気にしすぎない方がいい事のようでした
ブックマーク登録をしてくれた方々、評価を下さった方々、本当にありがとうございます。
書籍版、最新5巻が2024年1月30日発売予定!
既刊も合わせてよろしくお願いします!!
「でもライラなら、タクミさんのお世話をするのに並々ならぬ執着……とは違うのかもしれせんが、そつなくやる事に意味を感じているように思うんです。それなのに……」
「うーん……確かにライラさんは、誰かのお世話をしている時が一番楽しそうだけど。もちろん、俺に限らず。リーザとか、レオもそうだ。けど、クレアがそこまで気にするっていうのは、俺も気になるね」
クレアは、マリエッタさんも認めるちょっと変わった目の持ち主だ。
先祖が貴族で、俺にちょっとだけわだかまりのようなものを感じていたウィンフィールドさんの様子にだって、気付いていたくらいだ。
……クレア程はっきりとじゃないみたいだけど、感覚的にリーザも気付いてはいたが。
ともあれ、そんなクレアから見てライラさんの様子が気になると言われたら、何かあるんじゃないか? と思えてきた。
「ライラさんの様子が気になったのって、大広間に集まっている時みたいだけど……具体的にはいつくらいかわかるかな?」
「えぇと……大広間で、タクミさんが堂々と雇った人達の紹介をしていた時は、いつも通りでしたね。むしろどちらかというと、そんなタクミさんを見て少し誇らしい様子にも見えました。私もですから気持ちはわかります」
「誇らしい程の事はしていないと思うけど……堂々とかではなくて、クレアに励まされたおかげなんだけどね」
俺としては、クレアがいてくれたから心強く、昔のトラウマの事をあまり意識しないで済んだおかげだ。
まぁ、それでも声が震えてしまわないか不安だったし、気を付けてもいたけど。
「ふふふ、タクミさんの力になれたのなら嬉しいですね。それで、ライラの事ですが……そう言えば、お父様達から私とタクミさんの事をからかわれた時くらいから、ちょっと顔を伏せていたような?」
「エッケンハルトさんからの時? 特にライラさんには、何もなかったと思うけど……」
あの時は、ライラさんを気にしていられる余裕がなかったから、はっきりとはわからないが。
さすがに顔を伏せて、笑いをこらえていたとかではないだろうし。
それにしても、クレアはこの時心構えをしていた俺とは違って、驚いたり照れたり恥ずかしがったりと大変だったのに、よく見ているなぁ。
どんな時でもちゃんと周囲の人を見ているというのは、能力とかは関係なく、これまで使用人さん達に囲まれて育ったクレアならではなのかもしれないが。
「レオやリーザ、それにアルフレットさんは、ライラさんの様子に違和感とかは感じましたか?」
「ワウ」
「んーん。ライラお姉さん、いつもと変わらなかったと思う」
レオとリーザは、クレアのように気になった事はないらしく、首を振って否定。
アルフレットさんも同じく首を振ったが……。
「特には何も……ただ、私とヴァレットと旦那様が話している時、こちらに近づかないようにしていたような気はします。クレア様から今の話を聞いて、改めて考えればそうかもしれない? といった程度ではあります。エルミーネさんは、クレア様の近くで耳をそばだてていましたが」
「エルミーネは、いつもの事ね」
エルミーネさんはセバスチャンさんの同志らしいから、俺とクレアの話で持ち切りになった皆の話を聞いていたんだろう。
それともかく、話している俺達に近づいて来なかった……か。
あの時は確か、俺とクレアの関係を見ている使用人さん達に関する話をしていたか。
いつもなら、話に加わらずともライラさんはすぐ近くにいてくれるんだけど、それがアルフレットさんから見る限り近付こうとしていないと思う程っていうのは、何かあったのかもしれない。
クレアの言う通り、ちょっとこれまでと様子が違うという話に、信憑性が出て来たな……。
「あっ! あの時話していたのって……あぁ、そういう事なのね。はぁ……」
「えっと、クレア……?」
何やら、突然クレアが大きめの声を出したと思ったら、納得した様子で溜め息を吐く。
一体どうしたんだろう?
「いえその……私から言い出しておいてなのですが、ライラの様子に思い当たる事がありました」
少しだけ言いにくそうにしながら、こちらを窺うように話すクレア。
思い当たったのなら、どうして言いにくそうなんだろうか。
「思い当たる事っていうのは?」
「……本人には確認していないので、必ずしもそうだとは限りませんが……状況からおそらく。私から、タクミさんや他の者に伝えるわけにはいかない内容、です」
「クレアからは言えないって事?」
「はい……」
そう言って、俯くクレア。
俺や他の人には言えない内容って……それだけ深刻な悩みを抱えているとかだろうか?
「クレアが言えないって事は、相当な……」
「あ、でも安心して下さい。凄く深刻な事と言う程ではありませんから。いえ、私やタクミさん、ライラ本人にとっては大事な事かもしれませんが……」
「えぇっと、俺やクレアにとってもっていうのは気になるけど……とにかく、聞かなくても問題ないだろうって事でいいのかな?」
あるいは、本人から聞いた方がいいという事かもしれないが。
大事ではあっても、深刻でないのなら気にしすぎない方がいいという事でもあるかも。
「そうですね……できれば、本人から話すまでは聞かないであげた方がいいかと。ただ、ライラらしくない事がこの先も続くようなら、私がなんとかします。えぇと、なんと言ったらいいのかわからないのですが、エルミーネの言葉を借りるなら女性には色々とある……とだけ」
こちらを窺いながら、言葉を選ぶクレア。
別邸からずっとクレアのメイド長をやっているエルミーネさんが言うなら、大丈夫なんだろう、多分。
セバスチャンさんと同志との事で、ちょっとだけ不安になる話を少し前に聞いたばかりだけど……信頼はできる人だからな。
「……わかった。クレアを信じて、ライラさんの事はとりあえずこのままにしておくよ。女性ならではって事なんだろうから、俺やアルフレットさんがつついてもいい事にはならないかもしれないからね」
女性特有……とまで断言はしていないけど、それっぽいから男の俺やアルフレットさんが気にしすぎてもいけないんだろう。
と、納得する事にした――。
読んで下さった方、皆様に感謝を。
別作品も連載投稿しております。
作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。
面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。
また、ブックマークも是非お願い致します。