわけでもなければ、調査をする専門家というわけではないから、仕方ない。

 足跡を消そうとした痕跡はあったらしいけど、それもそれで痕跡を消すのに慣れている者と知られないように、雑に残しているのかもしれない……なんて、考え始めたらキリがないか。


 森の中は、柔らかい土だったり植物が生えていたりと、足跡を付けるなという方が難しいくらいの場所だから、入り込んだ何者かも織り込み済みと考えるのが妥当か。

 それくらいは発見されても警戒される事はあるかもしれないが、自分達までは繋がらないって考えなんだろうなぁ――。



読んで下さった方、皆様に感謝を。


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