クレア側の従業員さんを紹介しました
「本題ですが、他の街や村で販売するためには、まずその街や村での販売店。場合によっては代表や村長とも交渉する事になるでしょう。その際に、薬草、薬の運搬と交渉をする者として、新たに人を雇っています。まずはエメラダ」
「はい!」
名前を呼ばれて、緊張した面持ちで立ち上がるエメラダさん。
「他に、クシーナ、ソッフェ、サクネ。それからグローズ……」
順番に名前を呼んで、俺の時と同じように呼ばれた人が立ち上がり、集まった皆に挨拶をしていく。
クレアも合わせて合計八人だな。
クシーナ、ソッフェ、サクネさんは二十代後半くらいの女性達だ。
直接話した機会はあまりないけど、全員が商店などでの就業経験があるとか。
「これらは、私を含めて外部との交渉をする者達です」
街や村、特に街には複数の薬草を販売する店があったりする。
そのため、クレア一人で全てとというわけにもいかないので、交渉役を複数雇ったわけだな。
あと、交渉は常に一人ではなく二人以上で行うためと言っていた。
公爵家、と言えば店の責任者をすべて集めて一緒に交渉することも可能かもしれないが、薬草や薬に関しては公爵家と切り離して考えて行動するつもりらしい。
ちなみに、俺みたいに部長や係長、班長などの役職は特に指定していないけど、まとめ役みたいなのは決めていて手当もあるみたいだ。
交渉役としては、クレアを筆頭にしてエメラダさんが皆をまとめる役と聞いた。
「今の者達と共に、販売する薬や薬草、その場所に足りない物をこの村から卸すよう交渉します。また、人も含めて輸送する際には……こちらのリルルが担ってくれる事になっています」
「ガウゥ!」
クレアに呼ばれて、一声鳴くリルル。
こちらは緊張というより、尻尾を揺らしているから上機嫌といったところか。
「他に、ヴァレール、ヴァレアーナ、カムタッシュ……」
さらにそこから、多くの人達を呼んでいくクレア。
ヴァレールとヴァレアーナさんは姉妹で、カムタッシュさんは生真面目そうな三十代後半の男性だな。
その後に呼ばれた人達も含めて、輸送班はかなりの数がいる……リルルを数えなくても、総勢で二十九人か。
まぁ荷物管理だけでなく、交渉後に販売してくれる店などへ商品の納入なども担ってもらううえ、馬車の管理などがあるから多めの人数になるのも当然か。
輸送係というより物流担当って言った方が近いかもしれない。
他にも使用人さんだけでなく、移動先でのあれこれや俺の方と連携して在庫の管理などもやってくれるみたいだが。
「私の立場が立場なので、他に護衛の者や使用人が付いてくる事になります。リルルは、輸送と護衛兼任ですね。あと……おいで、シェリー?」
「キャウキャウー!」
言葉を切って、リルルの背中にいたシェリーに両腕を広げて呼ぶクレア。
ようやく出番、と言った感じで鳴いてシェリーはクレアに飛びついた。
「私の頼もしい従魔、シェリーも護衛してくれます。ほらシェリー、皆に挨拶を」
「キュウ! キャウーキャウキャウ!」
クレアの腕の中で促されて、皆に向かって鳴くシェリー。
クレアとティルラちゃん以外にはなんて言っているのかはわからないが、なんとなくよろしくと言っているようだな……多分。
「シェリーとリルルはフェンリルで、タクミさんやレオ様のおかげで、こうして私達に協力してくれます。また、皆さんには魔物だと侮らず、対等に接してくれればと考えています」
クレアの言葉に、集まった人達がコクコクと頷く。
フェンリルと聞いて、魔物だからと見下したりっていうのはこの中にはいないだろうからなぁ。
そういう人達を選んで雇っている、ていうのもあるけど。
まぁフェンリルが凄いのは、ここまでの日常生活で見ている人も多いし。
「それから、現状の馬車では耐久の問題でできませんが、近いうちに新しい馬車ができる予定です。こちらは、リルルなどフェンリル達に曳いてもらう事を想定した丈夫な物で、それを輸送に使う事も考えています。後々にはなるでしょうが……」
フェンリル用、というか耐久性を上げた新型馬車は、近々完成する予定らしい。
できあがれば駅馬が始動する事になるが、それだけでなく薬草園でも活用するつもりだ。
まずはリルルやフェンリル達が曳けるように、輸送係で使う事になるだろう。
今の馬車での移動よりも早く行き来できるようになれば、交渉も商品の納入も迅速にできるようになるわけだから、使わない手はない。
フェンリル達も、協力には前向きだからな。
ハンバーグやその他の食事が必要にはなるけど……新しく馬を育てたり売り買いするより、費用は掛からないかな。
新型馬車を作る費用は掛かるけど、それは駅馬にも必要だし、長い目で見ればかなり安くなるとキースさんが試算していたっけ。
それにしても、新型って言葉は何故か心が躍るよなぁ……男だからかもしれないけど。
でも、新しい馬車という事で、集まった人達の中にもそわそわしている人が幾人か……。
新しい物っていうのはやっぱり、それだけで魅力がある物なんだろう。
ちなみに新型馬車自体は、とりあえずの試作品が数日中に届く予定でもあるらしい。
セバスチャンさんから教えられたけど、レオが特に楽しみにしていた……レオじゃなく、フェンリル用なんだがな。
まぁ、試しに既存の馬車を引いた時に楽しそうだったから、レオ用に一つあってもいいのかもな。
馬車置き場は屋敷の敷地内に広々とした場所があって余裕があるし、俺やリーザだけでなく他の人も一緒に移動する時なんかに使うかもしれないから。
「以上です。雇用に関する事は、既に手続きは済んでいますので皆さんはもう、私やタクミさん、公爵家の関係者になります」
「「「「「はい!!」」」」」
「ワフ!」
「キャウ!」
「ガウゥ!」
クレアが締めに入って、集まった皆が威勢のいい返事と共に頷く。
レオやリーザ、シェリーとリルルも同様だ。
それから、公爵家の関係者といっても偉ぶる事なく……などの注意もしていた。
揉め事は困るが、解決するために俺やクレアだけでなく公爵家が出る事もあるからな。
こちらから揉める種を撒かないようにという事でもあるので、重要らしい。
ともあれ、多少の確認なども終わって、挨拶会も終盤になった――。
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