狩りの成果が大きな要因みたいでした
「クレア様や、女性使用人達は特に意欲が強いのですが、男女問わず広まって避けているようですね。護衛兵達などは過度に太る事で動きが鈍るため、特に避けていると聞きました」
「な、成る程……」
女性の痩せたいという気持ちはともかくとして、確かに太った方が動きにくいという事はあるだろう。
甘い物を避けても、他の物を大量に食べれば太ってしまうが……それでも、甘い物を大量にというよりは太りにくいからな。
それに最近は、ニャックやソーイ、もやしなども加わってカロリー低めの料理が出ている事が多いし。
過度な食事制限でのダイエットでないのなら、悪い事じゃない。
「とまぁ、これは一つの要因ですね。砂糖を始めとした高い甘味料の仕入れが減れば、自然と全体の費用も安くなるわけです」
「そうみたいですね。でも、それが一つの要因って事は、他にもあるって事ですよね?」
高い物の仕入れを減らせば、全体の費用減に繋がるのは当然だな。
ただアルフレットさんの言い方だと、他にも要因があるみたいだ。
「えぇ。大まかに、もう二つ程ですか。一つは、ニャックです。キースの交渉と定期的に仕入れる契約により、ニャックその物の仕入れ額がこれまでより安くなっています。もちろん、ブレイユ村が損をしないようにはしていますし、向こうにもよく考えて納得していただいています」
「ニャックは、今ではメインとまでは言わなくてもほぼ毎日食べられていますからね。それが安く仕入れられるのが一つの要因、理由ですか」
カナートさんがブレイユ村を代表して交渉権を持ち、デリアさん達とここに来た。
仕入れの契約に関しては、キースさんに任せて俺は確認くらいしかしていないけど、お互いが納得できる内容だったはず。
まぁ仕入れの値段を下げる代わりに、輸送費というかブレイユ村から屋敷まで運ぶのをこちらが担当するとか、そう言った交渉が行われたわけだけど。
これは、エッケンハルトさんの本邸、ティルラちゃんとセバスチャンさんの別邸なども、同じように交渉して似たような契約になったらしい。
別邸の契約は、マリエッタさんの登場で少し変わったみたいだけど。
「最後の一つ……これが一番大きな要因ですが、こちらをご覧下さい。別邸の参考資料と比べると……」
「……えっと、肉の仕入れ量が少ない?」
「はい。食事で多くが消費されるのが肉類ですが、その仕入れる量が別邸と比べてかなり少なくなっています」
「ほんとね、随分少ないわ……」
アルフレットさんに示されたこれまで見ていた書類、それから参考資料の別邸での費用が書かれた書類の二つ。
それを見比べると、一目瞭然という言葉がぴったりはまるくらい、仕入れる量が減っていた。
一日当たり数百キロの仕入れが別邸で、こちらの屋敷では一日当たり数十キロ……数字では十分の一程度になっている。
当然それに伴って、かなりの費用が削減されているんだけど、どうしてここまで仕入れが減っているんだ? フェンリル達にも人気のハンバーグ、レオの好物のソーセージなど、俺達も含めて肉料理はよく食べているはずなんだけど。
「仕入れる量が少なくなった理由に関しては、フェンリル達ですね」
「フェンリル達が? 食べる量が減っている、とかではないはずですけど」
フェンリル達が不調で、食べる量が減ったという話は聞いていないから、そういう事ではないんだろう。
「森の魔物を狩って来て下さるおかげで、仕入れる必要性がそもそも減っているんです。その分、調理する者達は大変ではあるようですが……」
「あぁ、成る程。そういう事なのね」
「……大変なのは、血抜きとか色々ありますからね」
ニグレオスオークとかカウフスティアとか、森の魔物を狩って食べているのが大きな要因か。
しかも、料理人さん達は狩って獲物を持っていけば、捌いてくれるわけで……通常の個人ではできないし場所もほとんどないけど、それができているから仕入れる量も減って当然だな。
ニグレオスオークもカウフスティアも、内臓以外は可食部が多いようで、それぞれ一体で屋敷にいる人達の夕食分が簡単に賄えるくらいだし。
フェンリル達が凍らせてくれるうえ、魔法具の冷蔵庫などもあるから、保存もそれなりにできる。
なら、肉を他から仕入れる必要はなくなるってわけだな。
「納得しました。食材費が少ないのも当然って事ですね」
「はい。書類の方の不備は、私やキースが確認しているので……絶対ではありませんが、できる限り不備をなくしてあります。ご安心を」
「あーいえ、不備を疑ったわけじゃないんですけどね? 理由が気になっただけですから」
もしかするとアルフレットさんは、俺が気になると言ったのを不備があるのでは? と疑われたと感じたんだろうか。
ただ金額が少ないのが気になっただけで、書類に不備があるとまでは思っていなかったんだけどなぁ……とはいえ、絶対はないのでそのために俺が確認したり、二重三重にチェックする必要はあるか。
まぁとにかく、その辺りの信頼感みたいなものは、これから培っていこう。
アルフレットさんとは、まだ会ってそんなに経っていないからな。
時間が経てば、必ずしも信頼関係が築けるというわけではないだろうけど、共に過ごすうちにお互いが信頼できるようになる事は多いから。
……全く信頼されていない、とかではないとは思うけどな。
じゃないと、執事長になるのを受けてくれたとは思えないし。
「ともあれ、ありがとうございますアルフレットさん。おかげで疑問が解けました」
「いえ……」
そう言って、再び座って別の書類を見始めるアルフレットさん。
いつも座っている場所、俺の机から扉側に大きめのテーブルがあり、左右にソファーがあるんだけど俺から見て右側がアルフレットさんの定位置になっているな。
逆の左側は、今はいないがキースさんがよく座っているけど。
「なんにせよ、魔物を狩るのが費用の削減になるのなら、これからも定期的に森に入って狩って来るのもいいかもなぁ」
レオやフェンリル達は、狩猟の本能みたいなもので狩りを楽しんでいるようだけど……もちろん、無駄な殺生をするわけじゃなく、ただ食料を自分達で得るためだけどな――。
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