話せていない事を話し始めました
「けどあれで、実は俺達よりもう少し上なんだ。というか、実年齢とか生きている年数で言うと……確か千年以上って言っていたかな?」
えーっと、初めて話した時にこの世界に来て数百年は自由に、それからこの国を作ってさらに五百年前後とかだったっけ?
合計で千年を超えるような事を言っていたはずだ。
生きている年数としてはおかしな数字なのと、それ以外にも重要な話をしていたのでちょっと忘れ気味だけど。
あと、気軽に話して近い年齢の友人みたいになっているから、というのもあるか。
「せ、千年以上!? え、えっと……タクミさんが嘘を吐くとは思えませんけど……ですが、本当に?」
口に手を当てて大きく驚くクレア。
それも当然だし、むしろ俺を信頼してくれているような言葉は嬉しい。
「本当に。まぁ生きている年数はユートさんの言葉を信じるしかないんだけどね。でも、これはエッケンハルトさんやエルケリッヒさんも知っている事なんだ。もちろん、ルグレッタさんも」
「お父様やお爺様も……」
ルグレッタさんは、側近というか一緒に行動しているお守り役として、エッケンハルトさん達は一定以上の爵位を持つ当主には知らされるから、知っている。
「でもどうしてそれをタクミさんが? いえ、ユート様と親しく話しているのはよく見かけするので、それで教えられたのかもしれませんが……お父様やお爺様も、同じように親しくされていますし」
「それは、俺がユートさんと同じ所からここに来たから。って言えばわかるかな?」
「タクミさんと同じ……? という事は、ユートさんは異世界でしたか。そこからなのですか?」
「うん。黒髪と黒目、というのはこちらでも珍しいものじゃないけど、同じでしょ? 俺が住んでいる場所は、ほとんどの人が黒髪黒目だったんだ。多少の違いはあったけど。他にも……」
驚くクレアに、ユートさんと俺の共通点と共に、こちらの世界では知り得ないはずの日本の事、地球の事などの話を伝えた。
まぁクレアにもわからない事が多いから、ユートさんに通じるイコール同じ所から来た、という証明としてだけど。
あちらの世界にあって、こちらの世界にないものとか、同じ異世界から来たのでなければ話せない事など、たくさんあるからな。
もしユートさんが偽っていて、誰か他の人から聞いた話とかだと多少は合わせられるかもしれないけど、もっと違和感を感じるだろうし。
あと一番の違いとして、言葉かな。
文字はもとより、おそらくこの世界ではこの世界なりの言葉が話されてて、日本語ではない。
ほんの少し、注意深く観察していないと感じない違和感だけど、それがこの世界の人達と話している時に共通してある事だ。
これは多分、なんらかの理由で俺の耳に入る時か頭で認識する時などに、不思議と翻訳されるからなんだろう。
けどユートさんにはそれがなく、なめらかに日本語として聞こえる。
おそらく日本人同士、というか同じ言語を話している者同士じゃないと、わからない感覚だろうけど。
まぁこの世界の人と話す違和感と言っても、本当に僅かだし、嫌な感じは一切なく、全然気にならない程度なんだけど。
「そ、そうだったのですね。あのユートさんが……でも、それを私に伝えるのは」
「ユートさんの事もあるけど、本題は別にあるんだ。俺の事もそうだし、ギフトの事。それから、公爵家の初代当主様の事も関係するかな」
「初代当主様ですか!? いえでも、ユート様がタクミさんの言われたように長く生きているのであれば、関係していてもおかしくないですね」
さすがに、初代当主様のと聞いて大きく反応するクレア。
ユートさんも言っていたけど、生き写しと言えるくらいそっくりらしいからな。
色々あったようだし、気になるのも当然か。
「リーベルト公爵家の初代当主様、ジョセフィーヌさんだったかな?」
「え、えぇ。確かに初代当主様の名は、ジョセフィーヌ・リーベルトと伝わっていますが……何故タクミさんがその名を? あ、お父様なら知っていますし、そこから……」
「まぁ、エッケンハルトさんに聞いたとも言えるし、ユートさんから聞いたとも言えるかな」
ユートさんと初めて会った時話してくれたのはどっちだったか……色々と衝撃的な内容の話をしていたから、誰がどう話していたかまでは覚えていない。
ただまぁ、どちらにせよしているし教えてもらったのは間違いない。
「それでね、俺とユートさん、それから初代当主様って同じ境遇なんだ」
「同じ……? それはどういう」
「つまり同じ所からこの世界に来たって事。まぁ、俺とユートさんはともかく、初代当主様は別の場所、国だけど。この場合は、同じ世界からって事だね」
確か、ヨーロッパのどこかからってユートさんは言っていたっけ。
俺とユートさんは日本だから、同じ地球からではあっても別だ。
「初代当主様が、タクミさん達と同じ……」
「直接会った事がないのは当然なんだけど、俺も初めて聞いた時は驚いたよ」
「そう、ですよね……」
驚きが強くて、言葉少なになるクレア。
まだ話は途中だけど、このまま続けてもいいのだろうか?
「大丈夫、クレア?」
「……はい。驚きでいっぱいですが、こうして教えてくれているのですし。続けてください」
「わかった。それでえっと、俺はギフトの『雑草栽培』を持っているけど、それはユートさんやジョセフィーヌさんもみたいだね」
「ギフトを……? タクミさんとユート様、それに初代様がそれぞれ持っているのは、偶然……とは言えないのですね? だとしたら、今こうして話してはいないでしょうし」
「さすがクレア。そうだね、俺とユートさん達の共通点はさっき話した通りだよ。もちろん、ギフトの能力自体はそれぞれ違うんだけど、異世界からこちらに来た人はギフトを持っているみたいなんだ」
「ギフトを得られる条件、という事ですね」
断片的にでも、ギフトを持つための条件にたどり着いたクレア。
「つまりギフトとはこことは異なる世界の人に与えられる能力、なのでしょうか? いえ……それならティルラは」
異世界から、というのならギフトが発現しているティルラちゃんはどうなるのか、と思い当たった様子。
条件が一つだけなら、ティルラちゃんも異世界から来たという事になるし、生まれた時から一緒にいる姉妹なのにそれはおかしいからな――。
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