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クレアも色んな魔法を練習していたようでした



「す、すみませんタクミさん。霧には触ってはいけません。火傷してしまいますから……」

「あぁ成る程、そういう……」


 クレアが制止した理由は、霧が熱いかららしい。

 確かによく考えれば、離れて霧も届いていなかった俺のいた場所すら、暑く感じるくらいの熱だったんだから、原因となっている霧に直接触ったら危険か。

 こうして近づくだけでも、暑さで汗が流れ出しているくらいだし……クレアも同じく暑そうに額に玉の汗を浮かべていた。

 霧とは別方向から吹いて来る風が気持ちいいなぁ。


「うぁっち! あつっ! あつっ!」

「ふむ、これはそういうものなのか」

「ハルトが試したおかげで、私達は触らなくて済みましたね」


 と、聞こえた声の方を見てみると、クレアが発した静止の声が届かなかったのか、はたまた無視したのかはわからないが、エッケンハルトさんが霧に素手で触れて悶絶。

 その横で、頷きながら霧を観察するエルケリッヒさんとマリエッタさんがいた。

 二人とも、息子のエッケンハルトさんを犠牲に……まぁ、興味本位で触ったエッケンハルトさんが悪いって事にしよう、指先がほんの少し火傷しただけみたいだし。

 ……クレアが止めてくれなかったら、俺もあぁなっていたと思うと、止めてくれたクレアには感謝だな。


「はぁ、お父様ったら。それでタクミさん、この魔法はどうですか?」

「うん、凄いの一言だね。俺だと、霧を使うくらいはできてもこれは思いつかなかったし、使えないと思う」


 エッケンハルトさんの方に視線をやりながら、ため息混じりのクレアに聞かれて、正直に褒める。

 霧に熱を持たせてなんて発想、俺には間違いなくないうえ、教えてもらっても難しくて発動できないんじゃないだろうか?

 魔力は人並み以上でも、操作とかバランスを取るとか、ユートさんに言わせればまだまだ未熟のひよっ子レベルらしいし。


「やった、タクミさんに褒められました!」


 可愛らしく喜ぶクレア。

 そんなに俺に褒められたかったのかと思うと、こちらも照れてしまいそうだが。


「あーでも、これじゃ他の人も巻き込むんじゃ? クレアが一人っていう状況で近寄らせないのならともかく……」


 本人の周囲は空間があって触れないようにしていて、使い方によるものなんだろうけど、クレアが魔法で発生させた霧そのものは無軌道に広がっている。

 今こうして話している間も、風に吹かれて流れているみたいだし……近くにいる俺も、動きに合わせて少し移動しながらだ。

 これだと、近くにいる人全てを巻き込むようになるから、使い勝手という意味ではあまりいいとは思えない。


 クレアの場合は護衛さんとかが近くにいる事が多いし、その人達も巻き込むようなら、一人の時くらいしか使えないだろう。

 ただ姿を隠すとか、目眩ましのためであれば熱を持たない霧の方が使えると思うくらいだ。


「タクミさんが言うように、私が一人で危険な状況というのは少ないと思いますが……もしもに備えてですね」

「もしもかぁ。まぁそういう想定はしておくのも悪くないか」


 一人で森に入った時のような状況は、クレアが自分でやる事はないとしても、絶対に一人にならないとは限らないからな。

 あくまで今ある熱い霧は自分の身を守る手段の一つって事か。


「はい。悪い方への想定はいくらでもできますし、全てに対処はできませんけど一つくらいは手段を持っておきたかったので。ですが、他にも色々とありますよ」

「他にもってことは、まだ別の魔法も?」

「えぇ。ちょうど霧が晴れてきたので、お見せしますね」


 風に流され、広がった霧が徐々になくなっていくのを見て、こちらに微笑んだクレアが別の魔法を試して見せてくれる。

 霧その物はなくなったけど、まだ熱された空気が残っていて汗ばむ空気の中、先程の爆裂した魔法とは別の意味で驚かされた。

 かなり熱心に、いろんな魔法を勉強して練習して、使えるようになったみたいだから。


「おぉ……」


 クレアが使う魔法を見て、思わず感嘆の声が漏れる。

 まず熱い霧の魔法の後にクレアが使ったのは、氷の礫をいくつか発生させ、それを飛ばす魔法。

 氷の形はそれぞれだったけど、硬く固まったそれが結構な勢いで飛んで行っていたので、それだけでも十分な威力があるようだ。

 さすがに、地面に大きな穴が開くとかそんな事はなかったけど、それだと人相手と想定した場合に過剰な攻撃力だからな。


 他には、燃え盛る火炎を放射する魔法……見たまんま、火炎放射の魔法ってところだ。

 火炎自体は手元で十センチ程度、広がっても数十センチ程で大きいとは言えないくらいだけど、クレアのかざした手から数秒間炎が噴射される様子は、なかなかの迫力があった。

 それから、水を噴射する魔法……これは、非殺傷で単純に水の圧力で制圧するためみたいだな。

 水を撒くホースの口を押えて、細く勢いよく放出するのに似ていた。


 ……狙いどころによっては、結構危ない事もあるかもしれない。

 まぁ、非殺傷とは言っても使い方次第で危険な攻撃になるのは、これに限った事じゃないか。

 また、風の魔法も練習したようで、こちらは視認が難しいため護衛さんが身に着けるような鎧や、木の板が用意されて、そこに放たれた。

 俺がユートさんに教えてもらった、風の刃の切れ味を増して、それを打ち出す魔法なんだろう……金属の鎧は表面に傷をつけたくらいだが、木の板は綺麗に真っ二つになっていた。


 板自体は薄めの物だったからだろうけど、生身の人が受けたら、骨まで届く裂傷ができそうではある。

 人に向けると危険すぎる魔法なので、どうしてもの場合に魔物に対して使うため、とクレアは言っていた。

 最後に、炎の球を飛ばす魔法。

 こちらは最初に使った物とはまた別で、拳よりも小さな炎の球が飛んでいくだけのものと、拳サイズの炎の球が飛んでいき、何かに触れたら小さく破裂するというものだった。


 状況によって使い分けるんだろう。

 小さな破裂をする方は、それだけで大きな傷を与えるようなものではないけど、火を燃え広がらせるための効果みたいだな。

 火の属性を持った魔法が多い理由は、クレアとの相性がいいからとの事だ。

 性格的なものなのかもしれないな……クレアが照れるとすぐ赤くなる、とかとは多分関係ないと思う――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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