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魔法の実演をしてもらいました



「そう、無詠唱魔法。何度も使って、頭の中で想像した事、発現した内容を魔力に覚えさせる事で、補助がいらなくなり言霊……呪文がなくても使えるようになる。こんな風にね……炎よ!」


 そう言って、手のひらを空に向けて少しだけ強く言葉を発するユートさん。

 手のひらからは、人の顔くらいの炎の塊……火の球が飛び出して空へ向かって射出され、爆発した。


「……えっと」

「今のは、わかりやすく言うとファイヤーボールの魔法ってところかな。最近はあまり使っていないけど、昔はよく使っていたんだ。いろいろと便利でね」


 便利、というのはおそらく魔物とかを含めた、戦闘でって事だろう。

 数十メートルくらいの高さで爆発したけど、そもそもの火の球だった時から、かなりの熱量があったし、それが爆散すれば小さい家くらいなら、倒壊させかねない威力があるように見えた。

 俺とユートさんを遠巻きに見ているクレア達も、驚いているようだし……ちょっとくらい大きな声を出しても聞こえないくらいの距離があるので、いきなり火の球が飛んで行って爆発するのを見たら、驚くのも当然か。

 ただ、エッケンハルトさんとエルケリッヒさんは、何故かしたり顔で頷いているみたいだが、見た事があるんだろう。


 ……レオやフェンリル達が驚いていないのは、もっと威力のある魔法が使えるからかもしれない。

 ともかく、それくらいの威力がある魔法なら、オークどころか人間より大きなトロルドだって相手にできるし、簡単に倒してしまえそうだからな。


「もし呪文を唱えるなら……ファイアエレメンタル・ラージファイヤーボール・インジェクション・エクスプローズ! ってとこかな?」

「おぉ……」


 もう一度、手のひらからさっきと同じように火の球が射出され、空で爆散する。

 つまり今ユートさんは、無詠唱と詠唱の二つのパターンで、同じ魔法を使ったってわけだ。

 ただ、さっき見たのと同じ光景……よりは、少し火の球も爆散する規模も小さい気がした。


「実はこの呪文だけど、さっき言った補助って意味の通り、同じ魔法も違う言葉で発動するんだよ。呪文が魔法効果のすべての役割を担うなら、できない事なんだけど……えっと、ファイアエレメンタル・エクスプローゼス・ウィズ・ア・ラージボール・オブ・ファイア! こんな感じかな。どう、タクミ君?」

「……最初と全く同じ威力の魔法に見えた、かな」


 もう一度、今度は言葉の組み合わせを変えて……というより、単語の組み合わせだけでなくそれっぽい文法にした呪文で魔法を放つユートさん。

 呪文の意味としては、「火の要素よ、大きな火の球を射出して爆発しろ」ってところだろうか。

 最初の「炎よ!」とだけ言った無詠唱の時と、火の球、爆散する規模が全く同じに見えた。


「そうだね。単語の組み合わせでも発動できるし、その通りの効果になるんだけど、文章になっている方が効率が良くなるんだ。結果的に、魔力の消費は少なく、威力も高くできるといういい事尽くめだ」

「成る程、呪文……というより、ちゃんと意味のある文章にする方がいいんだ」

「うん。言葉として一つの意味になっているからだね。まぁ、二つ以上の意味を持たせるとか、他にも工夫はできるんだけど……これは今考えないでいいかな。後々の応用って事で」


 つまり、なんとなくそれっぽい効果が出るようにではなく、はっきりとした効果や方向性を、単語だけでなく文章として示した方がいいってわけだ。

 ……そうなると、疑問に感じていた部分もある程度解消されそうだな。


「もしかすると、違う言語……例えば、英語やドイツ語が混ざっていたら、一つの文章として不足しているから……」

「発動はすると思うよ。けど、威力も魔力の効率もかなり悪いものになるだろうね。まぁ、いろんな言語を使うなんてのは、そのいろんな言語を知っている僕やタクミ君くらいのように、異世界から来た人くらいだろうけど。こちらの世界は言語が違うけど……それも勝手に翻訳されるから、時折複数の言語が混じっているように聞こえたりはするんだけどね」

「成る程……」


 もしかしたら、ちゃんとした効率のいい文章でできた呪文でも、俺には複数の言語が混じっていたり、単語を並べただけにしか聞こえない、という事もあるのかもしれない。

 呪文が滅茶苦茶でも、油断せず気を付けないといけないな……人から魔法を撃たれたりするような戦いを、するつもりはないけど。


「それで、今の文章、単語、それぞれに分解して考えると……魔力に対して、火の要素を大きな火の球にして発射、爆発する、と……要素と効果を含めているわけだね。それらの効果などを何度も使ううちに、頭の中で一連の流れを思い浮かべる事が容易になる。あとは、トリガーとなっているキーワードを声に出せば、発動するんだ。まぁ、ちゃんと思い浮かべられなければ、発動しないんだけど」


 もしかしなくても、それはさっき俺が考えた、発動の結果と頭で想像していた事が完全一致した状況ってわけだろうか。

 キーワード的な言葉はないといけないようだけど、さっきユートさんが言った「炎よ」と同じように、明りの魔法なら「光よ!」とかで発動するなら、かなり短縮して一瞬で発動する事も可能になりそうだ。


「もっと慣れたら、本当にキーワードの言葉すらなく無言で発動できるけど……これはあまりお勧めできないかな」

「無言でなら、もっと簡単に魔法が使えるようになりそうだけど、お勧めできないってのはなんで?」

「ある程度呪文を省略して、一言二言くらいにするまでなら複数の魔法であっても、使い続ければなんとかなるけど完全な無言で、言葉通りの無詠唱にするならもっと習熟しなければいけないからね。それこそ、年単位で一日数十回と使わないと」

「一日数十回……」


 無理、という程じゃないけどかなり難しい。

 シャインの魔法も、十数回使い続けるくらいで魔力が足りなくなるし、回復してからまたとなるとかなりの手間がかかる。

 しかもそれが年単位なら、一つや二つの魔法を無言で発動できるようにするために、少し大げさに言えば人生を捧げるくらいの意気込みで挑まないといけないってところだろう――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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