気分転換にレオと散歩に行く事にしました
「ワフ、ワッフワフ!」
「お―レオ。よしよし……」
庭からさらに外に出て、畑などの様子を見渡せる場所に来ると、レオが俺の元へと尻尾を振りながら駆けてきた。
手を伸ばしてレオを撫でる。
「レオは、何をしていたんだ? リーザはいないみたいだけど……って、勉強中か」
レオと一緒ならいつも俺のところまで走って来るリーザがいないので、顔を巡らせて探すけど、途中で勉強中だったと気付く
俺やレオの名前を書いて、やる気になったリーザはあれから毎日デリアさんに頼んで、お昼まで読み書きを教えてもらっているからな。
そろそろ、他の人達の名前は書けるようになりそうだ。
「ワッフワフ、ワフガウー」
「フェンリル達の監督? 監督なんてできるのかレオ?」
レオは、畑作りの手伝いをするフェンリル達を見守っているつもりのようで、誇らし気に胸を反らしていた。
今日は、穴掘りにレオは参加していないらしい。
「ワフ、ワウワッフ!」
「ははは、ごめんごめん。そうだな、レオなら皆をちゃんと見てくれるよな」
ちょっとからかうつもりで言ったら、心外だとばかりに鳴くレオに笑い、謝る。
好きな穴掘りも我慢しているのは、お風呂と言われるのが嫌だからだと思うけど、それを差し引いてもレオはフェンリル達の事をちゃんと見てくれるのは、わかっている。
今日はランジ村の子供達や、孤児院から来た子供達も一緒に、フェンリル達は畑で作業してくれているみたいで、それをレオが優しく見守ってくれていたんだろう。
「ワウ? ガウ、ワウガウ!!」
「おっと……?」
そんな事を考えていると、レオがフェンリルと子供がいる方に向かって吠えた。
どうやら、気になる事があって注意しているらしい。
そちらを見てみると、背中に子供を乗せた一体のフェンリルが、掘った穴に飛び込もうとしているようだった。
フェンリル達が掘る穴は深いから、背中に子供を乗せたままだと危ないよな……想像以上に、レオはちゃんと皆の監督をしているようだ、優しくではないみたいだけど。
「そういえば、フェンリル達は散歩に行ってるはずだけど、レオはあまり行っていないよな?」
「ワフ? ワウ」
使用人さんに混じって、子供達も時折フェンリル達の散歩に毎日行っている。
けどレオは、俺やリーザと一緒にいる事が多くて、一緒に散歩に行く事がほとんどない。
まぁ、のんびり屋なところがあるし、庭や屋敷の外をフェンリル達と一緒に駆け回ったりもしているから、運動不足やストレスが溜まっているって事はないだろうけど。
「昼食までまだ少し時間があるし、ちょっと散歩に行ってみるか?」
「ワフ、ワフワフ!」
途端に尻尾をブンブン振るレオ。
昔から散歩好きなのは変わらずだなぁ。
犬によっても違うだろうけど、レオは散歩が大好きだからな……散歩、と口にしただけで喜んで尻尾をお尻と一緒に振りながら、玄関に置いているリードを咥えて急かすくらいだ。
外に出ると、近所に住んでいる子供達が集まったりと、遊び相手がいる事も大きかったんだろうけど。
「よし、それじゃ……」
「タクミさん? レオ様が喜んでいるようですけど、何か楽しい事でもあったのですか?」
「あぁ、クレア。レオと昼食まで散歩に行こうかなって言っていたところだよ。クレアはどうしたんだい?」
このまますぐレオに飛び乗って……というわけにもいかないから、誰かに声をかけてと思っていたら、ちょうどクレアが庭から出てきた。
色々なところで手伝いをしたりと動き回る事の多い俺と違って、クレアはこの時間、執務室でなにかやっている事が多いのに少し珍しい。
「少し外の空気をと思いまして。今日はお爺様とお婆様がいましたから……」
どうやら、クレアの執務室にはエルケリッヒさんとマリエッタさんがいたらしい。
見張られている、というわけでもないんだろうけど……孫娘を可愛がっている二人だし。
でもちょっとだけ息が詰まったか何かで、気分転換に外へというわけか。
庭の外まで出てきたのは、俺やレオがそっちにいると聞いたかららしい。
「それじゃ、クレアも一緒にレオの散歩に行ってみる? まぁ、レオに乗って村の周りとかをぐるっと回るくらいだけど」
「ワフワフ!」
ついでだし、気分転換にという事ならレオに乗って走ってみるのもいいだろと、クレアを誘う。
レオも人を乗せるのが好きだから、楽しそうに鳴いて誘っている。
「レオ様に……はい、是非!」
嬉しそうに頷くクレアと、一緒に散歩に行く事が決まった。
「それじゃ、誰かに伝えてから……」
そうして、使用人さんに散歩に行くと伝えてから、俺とクレアはレオに乗ってランジ村一周……かどうかはレオ次第だけど、昼食までの間走り回る事になった。
フェンリル達も、穴掘りを止めて子供達を背中に乗せて参加する事に。
穴掘りも楽しいらしいけど、誰かを乗せて走り回れるのはそれはそれで楽しい事らしい。
さらに出発前、どこからか嗅ぎつけたシェリーがテオ君やオーリエちゃんと一緒に、こちらも参加する事になった。
テオ君とオーリエちゃんはフェリーの背中に、シェリーはフェンの背中に乗る。
さらに子供達が乗っていないフェンリルには、護衛さんや近衛護衛さん、それからエルケリッヒさんとエッケンハルトさんの姿も……いつの間に……。
マリエッタさんは、まだちょっとフェンリルに慣れないらしくティルラちゃんに色々と教えておく、とはエルケリッヒさん談。
ラクトスのスラムに関してとかの話だろう。
何も言わずに出て来て、またマリエッタさんに怒られるという事はないみたいだ。
図書室で集中して調べものをしていた気晴らしとか、ちょっとした暇つぶしのつもりだったけど、意外と大きな催しになってしまったな。
とりあえず、マリエッタさんがフェンリルに慣れるために、同じような催しをしようとしていたんだけど……そちらも開催しないとな。
ランジ村にいる子供達も、全員参加しているわけでもないし、ティルラちゃんや勉強中のリーザも今回はいないから改めてだな。
「ワッフワッフ!」
「結構、道ができてきているみたいだね」
「そうですね。多くの人を使って急がせていますので、もう少しでランジ村からラクトスに繋がる予定です」
楽しそうに、俺達を乗せて走るレオの背中でクレアと話す。
話題は、反時計回りにランジ村の外周を走っている途中に通った、工事中の街道整備。
少し村から離れた場所を走っていると、遠目に街道整備の作業をする人が大勢見えた。
ランジ村に来る時は、途中で途切れていたけど……結構近くまで来ていたんだな――。
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