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1607/1997

害虫は取り除く必要がありました



「地中に埋めた腐った枝葉など、植物に対して有益な物を食べるのです。そして、その後に排出される物は、土を汚染して植物が育ちにくい土になります」

「な、成る程」


 肥料になる腐葉土とかを食べて、植物が吸収するはずの栄養を横取りして食べる代わりに、毒のような害になる物を排泄物として出すって事か。


「ネズミなどのように、畑の物を食い荒らすのではなく土その物を悪くする害虫ですね」


 成る程と、ペータさんの話に頷く。

 ネズミはこちらにも当然のようにいるらしく、地球にいるのと変わらず繁殖力がかなり強くて、色々と害をもたらす存在だ。

 それもあって、地球の歴史をある程度知っているユートさんを含め、この世界に来た人達が上下水道……特に下水をしっかりと整備したんだろうな。

 強い感染力と、高い致死性のある黒死病とも呼ばれるペストは、ネズミなどのげっ歯類を媒介していたようだから。


 抗生物質などがあれば対処もできるけど、医学が発達していないこちらの世界では、下水を整備して衛生面を強化する方が手っ取り早かったんだろう。

 こちらに来た人達が、医学に詳しいとは限らないし、下水くらいならある程度の知識を持っている可能性が高いからな。

 まぁ衛生面はともかく、見た目でよく忌避される事もあるネズミを、俺はそこまで忌避感はなかったりもするんだけど……あくまで、衛生面を鑑みなければだけどな。


「見つけたら、できれば取り除いた方がいいですね。まぁ、一匹や二匹でどうこうという程ではありませんが」


 大量にいなければ、そこまで大きな問題にはならないのか。

 ともあれそれでも害虫、あまり覚えたくないけど一応ペータさんが摘まんでいる、ゾウネムシとやらの幼虫を見て覚えておく。

 ……幼虫って、大きさはともかくなんとなく似ているのが多いから判別できるかは不安だけど、とりあえず先端が青い事は覚えておこう。


「わかりました、念のため見つけた場合は排除しますね。あまり触りたくはありませんが……」

「虫は苦手な方も多いですから、仕方ありません。できるだけで構いませんので、よろしくお願いします」


 苦笑するペータさん。

 俺と同じように、やっぱりこちらでも虫を嫌う人は多いのか。

 まぁそれでも、怪我防止のために手袋をしているし、素手で触るよりは全然マシだからなんとかなるだろうと、発見次第取り除く事を約束した。


「やっぱり結構、虫っているんだなぁ。別邸では、コッカーとトリースのおかげでほとんど見る事がなかったけど。あと、薬草は作っていたけど土いじりはほとんどしていなかったのもあるか」


 別邸では、庭師のような事をして景観を整える使用人さん……これも執事さんかメイドさんなんだけど、そういった人がいるから、ほとんど虫を見る事はなかった。

 コッカーとトリースが来てからは、一度も見てないくらいだ。

 そもそも虫自体が多いというわけではないみたいだけど。


 それでもやっぱり、土の中には多くの虫がいるようで、作業をする中で何度も見かけた。

 足がいっぱいあるムカデみたいなのとか、羽が付いているのに飛ばず地中に潜るアリに近いのとか様々だ。


「はぁ、腰よりも虫を見る方が疲れる気がする……精神的な物なんだろうけど。って、これはミミズ?」


 溜め息を吐きながらも、時折見かける虫をペータさんと話しながら、害になるのを取り除いている中で発見した、細長い緑色のウネウネした生き物。

 大体、十センチ程度の長さで幅は二センチ程か……ミミズのような見た目だけど、色が違うのと俺が知っているのより少し大きい。

 肥え太ったミミズ、と言えるかもしれない。


「それは、ルクルムワームです。土を植物にとって好ましい環境にしてくれる虫なので、そのままにしておいて下さい」

「あ、はい。わかりました」


 ミミズっぽいそれは、ルクルムワームって言うのか。

 ワームは蠕虫ぜんちゅうの事かな……ミミズみたいに体全体の伸縮で動く生き物の事だ。

 芋虫なんかもそれに当たるし、ゾウネムシの幼虫も近い……あ、いや、あいつは小さく細かい足が生えていたな。

 くそう、鮮明に思い出してしまった。


 ともかく、ミミズと同じように益虫って事か。

 ゾウネムシの幼虫とは逆で、排泄物が植物にとって好ましい環境に作用するとかなんとか。

 まぁルクルムワームがミミズと同じ事をするのかはわからないけど……。

 そういえばミミズって一応動物扱いで虫の分類じゃないんだっけ? まぁどちらでも今の俺にはあまり関係ない事だけど、とりあえずペータさんとかこの世界の人的には虫の分類として考えられているみたいだ。


 ちなみに、ミミズの方は多少気持ち悪いと忌避感はあるけど、苦手という程じゃない。

 分類上で虫じゃないかもしれないと思っているからだろうか? いや、あまり関係ないかもしれない。

 色は違うけど、ルクルムワームがミミズと同じであれば、猫にマタタビ、犬にイヌマンのイヌマンを作れるかな?

 とは思ったが、完全に同一なのかもわからないので変な事はしないでおこう、一応益虫だから捕まえずにこのまま放っておくのがいいらしいし。


「ルクルムワームは土に良い虫なのですが、似ているだけで逆に害をもたらす、ノクサワームというのもいますので注意して下さい」

「似ているけど、逆の作用をさせるのもいるんですね」

「はい。困った物で、ノクサワームは土その物を腐らせてしまいます。今の所見ておりませんので、この辺りにはいないようですが……一匹いれば一つの畑が駄目になると言われています」

「一匹で一つの畑……」


 それはかなり危険な虫だ。

 念のため、ペータさんに特徴を聞いておく。

 ノクサワームはルクルムワームと同じ形状をしているけど、その色は茶色で俺が知っているミミズに近いようだ。

 土の保護色なので発見しにくいけど、実際に近くにいればすぐにわかるらしい。


 原因は、その大きさ。

 人の腕位の太さと一メートルを超える長さらしい。

 確かにそれくらいなら、いくら保護色でも動いていればすぐに発見できるか……土だって動くだろうからな。

 基本的に、大量にいる場合を除いて他の害虫はある程度見逃される事もあるが、ノクサワームだけは見つけたら必ず排除しなければいけない。


 見逃さないよう、注意深く見ておこう……他の虫も見る事になるから辛いが。

 まぁペータさんの言っている通り、これまで見かけなかったうえ、そもそもここの畑予定地の土が無事だから現状ではいないんだろうけど――。



読んで下さった方、皆様に感謝を。


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申し訳ありません、更新停止中です。
夫婦で異世界召喚されたので魔王の味方をしたら小さな女の子でした~身体強化(極限)と全魔法反射でのんびり魔界を満喫~


― 新着の感想 ―
[良い点] 成虫がどんなものかわかるなら、フェンリル達に日中帯にでも遊びがてら排除して貰うのもいいかもねぇ。 [一言] 最近見たテレビで、猫がマタタビでゴロゴロするのは、蚊除け成分を体に着けるため、と…
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