個人的な考えも含めてギフトの話をしました
「うん、元々はクレアの言う通り別の世界から来た人が持つ能力と言えたみたいだね。でも、こちらの世界に来てから生活するうえで、子供が生まれたりもするわけだ」
「子供が……ギフトは、受け継がれる物なのですか?」
「完全に、というわけじゃないみたいだけどね。俺はユートさんから話を聞いただけだけど……あの話が本当なら、異世界からギフトを持ってきた人が子を成して、系譜の中で誰かがギフトに目覚めて発現させる、という事があったみたい。今のティルラちゃんみたいに」
それこそ、隔世遺伝とか先祖返りみたいなものだな。
ギフトを持っている人の子だから、必ず発現するわけではなく、何世代か後に発現する……「かもしれない」だ。
一応秘匿されているユートさんを除いて、来たばかりの頃は俺以外はこの国にギフトを持っている人がいなかったらしいと考えれば、確率はかなり低いんだろう。
「じゃあ、ティルラは初代当主様のギフトを受け継いだわけですね」
「そうみたいだね。だからもしかすると、クレアも発現するかもしれない。マリエッタさんと話した時は驚いたけど、そうなっても不思議じゃないとも思っていたんだ」
「私が……」
確率的に考えれば、ティルラちゃんがいるのでクレアも発現するというのは、あり得ないと言えるくらい可能性が低いだろう。
サイコロを振って、何度も同じ数字を出すようなものだ。
けど、それはあくまで確率であって絶対じゃないし、もしかしたらユートさんすら知らない条件が他にもあるかもしれない。
だからクレアが絶対にギフトに目覚めないとは言えないし、むしろ発現する事だってあるかもしれない。
マリエッタさんと話して、もしかしたらクレアにも……と考えた時、驚きだけじゃなく内心喜んでもいた。
クレアが俺と同じようにギフトを得て、気持ちがわかるようになりたいというような事を、言ってくれたのもあるけど。
「でも、もしかしたらギフトかもしれない、というあの能力はティルラとは全然……」
「違うね。フェンリル達とも言葉で会話できる能力とか、強制力のある言葉。ティルラちゃんはそんな効果を持つ『疎通令言』」
ティルラちゃんの『疎通令言』は、込める意思によって言葉の強制力は違うみたいだけど、ある程度従ってもいいかなぁ、くらいのものだった。
俺の『雑草栽培』も、生き物相手に植物を生やす事もできるけど、そこには意志の力やら相手の抵抗力やら何やらが関わっているらしい。
難しい事はわからないが、とにかく絶対的な能力という程でもないだろう。
あと、まだお酒を飲めないティルラちゃんはユートさんみたいに、ギフトの力をアルコールで補充したりもできないみたいだし。
あ……お酒と考えて、酔った時のクレアを思い出した。
前は屋敷ができる前、ランジ村に様子を見に来た時だけど酔う事ができていたから、少なくともあの時点ではまだギフトの発現はしていないという事で間違いなさそうだ。
これから、なんだろうな。
「だけどクレアのギフトじゃないか? と思う能力は人の内面を見る能力。言葉で、というのはあまり関係ないみたいだね」
「でしたら、私にギフトがあると仮定しても、ティルラとは別で……初代当主様とも違う?」
「そう。そしてティルラちゃんのギフトは似ているみたいだけど、ジョセフィーヌさんのギフトとも違うみたいなんだ。これも、ユートさんに聞いた話だけどね」
「ティルラも……だとしたら、受け継がれていく中で変化していくという事でしょうか?」
「そこまではわからないけど、その人の性格とか、考えとかが関わって来るんじゃないかなぁって。ギフトはそもそも、そういう能力じゃないかと思うんだ」
願望というか、こうしたい、こうできたらいいなぁみたいな考えなどが、能力になっているんじゃないかと思う事が多々ある。
ジョセフィーヌさんはわからないけど、ティルラちゃんはフェンリル達と仲良くしていて、よく一緒にいるから直接話したいと考えていたようだし。
ユートさんは……ゲームとかに詳しいみたいだから、日本にいる時から魔法をいっぱい使いたい、とか考えていたとしてもおかしくないからな。
俺は、仕事ばかりの時に植物でも育てながらのんびり過ごしたい、なんて考えていたりもして、思い当たる所は当然ある。
「では、私の能力は……」
「もし本当にギフトだとしたら、見た相手の事を知りたいとか……本当にその能力になるかはわからないし、単なる俺の予想なんだけどね」
そもそも、クレアにギフトが発現したとして、人を見る力というのがギフトの主効果になるのかはわからない。
副効果があるから、そちらの可能性もあるわけだし……願望がギフトになるのなら、主効果に関係するとは思うけど。
「まぁとにかく、そうしてギフトは受け継がれる事がある。家系のティルラちゃんがギフトを発現している事はつまり、初代当主様がギフトを持っていた事の証明でもあるんだろうね。とはいえ、間に他のギフトを持った人や家系が重なった可能性もあるだろうけど」
ギフトが発現するという事は、異世界から来たわけではない以上、現在わかっている条件の通りなら確実に家系を遡れば異世界出身者がいるはずだ。
まぁその異世界出身者が、地球とは限らないけど。
俺やユートさん達がいた世界と、この世界……二つの世界があったんだから、また他にも違う世界があったっておかしくない。
……これは今考える事じゃないか。
「初代当主様との、確かな繋がりと言えるのですね」
「絶対じゃないけど、そうだね」
「そうですか……」
少しだけ沈んだ表情になるクレア。
これはあまり言わない方が良かったかな? 今はクレアにギフトがあるのかどうかはっきりとしておらず、ティルラちゃんの方が先に発現しちゃっているわけだから。
ジョセフィーヌさんとそっくりで、生まれ変わりとまで言われていたらしいクレアにとって、思うところがあるだろう。
ちょっとだけフォローしておくか。
「まぁ、ギフトがあろうとなかろうと、クレアはジョセフィーヌさんとそっくりなんだから、繋がりは疑うべくもないと思うけどね」
「それは……そうですね」
そっくりさんは世界に三人いる、と地球では言われていたし、遺伝とか関係なく似ている人っていうのはいるけど……それは言わなくていいな。
血筋的にも、クレアとジョセフィーヌさんは繋がっているのは間違いないし――。
読んで下さった方、皆様に感謝を。
別作品も連載投稿しております。
作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。
面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。
また、ブックマークも是非お願い致します。