追加で呪文の言語に関して聞きました
「その分、お父様の仕事も増えるでしょうけどね? お父様が直接関わらなくても、ですね」
「うぬぅ……領地を治める貴族当主の辛いところだ……」
「ははは……」
クレアさんの言葉に、唸って見せるエッケンハルトさん。
まぁラクトスの孤児院やスラムはエルケリッヒさん達がなんとかするとしても、実際におさめている領主のエッケンハルトさんが、何もせずに過ごしているだけって事はないよな。
最低限でも報告書が届くだろうし、決裁しなければいけない事だってあるだろうから。
そんな話をしつつ、レオやシェリー、フェンリル達が満足するまで魔法を使っているのを眺めながら談笑していると……。
「タクミくーん!」
なんて、フランクに呼ばれてそちらを見れば、ユートさんがこちらへ向かって走って来ていた。
ルグレッタさんに連れて行かれたのに、仕事とやらは大丈夫なんだろうか?
「ふぅ。さっき言い忘れていたんだけどね?」
呼ばれたので、駆けて来るユートさんの所にこちらからも向かうと、何やら忘れていた事があるみたいで、声を潜めて話し始めた。
「魔法に使われている呪文ってね、タクミ君にこだわりがないのなら、日本語で考えた方がいいよ」
「え、日本語でもいいの? あ、でもそういえば、半無詠唱のキーワードってユートさんは日本語だったっけ」
言葉を話せないながら、魔法を使っているレオやフェンリル達はともかくとして、クレアや他の人達が魔法を使う時に聞こえてきた呪文の中に、日本語がなかった。
だから、英語とかで考えた方がいいのかな? なんて漠然と考えていたけど、ユートさんが見本のために半詠唱魔法を使った時の事を思い出した。
あの時は「炎よ!」と言っていたし、思いっきり日本語だったな。
「うん。あくまで推察なんだけど、意味のある言葉で、世界なり人なりが認識している言葉だったら、呪文になるみたいなんだよ。僕の場合は日本語限定じゃないけど、それは……」
呪文に使える言葉は、とにかく何かに認識されている言語であればいいという事らしい。
自動で翻訳されているという事は、ユートさんが言う世界が認識しているとかそういう事なんだろう、よくわからないが。
ただ、認識されていないような言語……例えば自分で考えた言語などでは呪文にならないとか。
「僕が考えた最強の魔法、その呪文! みたいなのもいいんだけど、それが僕が考えた言語! になったらダメって事だね」
「例えはともかく、既存の言語を使えっていうのはわかったよ」
とにかく、日本語で考えられるなら魔法に対するハードルが少し下がるかな?
ちなみにユートさんは日本語以外の呪文で魔法を使う事も多いらしいが、それは日本にいた時にゲームなんかで恰好良く魔法の詠唱をするのに憧れて、とからしい。
俺もゲームはそれなりにやって来たけど、気持ちはわからなくもない。
だからって、それをもとに呪文を考えたりまではしないけど。
「そうだね。だから、タクミ君が一番言いやすい呪文、わかりやすい言葉を選んで考えればいいと思うよ」
「わかった。絶対日本語で、とまでは考えていないけど……それでも日本語でもっていうのは、考えるのが少し楽になると思う。まぁ、まずはさっき教えてもらった魔法を、安定して発動できるようにしないとだけど」
「ははは、タクミ君は真面目だねぇ。僕だったら、誰かに教わったとか関係なく面白そうな自分で呪文を考える方を優先しちゃうよ」
「せっかく教えてもらったし、他にこういった魔法が使いたいっていうのも今はないからなぁ」
さっきクレアから見せてもらったような魔法、というのでもいいんだけど、まずは教えられた魔法をしっかり使えるようにだ。
まだ一部の魔法は発動が怪しいからな。
練習して、呪文にも慣れてできるだけ早く発動できるようにとか、魔力操作にも慣れた方がいいだろうし。
基礎というか、そう言った積み重ねが大事だと俺は思うし、そこがユートさんから見れば真面目に見えるんだろうけどな。
「うん、自由な部分が多いから、タクミ君のやりたいようにでいいと思うよ。魔法で何かを成そうとしているわけでもないみたいだし」
「そういった事は、別の人に任せるよ。それこそ、ユートさんとか」
「僕はまぁ、ギフトがあったおかげでもあるけど、成した後だからもういいかなぁ。便利に使えたらってところだね。あと、いつか裏ボスのレオちゃんに勝つ……っていうのは、魔法じゃ絶対かなわないから、別の方法を考えないといけないんだった」
相変わらずレオを裏ボス扱いだけど、倒すとかではなく勝つに変わっているので、まぁそこまで危ないことはしないだろうと安心しておく。
もし危ない事だったら、俺が止めるかルグレッタさんが止めるか……そもそもレオがなんとかしそうでもあるし。
「というか……魔法の事はともかくとして、なんでレオが裏ボス? 最強って事で、ゲーム的にはラスボスでもいいんじゃ……いや、レオをラスボス扱いして欲しいわけじゃないけど」
ゲームとかで、ストーリーの根幹を担う最後のボス、ラストボスを略してラスボス。
基本的には、ゲーム内で最強の敵として主人公イコールプレイヤーの前に立ちはだかるから、ラスボスの方がふさわしい気がするんだけど。
「いやいや、そうじゃないんだよ。確かに最強ってのとラスボスってのはイメージ的に近いのかもしれない。けどね……」
ちょっとまずい部分を指摘してしまったのか、熱く語り始めたユートさん。
遠くから、眉根を吊り上げているルグレッタさんがこちらに来ているけど……どうやら逃げ出し、じゃない抜け出して来たみたいだ。
それに気づかず、語り続けるユートさん曰く、ラスボスは確かに最強の敵とも言えるけど、それはストーリーなどでの話。
ゲーム内で本当の最強は、やりこみ要素で本来なら倒さなくてもいい裏ボスなんだとか。
まぁ確かに、ロールプレイングゲームとかではしばしば、ラスボスより強い裏ボスがいたりするけど。
そのうえ、ラスボスは倒さないと世界を破滅に導いたりする事が多いけど、レオというかシルバーフェンリルは、別に何も刺激しなければそういった絶望的な未来にするような事はしない。
むしろ温厚で、レオだけでなくジョセフィーヌさんと仲の良かったシルバーフェンリルなど、人の助けになる事もある。
だから、ユートさん的にはシルバーフェンリルをラスボスではなく裏ボス扱いする、って事みたいだ。
読んで下さった方、皆様に感謝を。
別作品も連載投稿しております。
作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。
面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。
また、ブックマークも是非お願い致します。