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1602/1997

リーザのおかげで和みました



「そうかそうかぁ」

「ワフゥ!」

「んにゃー、えへへ!」


 感謝を伝えるように、リーザの頭を耳と一緒に撫で、レオは再びリーザの顔を舐めていた。

 執務室に飛び込んできた事を注意しようかなと思っていたけど、これを見せられたら叱ったりはできないなぁ……俺やレオが喜んでいると思って、すごい眩しい笑顔だし。

 まぁ、今は褒める方に集中して、注意はまた後でいいか。


 注意とか叱るとかではなく、こういった時は誰の部屋かは関係なくノックをするんだとか、デリアさんにあまり迷惑をかけないよう、言う事をしっかり聞くんだぞ、と教える形がいいかな。

 駄目な事はちゃんと駄目と教えないととは思うが、俺はどちらかというと褒めて伸ばす方針だ。

 ……今決めた事だけど。


「デリアさんも、ありがとうございます。リーザに教えてくれて」

「いえ、タクミ様にお願いされた事ですし……私も教えていて楽しいですから。それにリーザちゃん、自分の名前よりも先に、タクミ様とレオ様の名前を書くって頑張っていましたから」


 頑張っているリーザを目の前で見ているからこそ、強く止められずに駆けるリーザに追い付かなかったのかもしれない。

 単なる想像だけど。

 でもそうか……自分の名前よりも先に、俺やレオをか……。


「はははは! ありがとうなリーザ。本当にうれしいよ!」

「えへへー!」

「ワフ、ワフーン!」


 さらに念入りに、リーザの頭を優しく撫でてやる。

 レオも尻尾を振って喜んでいるな。

 後回しにしたけど、こんなの叱ったりできないじゃないか……。


 自分よりも俺達を優先してくれたリーザを見て、満面の笑みで輝いてすら感じるのに、その笑顔を曇らせるわけにはいかない。

 むしろ、それが親代わりである俺の義務だ……というのは少々大袈裟かもしれないが。


「ふぅむ、小さい頃のクレアを思い出すな。うむ、仲良きことは美しきかなだ」

「そうですね。私もまだ新人だった頃、クレア様が両親の名前を書いて、喜んでいたのを思い出します」

「あれはいいものだぞ、アルフレット。タクミ殿の様子を見れば、わかるだろうがな」

「はい。私もいずれは、と思ってしまいますね」

「うむ、やはり子は宝だ。年齢的に難しいのはわかっているが、ジェーンとの間の子にも期待してしまうな」


 俺がリーザを褒めている間に、エッケンハルトさんとアルフレットさんが朗らかに笑いながら話しているのが聞こえる。

 クレアの小さい頃か……お転婆だったというのは聞いているけど、今のリーザみたいな感じだったんだろうか?

 アルフレットさんは俺の倍以上の年齢だし、ジェーンさんも近いからちょっと難しいかもしれないけど、この俺の喜びを分かち合う……じゃないな、同じような体験をして喜びを知って欲しいから、頑張って欲しい。

 そのうちと考えていたけど、何か助けになりそうな薬草とか薬を、探してみるのもいいかもな。


「よく書けてるなぁ。じゃあ、次はここにリーザの名前も足して書かないとな?」


 俺とレオの名前が書かれた紙を見つつ、リーザに言う。

 リーザの名前があって、完成するような気がしたから。

 けど、リーザは俺の言葉に首を振った。


「ううん。次はね、ライラお姉さんと、クレアお姉ちゃん。ティルラお姉ちゃんにデリアお姉ちゃん。それからそれから……えっと……」


 と、自分ではなくライラさん達の名を挙げていくリーザ。

 良くしてくれている人達の名前を書いてみたいらしい。


「私の名がなかったのだが……」

「まぁ、そういう事もありますよ、エッケンハルト様」


 リーザから名前が挙がらなかったとして、背中を向けて落ち込んでいるエッケンハルトさんを、アルフレットさんが慰めている。

 全員言い切れなかっただけだから、きっとリーザはエッケンハルトさんの事も書いてくれますよ!

 初めて出会った時怖がられたけど、一緒にリーザを助けて連れ帰ったんだし。


「アルフレットは、名が出たから良いのだろうがな……」

「私はまぁ、リーザ様と直接接する事が多いですから、名を出しやすかったんだと思いますよ?」


 いじけて見せるエッケンハルトさん。

 アルフレットさんは、リーザからアルフレットおじさんと呼ばれて、それなりに懐いてくれている。

 ライラさん程じゃないけど、俺の近くにいてリーザのお世話もしてくれる事が多いからだろう。

 初めて呼ばれたのはまだ別邸にいた時だが、結構嬉しそうにしていたアルフレットさんが、ジェーンさんに溜め息を吐かれているのを覚えている。


 ……ジェーンさんに対しては、ジェーンお姉ちゃんなんだけどまぁそこは気にしないでいいだろう。

 まだ幼いのに、そういった部分の気遣いができるなんてうちの子は優秀だ、とちょっとだけ感動したもんだ。


「私も、よろしいのですか? リーザお嬢様」

「うん! リーザお姉さん大好き! だから書いてみたいの!」


 ライラさんは一番に名前が挙がったように、俺から見てもリーザが一番懐いているみたいだからな。

 満面の笑みで答えたリーザに、こちらも背中を向けたライラさん……泣いてはいないと思うけど、肩を震わせているのは喜んでくれていると見ていいだろう。


「うんとね、えっとね……勉強するとね、皆が喜んでくれるってデリアおねえちゃんが言ってたの。だからリーザね、頑張ろうって」

「うん、そうだな。俺も嬉しいしレオも喜ぶ。もちろん皆も喜んでくれると思うよ」

「ワフワフ!」


 リーザが俺達を喜ばせるために、一生懸命頑張ろうという気持ちが伝わって、顔が綻ぶ。

 あ、ちょっと目頭が熱くなってきた……なんとなく、エッケンハルトさんと初めて会った時、無事なクレアやティルラちゃんを見て、涙ぐんでいた気持ちがわかるな。

 まぁそれとはちょっと状況が違うけど。

 なんにせよデリアさんのおかげで、リーザもやる気が出てこうして名前を書いてくれたんだから、お礼を言っておかないとな。


「ありがとうございます、デリアさん。リーザも勉強に乗り気ですし、任せて良かったです」

「私はただ、勉強して覚えた文字で、皆さんの名前を書いてみると喜んでくれる。と伝えたのですけど……」


 と、デリアさんが恥ずかしそうにもじもじしながら答えていた……勉強すると喜ぶというのはリーザなりの解釈だな、間違ってはいないと思うけどまぁ、勉強自体はリーザのためなんだけどな。

 ともあれ、リーザがやる気になっているんだから、余計な事は言わないようにしよう。

 ちなみにデリアさんは、尻尾が揺れているし、耳もパタパタしているから喜んでいるようだ。

 レオやフェンリル達もだけど、獣人は感情表現が耳や尻尾に出て微笑ましいな――。



読んで下さった方、皆様に感謝を。


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