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魔法を眺めながらクレアと話しました



「ほら、レオが本当に全力なら、毛が逆立ったりとかするみたいだから。ラクトスであったように」

「そ、そういえば……」


 リーザが石を投げられて怒った時、デウルゴとヴォルグラウの従魔契約を押し流すための魔力を出した時等々。

 後者は毛が逆立つ程ではなかったけど、今魔法を使っている時とは違って圧力みたいなのを感じた。

 なんにせよ、それらと比べると気楽に魔法を放っているレオの姿を見るに、全力ではないのは間違いないんだろう。


「さすが、シルバーフェンリルのレオ様ですね……」

「そうだねぇ」


 お茶を一口飲んで落ち着きを取り戻しつつ、クレアも俺と同じように理解の及ばないレオの強さ的な何かは、シルバーフェンリルだからと納得する事にしたようだ。

 俺もライラさんが淹れてくれお茶を飲んで、深く考えないようにしながら魔法が飛び交う景色を眺めた。

 ……魔法が飛び交う、というだけで既におかしな状況だとかは考えない。


「……皆、楽しそうに魔法を使っていますね。フェンリル達も」

「あっちはちょっと、どころじゃなく寒そうだから、近づきたいとは思わないけど……さすがフェンリル」


 クレアが視線で示した方、レオ達よりもさらに離れた場所で、フェンリルが十体ほど固まって空へ魔法を放っていた。

 一応、魔法を使いたいのなら周囲に迷惑をかけないようにとか、人を巻き込まないようにというのは言い含めてあるので、離れて空にという事なんだろう。

 そのフェンリル達の魔法、離れていても大きいとはっきりわかるくらいの氷を作り出し、空に飛ばして別のフェンリルがジャンプして追いかけ、体当たりで割るという……遊びと言うには激しい行動の繰り返しだった。

 何らかの訓練かもしれない。


「私も、ちょっと魔法を使ってみたくなりました」

「クレアも? まぁ、皆そうしているし……俺はさんざん練習したからもういいけど、やってみるのもいいかもね」


 何故かはわからないけど、こちらを窺うような視線を向けるクレア。

 ユートさん曰く、魔法は使えば使う程魔力操作なども含めて、習熟度が上がる事に繋がる……との事なので、クレアがやりたいのなら今使ってみるのも悪くないと思う。

 クレアの魔法か、以前教えてもらう時にいくつか手本として使っていたけど、あれと同じのだろうか?

 確か、水と火の属性を混ぜて霧を発生させる魔法だったはず……。


「ふふふ、実は私もタクミさんに教えてから、こっそり練習していたんです」

「そうなの?」

「えぇ。タクミさんが、お父様に剣を習い始めた時に言っていた事を覚えていますか?」

「えっと……?」


 あの時俺、なんて言っていたっけ……クレアと話した時の事なのは間違いないと思うけど、随分前の事のように感じて、何を言ったかはっきりと思い出せない。

 確か、自分の身は自分で守れるようにとか、そんな事を言った気がするけど。


「ふふ……二人の秘密、でしたね?」

「あぁ、そう言えば!」


 後ろに控えているライラさんの方をチラッと見つつ、口に人差し指を当てるクレアを見て思い出した。

 あの時、レオにばかり頼らず、それこそ護衛を雇うとかよりもまず自分の事くらいは自分で守れるように、自衛のためにっていう話をしたんだった。

 内心では、必要があるかはともかく女性……というよりクレアの事も守れるようになれれば、なんて事も考えていたっけ。

 エッケンハルトさんに話すと、鍛錬の量が増えてしまいそうだったから、内緒にという意味で二人の秘密って言ったのも思い出す。


 よくよく考えれば、貴族のご令嬢で高嶺の花のクレアだから、無意識に考えないようにしていたけど、心では間違いなく意識していたんだろうな。

 守りたい、と思った女性は親類関係以外では、クレアが初めてだし。

 ……まぁ、日本だとこちらの世界程守る、という事を意識しないでいいのもあるかもだが。


「秘密、守ってくれているんだね」


 他の人が聞けば、取るに足らない秘密なんだろうけど、それでもクレアが守ってくれていたのが嬉しい。

 今も、近くにライラさんがいるからできるだけ口に出さないようにしているようだし。

 そのライラさんは、片方の眉がピクピクと動いていたから、クレアと俺の秘密というのが気になっているんだろうなぁ。

 でもこれは、クレアが大事にしてくれている限り、秘密だから教えられないか。


「それはもちろん、タクミさんとの約束ですから。私にとっても大事な秘密になっていますよ。って、その事はいいんです。いえ、どうでもいいというわけではないですよ?」

「ははは、わかってるよ。クレアが大事にしてくれて嬉しいし、俺にとっても大事な秘密だから」

「そ、そうですか……んんっ! それでですね、あれからずっと考えてタクミさんを見習おうと考えたんです」


 照れると赤くなりやすいクレアが、わざとらしい咳払いをして平静を取り戻し、話を続ける。

 まだほんのり頬が赤くなっている気がするけど、気にしない方が良さそうだ。


「俺を? クレアが見習うような事はしていないと思うけど……」

「いえ、タクミさんは、私の指標になってくれていますよ。タクミさんが頑張っているから、私も頑張れますし。それでですね? タクミさんのように自分の身を守るにはどうしたらいいか、というのも考えたんです」

「クレアが自分の身を……それこそ、護衛さんがいるから……」


 今いる屋敷にしろ、別邸にしろ、そこにいる護衛さん達は本来公爵家に雇われている人達。

 お願いすれば俺の護衛もしてくれるだろうけど、俺とクレアでは違う。

 ティルラちゃんもだけど、もともとはクレアを守るための護衛さん達なんだから。

 それに今は、シェリーも他のフェンリル達もいるわけで、クレアが自分の身を自分で守る必要性はそこまでない気がする。


 それこそ、初めて会った時みたいに一人で魔物のいる森に入ったり、とかでない限り。

 まさか、あの時の事を深く反省していたクレアが、同じ事をしようとするとは思えないんだが……。


「えぇ、フィリップやヨハンナといった護衛がいてくれるので、無茶をしなければそうそう危険はありません。ですけど、私はこれからここを離れる事も増えます。まぁ、タクミさんに魔法を教えた時から考えた事に、今の状況を足した感じになりましたけど」




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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