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できるだけ隠し事はしたくありませんでした



「そんなわけで、ギフトとかユートさんとか……」


 そこから改めて、ギフトや異世界からという関係、ジョセフィーヌさんという初代当主様の話をクレアにした。

 一応この事は、エッケンハルトさんやエルケリッヒさんといった、公爵家の当主になった人は知っているけど、ある程度の貴族位の当主とかでないと知らされない事だから、大っぴらに話さないようにという注意も加えて。

 一部、セバスチャンさんとかマリエッタさんとか、なんとなく察している節のある人はいるけど。


「俺はレオもいるし、ユートさんど同郷だからって事で教えてもらったけどね」

「だから、タクミさんとユートさんは親しく話されるのですね。私よりも、知り合って短いはずなのにすぐに親しそうにしていたものですから、ちょっと羨ましかったです。やきもちです」

「あー、ははは……そうだね」


 上目遣いで、少しだけ頬を膨らませるクレアに苦笑する。

 俺がずっと、クレアに対して丁寧な言葉遣いだった事、気にしていたみたいだからなぁ……。

 会ったその日から、ユートさんとは砕けて話させてもらっているのが気になっていたんだろう、この世界に来てすぐの頃、クレアからも口調を崩してもいいと言われたけど、固辞していたのも影響していそうだ。


「大丈夫そう、かな?」


 クレアの様子を見る限り、これまでの話に驚いてはいるようだけど、何か考え込んだり悩んでいるようには見えない。

 ジョセフィーヌさんの話もあったから、以前話していたシルバーフェンリルに対する思いなどもあって、考え込んでしまわないか心配だったけど。


「大丈夫じゃありません。驚く事ばかりで、平静を保っているように見せかけるので精いっぱいです。もっと早く教えて欲しかったですけど……お父様達くらいにしか知らされないのなら、仕方ないですよね」

「まぁそこはね、うん。もう少し早く話せたんだけど……機会を失っちゃって」


 話そう話そうと思っていたのは間違いないけど、他の事を優先してしまって、こうして話す機会を得られなかった。

 すっかり忘れていた、とも言う。

 ともあれ、空元気という程じゃないけど膨れるクレアを見る限り、重く受け止め過ぎないようなのは安心した。

 シルバーフェンリルの事だけでなく、生き写しやら生まれ変わりって言われていたのに、ギフトが発現したのはティルラちゃんが先だからな。


「でも、私に話して良かったんですか? タクミさんは、ユート様と同じ世界からという事ですから、知っておくべきだとは思いますけど」

「さっきね、ちょっとユートさんと内緒話をしていたでしょ? あの時に許可を取ったから大丈夫。そもそも、多くの人には話せないけど、俺が信頼する人に話すのは許可されていたんだ。一人とか二人くらいだけどね」


 既にティルラちゃんには話してある事をユートさんには伝えてあるけど、そちらも合わせると二人目か。

 これもティルラちゃんが先になってしまったけど、ギフトの話があったから仕方ないと思っておこう。


「そうだったんですね。ありがとうございます、話してくれて。おかげで色々と謎が解けた気がします」

「謎……俺がユートさんと親しくしていたり?」

「もう、意地悪ですタクミさん」

「あらら、また膨れちゃった……」


 でも、やきもちってはっきり言ってくれたのは嬉しかった。

 単純に、やきもちを焼かれたのが嬉しかったのもあるけど、頬も膨らませていたし。

 俺が知っている語源、女性がほっぺを餅みたいにぷくっと膨らませる様子という、その通りになっているのは面白い。

 俺とユートさん、男同士の関係にやきもちというのはちょっとどうかと思わなくもないけど……やきもちを焼かせてばかりなのはいけない。


「でもねクレア。こうして話したのはクレアの事が信頼できるから、ってのはユートさんから許可された範囲だし、その通りなんだけど。やっぱり、できるだけ隠し事はしないでおきたいかなって思ったからなんだ」


 もちろん、全て一から十まで包み隠さずに話さないと、男女間は上手くいかないなんて考えていない。

 言わなくていい事だってあるだろうし。

 そもそも隠していると言っても、俺の事というとよりユートさんやクレアに関わって来る話だから、話さなくても俺の隠し事とまでは言えないはずだ、多分。

 でもできるだけ、話せる事や相談できる事はクレアに言っておきたいという俺の我が儘だ。


 昨日、エッケンハルトさんにクレアと相談しろと言われた事も、少し関係しているかもしれない。

 相談するのは、コカトリスの事だけども。


「私に隠し事を、したくないんですか?」

「うん。もし変な風に疑われて、なんてなったら寂しいし、悲しい。それに些細な事……かはともかく、無駄に喧嘩をしたりはしたくないからね。避けられるなら避けるべきだと思う。俺はできるだけ、こうしてクレアと仲良く過ごしたいし、笑い合っていたいから」


 実際、年が近そうに見えるとは言っても、それでユートさんと俺が親しくしていてクレアがやきもちを焼いていたわけだからな。

 これから同じ事がないかはわからないけど、こうして話す事で納得はしてもらえるはずだ。


「そう言われると、私は何も言えません……ズルイです、タクミさん。タクミさん?」

「うぐっ。今のはなかなか破壊力があった……」


 胸に来るものがあって、片手で抑える俺。

 仕草とか、表情とかはいつも通り可愛いんだけど……頬を膨らませてズルイという言葉は、俺からするとクレアの方がズルイと言わざるを得ない。


「え?」


 キョトンとするクレア。

 それもまた追撃だ。


「ちょ、ちょっと待ってね……すぅ、はぁ……よし」


 クレアを手で制して、深呼吸を一つ。

 よし、落ち着いた。

 ここでイチャイチャしている場合じゃなく、まだ話さないといけない事があるからな……ふぅ。


「と、とにかく、俺はできるだけクレアに隠し事をしないよう、話せる事は話したいって事だよ、うん」

「なんだか、あっさりまとめられました。けど、そうですね、私もタクミさんと同じく話せる事はできるだけ話していこうと思います。そうして、一緒に笑っていけるようにできたら、幸せです」


 し、幸せとまで言うか……いや確かにお互いが信頼し合って、笑い合っている姿を想像すると、それは間違いないく幸せの一ページになるだろうけど。

 幸せの一ページとか、いつから俺はそんな詩人になったのか。

 いかんいかん、頭を切り替えないと……。



読んで下さった方、皆様に感謝を。


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