畑にするのは大変な手間がかかるようでした
「あぁ、木片や木の枝、葉などの植物であれば、全部取り除かなくて大丈夫ですよ」
ペータさんに止められた。
「そうなんですか?」
石程じゃないけど、そういった物も邪魔になるのかなと思ったけど。
「大きなものはさすがに取り除きますが、植物などは土の肥料になりますからね。土の表面に出ているのは深く埋めたりして、しばらく寝かせるんです」
「そういう事ですか……」
つまり、腐葉土にするってわけだな。
どこかで作った腐葉土を持って来るのではなく、深めに埋めておいて自然と腐葉土になるのを待つって事か。
ちなみに、フェンリル達のおかげで掘り返して土が柔らかくなっているうえ、深く埋まっていた石などの硬いものが表面近くまで来ているため、かなり整いやすいとか。
拾う手間はあるが、それにかかる時間や作業量はかなり短縮されているらしい、さすがフェンリル、でいいのかな。
「畑作りは、植物を育てるだけでなく、その土作りからするものです。ですからこうして、整える事が重要なんですよ」
「でも、大変じゃないですか? 他の人達に手伝ってもらったり……」
それこそ、フェンリル厩舎を作った後の従業員さん達なら、今は忙しくないし手伝ってくれると思う。
「そうですね……さすがに一人では大変ではありますが、これも楽しい作業ではあります。それに、フェンリル達のおかげで大分楽ができておりますよ。もちろん、大変な作業は手伝ってもらわないといけませんけど、余裕のある時間にこうして土をいじっているのは、私にとっては喜びなんです」
顔を綻ばせるペータさんの言葉に嘘や遠慮はなさそうだ。
農作業が好きだから、大変と思われる作業でも楽しんでやれるんだろう。
薬草畑は通常の農地よりは狭い方だとは思うけど、それでも広いから大変なのに……でも、ここはペータさんがいるけど、農家の人達はそれぞれの場所でやっているんだよな。
もちろん、一人でやる事はほぼないだろうが、それでも広大な農地を耕してごみを取り除いて整えて、さらにそこから種を植えたり苗を植えたり。
その後も色々とやる事が多いのは、簡単に想像できる。
地球だと便利な機械はあるけど、それでも農家の人達って大変なんだなぁ。
そりゃ、手を合わせて「いただきます」や「ごちそうさま」など、感謝の挨拶をするようになるわけだ……全員がするわけじゃないし、農家や作物などの食べ物だけにってわけでもないけど。
なんとなく、料理人さん達も含めて作ってくれた人達に感謝の気持ちを、というのはあったけど、これからはもっと気持ちを込めてやろうと思う。
「でも、楽しいからといって無理は禁物ですよ?」
ブレイユ村では、若い人達が中心になって農作業をやっていたから、ペータさんは見るだけだった。
それもあって張り切っているのかもしれないが、年齢的な事もあってか、立ってじゃなく椅子に座って眺めていた光景を思い浮かべると、あまり無理はしないで欲しいと思う。
「えぇ、承知しております。少し無理をすると腰が言う事を聞かなくなりますからね」
「中腰になる事が多いですからね……ふむ」
苦笑するペータさんは、土が付いたままの手を後ろに回し、自分の腰をトントンと軽く叩く。
農作業の多くは腰をかがめてやることが多い。
完全にしゃがみ込んでもできなくはないんだろうけど、それじゃ効率が悪いし、いちいち座って立ってを繰り返す方が体力的にきつかったりするからな。
俺も、薬草を作る時などにずっとかがめている体勢で、きついときもあるし……できるだけ意識的に腰を伸ばすようにはしているけども。
でもやっぱり腰って負担がかかる事が多いからなぁ。
ブレイユ村の村長さんのように、腰を痛めたりする事もあるわけだし、湿布薬とかを作ると喜ばれるかもしれないな。
「どうされましたか?」
「ワフ?」
「あ、いえ。やっぱり腰が痛くなると大変だろうなぁって、考えていまして」
考え込んでいると、不思議に思ったペータさんに声を掛けられる。
レオも不思議そうにしていた。
「そうですね……痛くて動けなくなる事もありますから。ご心配ありがとうございます。でも、そのために皆さんには手伝ってもらっていますから。ほら、フェンリル達が穴を掘っていますが、あちらではガラグリオさん達に手伝ってもらっていますし」
「そういえば、あれは何をしているんでしょうか?」
ペータさんが示した先には、尻尾を振りながら穴を掘っているフェンリルと、その周辺にガラグリオさんや他の従業員さん達がいた。
近くには数本の枝打ちがされておらず、葉が生い茂った木が横たわっている。
別のフェンリル達は、畑の予定地を掘り返しているんだとわかるんだけど、あっちは畑の区画間……つまり、掘り返さなくてもいい場所のはずなんだが。
「あれは、植樹をしてもらっています。以前話したように、木を植えて畑を区切るためですね」
「あぁ、そういえば」
植えた植物が他の畑に種を飛ばしたりなどで、生育の邪魔をしないように、また風除けなどの効果も見込めるとかで木を植えたいって言われていたんだった。
まだ全てではないけど、ある程度森から木をとって来て植えようとしているって事か。
植えるためにまずフェンリルに頼んで掘ってもらっているんだな。
「力仕事などはあのように、他の方に任せておりますから」
木を植える作業は、確かに力仕事だからガラグリオさん達に任せたんだろう。
成る程な、ちゃんとペータさんは俺がよくいう無理をしない、という言葉を考えてやってくれているわけだ。
意味がなかったとは思わないけど、過剰に心配する必要はなさそうだ。
「ワフ、ワフワフ!」
「お、レオも穴を掘りたいのか?」
「ワッフ!」
「ママがやるなら私もー!」
「リーザもかぁ。まぁ怪我はしないように気を付けるならってところかな」
フェンリル達の様子を見て気になったのか、レオが自分も穴を掘りたいと主張。
それにリーザが同調するが、手の動きは素手で掘る気満々だ。
道具を使わなくても掘れるとは思うが、素手だと怪我をする可能性もあるから、そこに注意をすれば許可してもよさそうだ。
でも、リーザは獣人だから穴掘りをしたいのか、レオがやるからなのか……まぁ細かい事はいいか。
そういえば、リーザは耳と尻尾から見るに狐っぽいけど、狐も狼と同じで巣は穴を掘って作るんだったか。
キタキツネとかになると、飛び上がって厚く積もった雪に飛び込んで狩りをする事もあるとか……これは穴掘りには直接関係ないかな?
ともかく、もしかしたらリーザもレオやフェンリル達と同じように、穴を掘りたい本能的な何かがあるのかもしれない、なんて考えた――。
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