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とにかくフェンリルダガーは凄い物みたいでした



「手応えとか? こう、ガッといってザっと! みたいな」

「擬音で言われても……まぁ言わんとしている事はわからなくもないけど。えっと、あの時はちょっと抵抗を感じたくらいかな? 多分だけど、刀でオークの腕を切り落とすよりも、手応えというか抵抗を感じたと思う」


 レオの毛玉を切った時の事を思い出しながら、ユートさんとクレアに説明。

 あの時はレオの毛が切れる事がどれだけ凄いか知らなかったので、なんとなくできたのをはっきりと覚えている、という程じゃない。

 それでも、レオが怪我をしないように注意はしていたけど。


「成る程ね……刀でオーク。刀には全て魔法がかかっているから……ふむふむ」


 何やら納得したのか、ブツブツと呟いているユートさん。

 刀を使った事のないクレアは、よくわからずキョトンとしている。


「ってちょっと待って、刀って魔法がかかっている……?」

「あれ、知らなかった? 刀を使っているようだから、てっきり知っている物だと。えっとね、あれは一種の魔法具でね。切れ味とかその他諸々を本来の刀に近付けるために、魔法で強化するようになってるんだよ。まぁ、切れ味という意味では本来の物より上かな」

「だから、オークもすんなり斬れたのか……」


 まだまだ未熟な俺が、使い慣れない刀でオークの腕を切り落とすなんて、ちょっとおかしいとは思っていた……わけではない。

 刀は切れ味が鋭い物と思っていたから、それなりに使える人ならできると思っていたんだけど。

 でもそうか、あれは魔法のおかげだったのか。


「柄から握った人の魔力を少しだけ使って、ってわけだね。本当の刀とは少し違う作り方というか、元々見た目だけの物にしようとしていたんだけど、それを本来の物に近付ける、もしくは超えるためにはそれがいいだろうってね。鍛冶の技術としても他の剣とは一線を画す部分があるし」

「そういう事かぁ……」


 刀の作り方が、他の剣とどう違うのか俺にはわからないが、でも理念が違うと言うのか……押し切る、または叩き切る西洋剣と、引き切る、滑らせて切る日本刀では違いが大きい。

 見た目にも、真っ直ぐな直剣と、反りのある刀での違いもあるし。

 分厚い剣身ではなく、薄い刃を持つ日本刀を作るには、色々と別の技術が必要なんだろう。

 玉鋼は聞いた事があるけど、材質の違いとかもあるかもしれないか。


「そういうわけで、魔法で無理矢理作ってるんだよ。だから量産できないし、魔法の技術的な意味でもあまり喧伝できないんだ。こうして話しているけど、あまり広く知られたくない技術だったりするからね。国として」


 だから、あまり大っぴらに使わないようにとか、刀その物は見られたとしてもどこでどう作られているかとかは秘密なのか。

 まぁ、俺にはその刀を作る全ての技術が、どれだけ重要な情報なのかはわからないが……国としてというのだから、何かしら機密情報や技術が使われているって事だろう。

 多分だけど、魔法的な部分にそれが多い気がする。

 魔法具って作成方法とか、秘匿されている部分が多い……と聞いたような気がするし、あれ? 聞いた事なかったかな? まぁいいか。


「とにかく刀の話は置いておいて、シェリーの牙を使った物だからこそ、レオちゃんの毛も切れたってわけだね」

「あれは、そんなに凄い物だったんですね……それなら、他の牙や爪を使っても……」


 クレアがそういうのに対し、ユートさんは難しい表情。


「うーん、止めた方がいいかな。フェンリルなら、狙われてもある程度なんとかなると思うけど……武器は魔物だけじゃなく人にも向けられる。まぁ使い方次第だけど」

「金属も簡単に切れる武器が、多くの人に渡れば危険……って事?」

「まぁね。とはいえそもそも、扱える腕のいい鍛冶がどれだけいるかって事もあるし、多分一般的にはならないだろうけどね。あとそもそもに、無理に奪おうとしても同じ物は絶対できないよ」

「そうなの?」

「うん。あれはね……」


 レオの毛からかなり話が逸れているとは思うけど、参考に……というかフェンリルと近しい者として聞いておかなければいけないと思い、ユートさんの話に耳を傾ける。

 クレアも同様の気持ちのようで、真剣な表情で聞き逃さないようにしているみたいだ。

 ユートさん曰く、俺とクレアがもらった剣とダガーは使用者が限られるように、生きた魔力が内包されている。

 おそらくそれは、かなり長い年月のうちになくなっていくものだとの注釈があったけど、とにかくある程度頻繁に使っていても、数年程度では切れ味が落ちる事はないようだ。


 そしてその魔力だけど、使用者の選別ができる、生きた魔力、という言葉の通りフェンリル側の意識によって変わるものだそうだ。

 シェリーから抜けた牙は他にもあるみたいだけど、それを使って何かを作ったとしても同じく使用者が限られるため、一般には向かない……いい事なんだけどな。

 そして、肝心な部分だけど無理に奪う、つまりフェンリルに力を持って牙を抜くなどの事をすれば、生きた魔力はないだろうって事らしい。

 自然と抜ける、フェンリルから使ってもいいという許可が出る状況などでなければ、同じ効果は出ないとか。


 自然と抜ける場合は、それまで接していた状況によって変わるし、許可が出るのなら無理に奪い取ろうとする意味はない、というかそれは不可能と。

 そういった事は、フェンリルに限らず別の物でもあるようで、今回のダガーなどと同じように使用者が限られるなど、制限がかかるみたいだ。


「つまりね、多くの人が知るところになっても無駄にフェンリル達が狙われるだけって事。そうして、もし何かがあって牙なり爪なりなんなりが奪われても、レオちゃんの毛を切ったような物は作れないんだ」

「……広めたり多くを作ってもあまり意味はないどころか、不利益が目立つのですね」

「うん、そうだと思う。誰にでも使える物でもないのに、多くを作っても意味はないし……フェンリルが狙われても余計な人死にが出るだけだからね」


 まぁ、フェンリル達なら人から狙われても大抵は返り討ちにしそうだからな。

 さすがに、狙われているのに無抵抗なんて事もないだろう……牙や爪を奪うなんて、穏やかにできる事じゃないから。

 ともあれ無駄な争いを生まないためにも、あまり多くの人に知られない方がいいってのは間違いないか、受け取った時にも話した事だけど。

 シェリーの牙を使った物、というのは秘密にしておいて、ただ切れ味の鋭いちょっといい剣とダガーって事にしておこう――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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