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1644/1997

皆がこぞって魔法を使い始めました



「さっき、ユートさんが見本で見せた魔法も、俺にとっては十分威力がありすぎる魔法だったけど……つまりそれだけ多く魔法を使っているから、できる事かぁ」

「そうだね。僕は色々と便利だから、さっきの魔法をキーワードだけで発動するようにできた。けど他の人は、日常で戦い続けるくらいじゃないと、あれくらいの魔法を半無詠唱でできるくらいに到達するのは中々できないんじゃないかな」


 ユートさんみたいに、数百年を軽く生きるくらいの経験がないとってところだろう。

 つまり、通常の人間には不可能に近いと言っているようなものだ。

 できないと言い切らないのは、もしかしたら近い事をやってのけた人がこれまでにもいたのかもしれないが。

 ともあれ、俺はそこまで魔法で戦おうとまでは思っていないし、日常で戦い続けたいとも思わないので、両方のいいとこどりのような使い方は求めないでおこう。


 性格的には、のんびりと畑を見守りながらお茶を飲むくらいが合っていると思うし。

 あ、だから苛烈な性質を想像させる、火の属性と相性が悪いのかもしれない。

 ちなみに、後で聞いた話だけどルグレッタさんは、凍てつくような視線ができるだけあって水の中でも特に氷を扱う魔法との相性がいいとか。

 うん、特に興味があったわけじゃないんだけど、ユートさんが得意気に話していたうえに、途中で身をよじって嬉しそうだったから止められずに聞くしかなかった。


 多分、その凍てつく視線と一緒に氷の魔法を受けた事があって、それを思い出していたんだろう。

 ユートさんの様子を見ていて、割とげんなりしてしまったのは言うまでもない――。



「ワッフ! ガウゥ!」

「わぁ、ママ凄い! 私もできるかな?」

「私もですけど、リーザちゃんにはちょっと難しいんじゃないかなぁ?」

「キャウー!」

「キィー!」

「おぉ、シェリーもラーレも張り切ってますね!」


 俺とユートさんが魔法を使っていたのに触発されたのか、レオが魔法を使い、それを見てはしゃぐリーザをデリアさんがたしなめる。

 他方で、シェリーとラーレも同じように魔法を使って、ティルラちゃんが喜ぶ……という光景を、魔力を使い続けて重い体を休ませながら、なんとはなしに眺める。

 レオはユートさんの真似なのか、人どころではないバカでかい魔法を空に打ち上げて、花火のように爆散させているし、シェリーは氷の礫を飛ばして弾けさせ、きらきらと輝く粒子を降らせていた。

 ラーレは、風を巻き上げて竜巻を起こしているな……離れている場所に発生させているおかげで、そよ風より少しだけ強い風がこちらに届いて、疲れた体に気持ちいい。


「あれを見ていると、俺が使えるようになった魔法ってちっぽけだなぁ。まぁ、あそこまでのを使いたいとは、あまり思わないけど」


 俺だって、日本で魔法を使って活躍する物語を見た人間だ、格好良く魔法を使う姿に憧れる気持ちも少しはある。

 けど、ユートさんの話を聞いた後で、レオたちが軽々とやってのけるのを見ていると、人間が個人で使える魔法がちっぽけにすら感じられてしまう。

 まぁ、シルバーフェンリルにまだ成長途中の子供とはいえフェンリル、さらに国一つを滅ぼせるらしいカッパーイーグルだから、人間がちっぽけに感じるのも当然かもしれないが。

 ともあれ、何度も使わないとオークを倒せそうにない、という程度の魔法で今のところ精いっぱいの俺にはもう、格好良く魔法で活躍! に憧れる気持ちは湧いて来ないな。


「ぬぉ、やりますな父上!」

「ふっふっふ、剣の腕では劣るが、こちらではまだまだ息子のお前に負けてやるつもりはないぞ! さぁかかってくるがいい若造!」


 さらに別の場所では、なぜかエッケンハルトさんとエルケリッヒさんが向かい合って、魔法の打ち合いを一応危なくない程度で行っていた。

 なぜかエルケリッヒさんがボスムーブみたいな事もしているけど、エッケンハルトさんが若造なら、俺はまだまだ子供だな。

 ちなみに危なくない程度だ、というのは集まって俺とユートさんの様子を見ていた皆が、魔法を使い始めたあたりで念のため周囲を固めた護衛兵さん達、その中にいたヨハンナさんに聞いた。

 本邸にクレアもエルケリッヒさんもいた頃は、あれが日常茶飯事だったらしい。


 地面、抉れていますけど……いや、気にしちゃいけない、レオの魔法よりは全然威力は低いんだから。

 というかレオ、単独で魔法を使っているはずなのにあれこそ戦略級の魔法なんじゃないかと思う。

 最後は爆散して花火みたいになるよう調整しているみたいだけど、あれが直撃したらランジ村くらいの規模なら火の海になりそうだし。


 レオ自身も、まったく全力じゃなく加減してやっているようだ。

 ……まさか、レオにかかれば戦略級魔法もお手の物とは。


「大丈夫ですか、タクミさん?」

「あぁ、クレア……っと、ありがとうございますライラさん」

「いえ」


 そんな風に、椅子に座って休みながらぼんやりと眺めていた俺に、クレアから声を掛けられる。

 一緒にライラさんも来ていて、俺とクレアに温かいお茶が出された。


「疲れは感じるけど、大丈夫だよ。それよりも、頑張って魔法を習ったのに、あっちを見る方が疲れる気がしなくもないかなぁ」

「レオ様の魔法、凄いですよね。皆、シルバーフェンリルの全力の魔法を見て、感動しているみたいです。それに、シェリーも頑張っていますし、ラーレもですか。お父様とお爺様は……お婆様が止めに行ったので気にしないで良さそうです」

「あ、ほんとだ。って、エッケンハルトさんもエルケリッヒさんも吹っ飛んでいるけど……」


 爆裂音を響かせていたエッケンハルトさん対エルケリッヒさんだけど、マリエッタさんが乱入して……多分風か何かを使ったんだろう、二人ともあっさりと殴られたような衝撃で吹き飛ばされていた。

 あ、立ち上がって乱入してきたマリエッタさんに文句を言っているようだ、元気そうだから心配しなくて良さそうだな。


「あぁそうそう、今クレアがレオの全力って言ったけど……多分あれ、レオなりにかなり加減していると思うよ」

「え、そうなのですか!? あ、あれで……? あれを何度も放てば、それだけで国が崩壊させられそうですけど」


 まぁ、ポンポン放ってリーザを喜ばせているから、連発もできるだろうし、村を火の海にする魔法を何度も何度も使えば、国も崩壊させられるだろうけど。

 ただレオの様子を見ていると、全力ではないようにしか見えないんだよなぁ――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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