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1609/1997

コッカー達に害虫駆除をしてもらいました



「お待たせした、ペータさん」

「タクミ様。ティルラ様が、何か?」


 畑に戻り、俺がいない間も作業をしていた使用人さん達に会釈をしつつ、ペータさんに声をかける。

 俺が屋敷に戻ったのは、ティルラちゃんを連れて来るためだと思ったのか、顔を上げたペータさんが不思議そうに見る。

 連れて来たかったのはコッカー達だけど、ここにはいないから仕方ないか。


「いえ、すぐに来ますよ……ほら」

「ラーレー! こっちですー!」

「キィ!」


 俺に促されてペータさんと共に空を見上げる。

 ティルラちゃんが手を振りながら呼びかけると、鳴き声を上げつつゆっくりと降りて来るラーレ。

 その背には、何故か誇らし気に胸を逸らしたコッカーとトリースが乗っている。

 マリエッタさんと別れた後、すぐに裏口から出て畑に来たんだけど、裏口の扉は人が少し余裕をもって通るくらいの大きさだ。


 ラーレは飛べるし、フェンリル達は塀を余裕で飛び越えられるから、扉はあまり必要ない。

 最近では、シェリーも塀を越えるくらいなら軽々ジャンプできるようになっているし……保護した直後は、ベッドに登るのも一苦労だったのが懐かしいな。

 ちなみに、塀はラクトスを囲む外壁程じゃないが、立派なもので高さもあるから人だと梯子を使わないと越えられない。

 とにかく、扉を通れないため、ラーレはコッカー達を連れて空を飛んできたわけだな。


 まぁコッカー達は小さいので、俺やティルラちゃんと一緒に来ても良かったんだけど、空を飛びたかったのかもしれない。

 もしかすると、今のように誇らし気な登場をしたかった可能性もあるか。

 結構、調子に乗りやすい質だからなぁ、コッカーもトリースも。


「チチ!」

「チィ!」


 何やら並んで、お互いの外側の羽を上げてポーズまで決めているようだ。

 ま、まぁ、頼りにしているから、とりあえず拍手しておこう。


「わー!」


 俺の拍手に促されてか、無邪気に手を叩くティルラちゃん。

 コッカーとトリースはご満悦な様子。

 他にも、ペータさんや使用人さんも一応の拍手をしてくれて、まばらながらもパチパチとした音が鳴り響く。


「……えーっと、コッカーとトリースなら、虫を喜んで食べてくれると思ってですね」

「そ、そうですか。成る程、コカトリスに任せるわけですね」


 気を取り直し、地面に降り立ったラーレの背中から、コッカーやトリースを降ろしつつペータさんに説明。

 以前、別邸で植物に付いた害虫などを食べてくれたおかげで、綺麗に育っているのを見て感心していたから、すぐに理解してくれたようだ。


「それじゃコッカー、トリース。あとラーレも。土の中から虫を見つけて食べてくれえるとありがたい。これは食べないようにな」


 うねうねしているルクルムワームをつまんで持ちながら、コッカー達に見せつつ、やる事の説明。

 ちょっと気持ち悪いけど、手袋もしているし、足が無数にあるような虫じゃないから、なんとか我慢できている。

 他にも、特に多く見つかる害虫やゾウネムシなどをペータさんが見つけた端から、ラーレ達に見せて教えていく。


「こちらはできるだけ見つけたらすぐに駆除を。あとは……」

「まぁ全部覚えきれなくても、もしわからなかったらペータさんや使用人さんに見せて、食べてもいいか聞いてくれ」

「キィ!」

「チチ!」

「チィ!」


 シュタっと、並んだラーレとコッカーとトリースが、片方の羽を上げて敬礼っぽくしながら返事をする。

 何度も見ているけど「了解!」という意味で使うのに気に入ったみたいだな。

 まぁ、ティルラちゃんがいるから通訳はできるんだけど、簡単な意思表示がわかりやすいのはいい事か。

 ちなみに、俺に聞けと言わなかったのは、俺自身まだどの虫がどうかって全部わかっていないからだ。


 ペータさんは言わずがな、使用人さん達は農業経験のある人もいるようで、それなりに知識があるため聞く時はそっちだな。

 俺はまだ勉強中という事で……情けないので、自分で見つけて教えてもらったのくらいは忘れないように気を付けよう。


「それじゃ頼んだぞ!」

「チー!」

「チィ!」

「キィ!」


 もう一度、敬礼っぽい仕草をして仕事にとりかかるコッカー達。


「おぉ、もう何匹もの害虫を……」

「虫のいる位置がわかるのかもしれませんね」


 早速とばかりに、近くの地面をくちばしでつつき始めたコッカー達。

 土が柔らかいのもあって、簡単にくちばしが入り込んでいるのはいいんだけど、顔まで埋もれているのは大丈夫なのか……と思っている矢先に、一匹、二匹とつつく度に虫を捕まえて食べていた。

 空振りの時もあるようだけど、狙ったように虫が取れていて、ペータさんは感心しきりだ。

 おそらく、虫がいる場所がなんとなくわかるんだろう。


「大丈夫ですか、ラーレ?」

「キィ……」


 他方、ラーレはコッカー達程上手く虫を捕まえられていない様子で、ちょっと落ち込んでいるのをティルラちゃんが声をかけていた。

 まぁ猛禽類だしな……くちばしの形状的に、真っ直ぐ土をつついて虫を捕まえるのには向いていないんだろう。

 コッカーやトリースみたいに、虫の位置はある程度わかっているみたいだけど。

 猛禽類は本来肉食だから虫を食べないとは思うが……ラーレは魔物だから完全に同じというわけではないんだろう。


 肉類は好きなようだけど、野菜とかも喜んで食べていたし。

 好みはあるにしても、ラーレに聞く限りではコッカー達と同じように雑食なんだと思われる。


「ラーレ達、お食事してるの?」

「あぁリーザ。うん、土の中には虫がいっぱいだからなって……随分汚れたなぁ」

「えへへ……ママが、勢いよく土を降らせていたから」

「まぁ、あれの近くにいたら仕方ないか」


 ラーレが来たのに気付いて興味を惹かれたのか、レオやフェンリル達がやっている穴掘りからこちらへ戻って来たリーザに、後ろから声を掛けられた。

 作業を再開していた手を止めて、振り返ってみると……頭から尻尾まで、いたる所に土を付けたリーザがそこにいた。

 まぁ土まみれって事だな。

 しかしリーザ、そこは照れるところじゃないからな? レオが勢いよく土を舞い上げるのは見ていたから、汚れるのも当然だろうけど。


 大方、空に舞う土を頭から被ったんだろう。

 ……後で、ライラさん達には洗濯の手間を増やした事を、謝っておかないと。

 この様子なら、作業が終わったらレオと一緒にお風呂直行だな――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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