森の調査の報告を受けました
「それじゃあ、複数の人が森に出入りしている、で間違いないんですね?」
マリエッタさんに謝ったり、むしろ朝から申し訳ないと謝られたりとした朝食後、森の調査隊がなんらかの痕跡を発見したらしく、エッケンハルトさんと一緒に俺の執務室で報告を受けている。
報告してくれるのは、調査隊を指揮してくれている女性の近衛護衛さんと、フィリップさんだ。
男性班長の近衛護衛さんは、今日は調査隊ではなくテオ君やオーリエちゃんが村の方に、フェンリル達と遊びに行っているのを見守っている。
ちなみに、調査隊の指揮は基本的に男女どちらかの近衛護衛班長さんが担当してくれているらしい。
「はい、そのようです。村からは離れており、村の者達が出入りするような場所ではありませんでした」
女性近衛護衛さんの報告によると、村から離れた場所……水道を引いている川のある方面、つまり東の方で森に出入りする複数の人の痕跡を見つけたのだとか。
痕跡というか、足跡だな。
魔物でも人の足の形と近いのはいるみたいだから、雨も含めて時間が経って形が崩れれば、はっきりどちらかの判別がつかなくなるみたいではある。
けど、その足跡は靴の形だったため、人間……もしくは獣人なども含めた人であるのは間違いないらしい。
「また、村の者達にも聞き取りを行いましたが、そちらから入るような者はいないとの事です」
「まぁわざわざ遠くから森に入る必要はありませんからね。それに、今はフェンリル達もいるのでなおさら村に近い場所から入るでしょう」
「はい。それと、発見した足跡ですが、どうも複数人いる事は間違いないうえ、古い物と新しいものがあり、何度も出入りしているようです。古い物とはいえ雨などで流される事もありますので、残っているのはまだ新しい物と思われます」
単独ではなく複数の人が、何度も村の近くから森に出入りしているというわけか。
森の異変には人が関わっている可能性が高まったないようだ。
ユートさんの勘、当たったのかもしれない。
まぁ、森に出入りする人がいたというだけで、まだ確実にそうだとは断言できないけど。
「……ふむ、その足跡はどれくらいの期間で付いた物だ?」
報告を聞いて、口に手を当てて考えていたエッケンハルトさんが聞く。
「はっ、フェンリル達にも確認をしてもらいましたが、古い物で二十日より以前の物は残っていないと。新しい物は、十日程と思われます」
「十から二十か……さらに前の物は残っていないにしても、それ以前から出入りしていると考えるべきだろうな」
エッケンハルトさんの問いにフィリップさんが答えてくれた。
何度も、という事だから残ってなくても二十日以前にも、出入りしてないと考えられない。
「その足跡は、その期間の間にも?」
「はい、二日から三日の周期で出入りしている痕跡がありました」
聞いてみると、新しい物と古い物の足跡の間にも、出入りしているらしき痕跡があったらしい。
足跡の残り方とか、残り香? みたいなのをフェンリル達に嗅いでもらって、判断しているんだろう。
「出入りのどちらが多いのだ?」
「同数です。一番古い物は森から出る足跡でした。そこから二日経った物が、森に入る足跡になっています。三日目……森に入った翌日の物が、出るための足跡でした」
「森に入って翌日に森を出る。さらにそこから二日後にまた森に入るって周期でしょうか」
「そのようです」
二日間、森の中で過ごして何かをやり、森を出てから三日で戻って来る……か。
「新しい物から十日、周期から外れているため、もう来ない可能性もあり得るが……どう思う、タクミ殿?」
エッケンハルトさんから、俺に意見を求められる。
十日も経っているから、何かしらの目的を果たしたかで、もう森に用はなくなったと考えられるけど……どうだろうか。
「本当に一日と二日の周期で、森に出入りしていたとはまだなんとも。もう少し、広い期間で調べてその通りだったら良かったんですけど」
「うむ、そうだな」
仕方ない事だけど、見つけた足跡がもっと期間が長ければ断定できたかもしれない。
単純に数が少なくて、もう少し情報が欲しいところだ。
「もう少し様子を見て、新しく誰かが入ろうとしないのであれば、でしょうか」
「あぁ、それが良さそうだ。もちろん、足跡を残すのを待つだけでなく、こちらから見つからないよう見張る必要もあるだろうが」
「そうですね……」
再び誰かが森の中に入るかもしれないと予想して、しばらくは様子を見る事にするのが無難だろうな。
そして、女性近衛護衛さんとフィリップさんが報告を続けてくれる。
「足跡の痕跡を追ったのですが、森の奥へ続いて途中で途切れていました、魔物がいてもおかしくない程の奥まった場所でしたので……」
「魔物の足跡であれば、複数が発見できました。が、人の物は途絶えたきりで、周囲にも残っていませんでした」
「痕跡が踏み荒らされるなど、上書きされていてもおかしくないか」
「はっ」
最後に森から出る足跡が十日前、魔物達も移動するのは当然だし、それによって人の足跡がわからなくなるのは当然か。
「途切れている場所には、不審な点は見つかりませんでした。フェンリル達の鼻などでも同様です」
という事は、途切れたさらに奥に何かの目的あったのか、それともその場所で何かをしたけど、痕跡がなくなったかのどちらかだな。
「争った形跡などはなかったのか?」
「そういったものはなく、逆に不自然な印象を受けました。我々が森に入ってから、襲い掛かる魔物もいたのですが……ほとんどフェンリル達のおかげで、短時間で排除できましたが。ですが、そういった場所であるのに、魔物と人が争ったような形跡は一切ありません」
「俺たちが、というかフェンリルと魔物が、っていうのなら調査をするうえで魔物を排除した時に付きましたが、それ以外には何も……」
土の上に残る足跡と違って、争った跡は雨が降っても簡単には流れてしまったりはしない……らしい。
まぁ戦ったのなら、少なくとも血の跡とかはあっておかしくないし、森だから地面以外に木に付いたりもするわけで、少なくとも十日程度で一切の痕跡がなくなる事はないんだろう――。
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