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レオの毛に変化がありました



「とまぁ、興味から大分話が逸れたけど……結構時間が経ったのに、そのままだね」

「これはどういう事なんだろう?」

「シルバーフェンリルの、何かしらの力が宿っているという事なのでしょうか?」


 本題に戻り、レオの毛。

 ほんのりと発光する毛はそのままで、光が強くなったりしないし、弱くなったりもせずだ。


「うーん、力というより単純に魔力かな? 濃い魔力、濃縮された魔力が含まれているから、それが発光現象として表れているんだと思う。魔力の塊みたいな物って考えればいいと思う」

「魔力の塊……前にユートさんが遊んでたやつかぁ」


 あれはどす黒い……もとい、黒い球体の塊だったけど、レオの場合は銀色の光を放つとかだろうか。

 毛の色が銀だから、そう見えるだけかもしれないけど。


「遊んでたわけじゃなくて、フェヤリネッテ……妖精さんに食べてもらうためなんだけどね。まぁ似たような物かな。僕が見る限り、危険はないと思うし、今も少しずつ魔力が抜けて行っているようだよ」

「じゃあ、特に害はないと」

「うん。シェリーの牙のように魔力を蓄えて、そのままっていう性質も多分ないんだろうね。待っていれば発光が止まって、ただの毛になるとは思うけど……こうして、魔力を誘導してやると早く抜けてくれるね」


 そう言って、レオの毛に触れたユートさん。

 何をしたのかはわからないが、言葉通りなら誘導して毛に含まれている魔力を抜いたんだろう。

 元々弱い光だったのがさらに弱く、段々と光を失っていくのが目に見えてわかった。


「それじゃあ、珍しいというのはともかく、特に心配する必要もないのですね?」

「うん、そうだねクレアちゃん。まぁシルバーフェンリルから切り離された毛、というだけで複数の街がひっくり返るくらい珍しいとは思うけど」


 複数の街がひっくり返るって、その例えはよくわからないけど、とにかく珍しいという言葉に収まらないくらいの希少性というのはわかった。


「自然と魔力が抜けるから、これを加工して何かを作るなんて事もできないね。僕としてはちょっともったいない気がするけど……」

「さっき言っていた、寝具とかクッションとか?」

「そうそう。発光する寝具とか、面白くていいよね~」


 そんな寝苦しそうな寝具はごめん被りたい。

 暗闇で光る寝具やクッションなんて、どこのゲーミングなんちゃらだ……カラフルじゃないのは救いだけど、絶対安眠できないし、くつろげそうにない。

 面白いかどうか、と聞かれれば面白いかもしれないけど、作る意味がなさ過ぎてなぁ。

 というか、わざわざシルバーフェンリルの毛を使わなくても、探せば他の物で代用というか作れる気がする、魔法的な物が存在する世界だし、ヒカリゴケみたいなのがあってもおかしくないし。


「光り物が作れないのは残念だけど……って、ん。あれ?」

「どうし……あ」

「光が収まったのはいいですけど、それだけじゃないみたいですね」


 魔力を抜いていたユートさんが、ふと首を傾げたのでよく見てみると、レオの毛に変化があった。

 完全に光がなくなり、銀の綺麗な毛はくすんだ灰色になっている。

 手を離したユートさんの代わりに、クレアと一緒に触って確かめてみた。


「感触は、特に大きく変わらない……かな? 少し硬さがあるようにも感じるけど」

「そうですね。なんというのでしょう、芯が残っているというか。この場合は、芯ができたというのが正しいのかもしれません」

「魔力は完全になくなったんだけど、こうなるんだなぁ……中々面白いものが見れたよ」


 灰色になったレオの毛は、奥の方に少しだけしこりのような硬さを感じさせる。

 茹でが足りない麺の奥に、芯のような硬さが残っているというような……クレアの言うように、芯ができたのかもしれない。

 魔力が抜けると、これまでの柔らかさとは違って硬くなるって事なのか。


「ちょっとだけ経過観察をしてみたいな。さらに時間が経っても、今のままなのか。もしくはさらに変わるのか。タクミ君、頼めるかな?」

「まぁ、それくらいは全然かまわないけど。保存しておくだけだし。風に飛ばされないよう、気を付けないといけないけど」


 場所を取るような物でもないし、紙とか布に包んで保存しておけばいいだろうから、ユートさんに頷いて請け負った。


「これ以上堅くなるのか、このままなのか……シルバーフェンリルの毛は不思議がいっぱいですね」


 俺からしてみると、シルバーフェンリルだけでなく魔法とか魔力があるこの世界そのものが、不思議がいっぱいなんだけどなぁ。

 この世界で生まれ育ったクレアからすると、そこにはあまり不思議を感じないか。

 あって当然の物だからな。

 ともあれ、時間経過で変わるのかを見る事になり、ユートさんは笑顔のまま退室していった。


 シェリーの牙もそうだけど、ある程度好奇心が満たされたからだろう。

 部屋から出ていく直前、俺に向かってウィンクしていたが、気を遣ってクレアと二人きりにするだけでなく、ユートさんに関する話をと促す意味もあったと思われる……鳥肌が立ったのは、言わないでおこう。

 あんまり慣れていないようで、不自然だったからなぁ。

 ユートさんに関する話というのは、クレアから離れて内緒話をしていた時に改めて承諾してもらった事に対して、というか早い話がユートさんと俺が同郷の日本人だという事だな。


「それにしても、ユート様は凄いですね。シェリーの事もそうですけれど、レオ様の毛も見るだけで色々わかっていたようですし。それに、魔力を誘導でしたか? あれも……」

「まぁ、色々と経験豊富みたいだからね」


 二人だけになった執務室で、どう話を切り出そうかと思ったけどクレアからユートさんの話を振ってくれた。

 話しやすくなってラッキーだ。


「でも、私やタクミさんとあまり変わらない年齢のように見えますが、どうしてあれ程の事が……大公爵で王家、というので経験がおありなのはわかりますけど」

「あー、えっとねクレア。見た目としては俺やクレアと大きく差はないけど……」


 俺とクレアは二十歳で、偶然なのか運命なのか同い年。

 ユートさんはこの世界に来た時既に二十代で、不老になった頃には二十代中盤くらいって言っていたかな?

 ともかく、俺以上に童顔なユートさんは、クレアからは同い年か近いと見られていたんだろう。


 年齢の話とか、特にしていないから仕方ない。

 見た目だけじゃなく話し方とか、多分意識的にだろうけどちょっと幼めの少年みたいな口調をしているから、間違えるのも無理はないけど――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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