土の中にはいろいろな物がありました
「でしたら、あちらのフェンリル達を手伝ってあげて下さい。レオ様やリーザ様も加われば、喜ぶでしょう」
「ワフ!」
「はーい!」
ガラグリオさん達の方ではなく、畑を掘り返しているフェンリル達の方を示すペータさん。
すぐにレオとリーザが、楽しそうに尻尾を振りながら走っていく。
遊びの延長なんだろうけど、楽しくやれるならそれでいいか。
しかしレオ……穴を掘るのはいいが、汚れてしまったらまたお風呂に入る事になるって、忘れていたりしないか? まぁ、野暮だから今は言わないけどな、ふふふ……。
リーザは毎日ちゃんと嫌がらずにお風呂に入るから、そちらは気にしない。
まぁ服が汚れたら、洗ってくれるライラさん達が大変になるかもだけど、そうなったら一緒に謝ればいいだけだからな。
「おぉ、凄いなレオ……」
駆けて行ったレオ達の様子をしばらく見ていると、フェンリル達に混じって穴を掘り始めた……のはいいんだけど、レオだけ土を大きく巻き上げるようにして派手に掘っている。
張り切っちゃったのかもな。
他のフェンリル達は、頑張ってもせいぜい一メートルくらいなのに、レオだけは人が見上げるくらいの高さまで土を回せている。
……前足で掘ってどうやったらそれだけのことができるのかわからないけど、お腹とかかなり汚れてそうだな。
「うん、レオは後でお風呂決定だなぁ、これは」
「た、楽しんでいるようで何よりです」
呟く俺の隣では、様子を見てちょっとどころではなく引き気味のペータさん。
まさか、あそこまでとは思っていなかったんだろう……既にレオの上半身は掘った穴の中で見えなくなっているし。
近くにいるはずのリーザを巻き込んでなきゃいいけど。
それでも、土を被ったりはしているはずだから、終わったらリーザも一緒にお風呂に入る事になるだろうなぁ。
「さて、それじゃ俺は、と。ペータさん、これくらいの石は邪魔になりますか?」
尻尾がブンブン振られていて、楽しんでいるのが離れていてもわかるので、あちらはとりあえずそのままにしておいて……俺はペータさんのやっていたゴミ拾い、石などの硬い物を取り除く作業を手伝おう。
そう思って、足下の地面を手で軽く掘ってみると、すぐに拳サイズの硬い石が出てきた。
「あ、はい。それくらいの石はできるだけ取り除いて……ではなくて、タクミ様がやらなくても私がやります!」
レオの方をぼんやり見ていたペータさんが、俺の見せた石を見て頷いている途中でハッとなって慌て始めた。
俺が手伝おうとするとは思っていなかったのかもしれない。
「ははは、いいんですよ。他にやる事もありませんし、これくらいは手伝わせて下さい。準備をやらせておいて、俺だけ何もしないってわけにもいきませんから」
まぁ、書類関係だとか、話し合いも一応やっているし、畑の準備が終わったら薬草を作るのは俺が担当しなきゃいけないから、何もやっていないわけじゃないけど。
だからって手伝っちゃいけないとかじゃない。
ゴミ拾いくらいなら、素人の俺でもできる事だしな。
「そ、そうですか? では……申し訳ありませんが、よろしくお願いします」
「はい」
本当にいいのか? という風ではあったけど一応承諾してくれたペータさんに頷き、ゴミ拾いを開始する。
大小さまざまな石や、腐りかけの布切れ、木の枝や葉っぱ、様々な物が土の中から出て来る。
中には、おそらく元は剣か何かだったんだろう、完全に錆びた金属片とかもあった。
多分本来はかなり深くの地層に埋まっていた物だろう、と思われる。
それらが、地中の深いところではなく割と浅い所……大体十センチ程度掘れば見つかるのは、以前レオが掘り返したり、フェンリル達が掘り返してくれたおかげらしい。
他にも割れた陶器や、馬具らしき物などもあって、土に埋まっている物って色々とあるんだなぁと感心。
ちょっとだけ、発掘気分にもなった。
「硬めの物は、表面近くに埋まるように掘ってくれているみたいですから、助かります」
「もっと深くには、ないんですか?」
「私の方で何度か、かなり深くまで掘って確かめてみたのですが、表面近くより深い場所では、邪魔になるようなものはありませんでした。フェンリル達にも確認しましたが、ちゃんとそうなるように掘っているらしいのです」
「そうですか……それは助かりますね」
人が掘ったら、埋める前に掘り出した土からごみを取り除いて、とできるけどフェンリル達にとっては掘って埋めるまでが一セットになっている。
本来は空気を含ませる以外に、深く栄養を多く蓄えている、ペータさん曰くいい土を表面近くに持って来る事が目的だからそれでもいんだけども。
そのため、掘り返して一応元に戻った地面を探して、邪魔になる物を取り除かないといけないんだが、ちょっと掘っただけで出て来るのはそれだけでものすごく助かる。
「それに、葉っぱなどはほとんどそのままですが……ほらこのように、枝や石などはある程度小さくされているみたいなんです。さすがに全部じゃありませんが」
「へぇ~。確かに、何か鋭いもので斬ったような跡がありますね」
ペータさんが土から取り出して見せてくれたのは、いくつかの枝や石など。
断面が鋭い何かで斬られたような跡があるので、おそらくフェンリル達が掘る際に爪で斬り裂いたんだろう。
中には、くっ付けるとぴったり合わさる物もあるし、枝などもまだ腐り始めていない新しい物なので、邪魔になると判断したんだと思われる。
畑にする場所だから、とは伝えているけどそれをちゃんと理解して、ただ掘るだけでなくそういったおまけ? も付けてくれるとは……後でいっぱい褒めておこうと思う。
ちなみに、植物性の物で大きく邪魔になる場合、いったん取り除いてから細かくして、もう一度埋めるらしい。
邪魔にならない大きさの物と含めて、こちらも後々腐葉土になるようにだな。
「ふぅ……さすがにずっと続けていると、腰に来ますね……っと」
しばらく作業を続けて、腰を伸ばしたり上体を逸らして体を解す。
「そうですね。タクミ様、大丈夫ですか? なんなら、もうここまででも……」
「いえいえ、薬草作りで慣れていますから」
かがんで土を掘ってゴミを拾い、体を起こして少し移動し、またかがんで……という作業を続けていると、やっぱり腰に負担がかかる。
とはいえ、やっている事は薬草作りの時とあんまり変わらないし、慣れているから耐えられなくなる程じゃない。
この世界に来る前の俺だったら、多分もう既に腰が痛くて動けなくなっていたかもしれないけど。
……薬草作りだけでなく、剣の鍛錬で体を鍛えているおかげだろうな――。
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