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早く話しておいた方が良かったみたいでした



「しかし、マリエッタ様にティルラ様は、エルケリッヒ様と一緒に考えているから、と答えたようで……」

「エルケリッヒさんが別邸に行く事も伝わった、という事ですね?」

「はい」

「それで、あの剣幕ですか……見てはいませんし、何を言っているかまではっきりとは聞こえませんでしたけど」


 蓋がされている伝声管を通すくらいというのは、かなりの声量だ。

 ちょっと遠くの人を呼ぶ程度の大声くらいじゃ、あぁはならない。

 というか、その程度で他の部屋に繋がっている伝声管を通って聞こえるなら、色んな声が聞こえてしまうからな。


「まぁ、マリエッタさんからすると、置いて行かれたうえさらに勝手にエルケリッヒさんが別邸に、というのはあまり面白くありませんよね」


 エルケリッヒさんが先代当主ではあるけど、マリエッタさんも色々協力していたようだし、二人の様子を見ていると亭主関白というわけでもないみたいだからな。

 良く言えば、お互い言いたい事を意見しあえる仲というわけだ。

 ……怒っている姿の印象が強いせいか、マリエッタさんの方が強そうだけど。


「いえ、マリエッタ様が怒った理由は違うようです」

「え、そうなんですか?」


 てっきり、自分に報せず勝手に事を進めようとしていた、しかもティルラちゃんという孫娘が関わっているから、怒っているんだと思っていたけど。


「話す機会は昨日のうちにいくらでもあったのに、話さなかったからというのが大きいようです。その場にいた使用人は、ティルラ様から聞いたマリエッタ様が昨日のうちにわかっていれば、と」

「あー、そっちですか」


 確かに、昨日は怒ったり交渉したりと色々あったけど、話す機会がなかったわけじゃない。

 それこそ、食事の時にも話せていただろうし、カナートさんとの交渉後にエルケリッヒさんとエッケンハルトさんを連れて行き、話し合っていた時にも話せたかもしれない。

 ただこれは、話していない事を知っていて伝えなかった、俺やクレア、セバスチャンさんも同罪とまでは言わないけど、ある程度悪いな。

 後で、マリエッタさんに謝っておこう。



「それじゃ、リーザの事をお願いします」


 マリエッタさんの方は、セバスチャンさんが行った事で収拾に向かっていると思われるため、とりあえず俺達は朝の支度をする事にした。

 いつも起きる時間より少しだけ早いけど、完全に目が覚めてしまったからな……日中に眠くなったりしなければいいけど。


「はい、畏まりました」

「ん~……」

「ワッフ」


 リーザをライラさんに任せ、一緒に付いていくらしいレオを見送る。

 中途半端に起こされたため、まだ眠そうにしていたリーザはさっきまでの声への怯えはもうなくなったようだ。

 顔を洗えば、スッキリして目が覚めるだろう。

 なんて考えつつ、用意されたお湯で顔を洗う。


 今更だけど、洗面所的な物が欲しい……ここでは基本的に、自室で身なりを整えるのが通常らしいけど、お湯が飛び散らないか気を遣ってしまう。

 掃除の手間を増やしたくはないからな。

 まぁ、もう慣れてしまっているから、今更だけど。


 ちなみにリーザは、隣にあるリーザの部屋でライラさんとか使用人さんに手伝われて、身だしなみを整える。

 別邸の頃は、用意されたけどほぼ使う事のなかった客間でやっていた。


「……おっと!」

「ひゃ、タクミさん……!」


 支度を終えて部屋の扉を開けると、今まさにノックしようとしていた恰好のクレアと遭遇。

 どうやら、俺の部屋を訪ねてきたところのようだ。


「クレア、おはよう」

「おはようございます、タクミさん。お婆様のあれは……」

「ははは、クレアも聞いたみたいだね」

「えぇ。あれで起こされました。タクミさんもですか?」

「うん。レオやリーザもね」


 出会いがしらだったので少し驚いたけど、とりあえずはクレアと朝の挨拶。

 俺達と同じく、クレアもあのマリエッタさんの怒号によって起こされたらしい。

 クレアの部屋にも伝声管はあるし、屋敷全体が震えるような声量だったから、なくてもある程度聞こえて起きていたかもしれないが。


「昨日のうちに、お婆様に話しておくべきでした」

「確かに。俺とクレアは特に、話せる時間はあったからね……怒られるかもしれないけど、後で謝っておこう」

「お爺様に対してなので、私とタクミさんが怒られるほどではないと思いますけど、はい」


 クレアの後ろには、エルミーネさんがいるので俺の所に来たライラさんのように、なんでマリエッタさんが怒ったのか教えられたんだろう。

 さすがに再び怒号が飛ぶように怒られる事はないとは思うけど、ある程度覚悟して謝らないとな。

 俺とクレアは、昨夜もマリエッタさんと話していたし、それこそエルケリッヒさん達より話す余裕はあったはずだから。


「それではクレアお嬢様、私は……」

「えぇ」


 俺と合流したからか、その場を離れるエルミーネさん。

 朝、周囲には俺とクレアしかいない状況……エルミーネさんにお膳立てされている気はするけど、それで止まる俺達じゃない。


「タクミさん、ん!」

「うん、クレア」


 いつもの恒例行事、義務……なんて言ったらクレアは怒るだろうか?

 ともかく、朝の挨拶の一つになって馴染んでいる、俺を上目遣いで見ながら両手を広げて待つクレアを抱き締めて、ハグをした。

 何度もやっているのに、それでも抱き締めると少しだけ照れた表情になって、ほんのり頬が赤くなるクレアが、相変わらず可愛い。

 そうして、ちょっとだけ長めにハグをして離れ、マリエッタさんに謝るため……というより、いつもより少しだけ早く朝食のために庭へと向かった。


 まだ準備は全部整っていないだろうけど。

 廊下での話題は、レオやリーザが大きな声に驚いていた事だ。

 途中でレオとリーザ、ライラさんが合流……目が覚めたからだろう、リーザはいつものように元気が良かった。

 ちなみに、俺やクレアだけでなく屋敷内の多くの人が飛び起きるくらいの怒号だったにもかかわらず、エッケンハルトさんはまだ寝ているらしい。


 エッケンハルトさんが使っている部屋にも、伝声管はあるはずなのになぁ。

 安心してくつろげているとも言えるが、朝に弱いだけでなく、眠りが深いタイプなんだろうな――。





読んで下さった方、皆様に感謝を。


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