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1596/1998

早朝に響く怒号に起こされました



「――――!!」

「っ!?」

「うにゃ!?」

「ワフ!?」


 なんとなく、夢を見ているような感覚から、突然の怒号により驚いて目を覚ます。

 周囲を見てみると、リーザもレオも同じく驚いて起きてしまったようだ。

 リーザなんて、耳を忙しなく動かしながら目を大きく開いて、キョロキョロしている。

 耳を動かしているのはレオも一緒か。


「今のって……」


 あまり聞き慣れない声、だけど聞き覚えのある声だった。

 寝ていた時に響いたし、部屋の外からなのではっきりと聞き取れていないけど、口調に関しても衝撃と共に覚えがある。


「――!! ――――!!」

「また聞こえた……」


 再び聞こえる怒号……屋敷全体が震えているんじゃないか、と思えるような響き方だった。

 特に俺の部屋は、伝声管もあるためそこから声が増幅されて聞こえているっぽい。

 本来は蓋をしているし、今もそうなんだけど……伝声管の中を伝ううえで内部で声が増幅されるらしく、向かって喋ると結構鮮明に声が届く代物だ。

 とはいえ、日常生活でちょっと大きな声で話したりする程度なら、伝声管に向かってでなければ特に声が伝ってきたりはしないんだけど。


 よっぽど、大きな怒号を轟かせているんだろう。

 昨日は寝るのが遅くなったはずのに、大丈夫なのかな?


「ワ、ワフゥ」

「うぅ……」


 聴覚が鋭いためか、レオは床に伏せて前足を鼻の上に乗せて耳をぺたんと畳む。

 リーザはベッドから出てレオに身を寄せ、こちらは両手で耳を押さえている。

 人間の耳でも、驚くくらいの音量だから、レオやリーザにとっては結構な大きさで聞こえてしまっているんだろう。

 俺もベッドから出て、レオやリーザを安心させるように撫でてやる。


「―――。――!」

「あれ、声が段々と小さくなった……ん? はい!」

「旦那様、ライラです。よろしいでしょうか?」

「ライラさん? えーと……はい、どうぞ!」

「失礼します」


 伝声管から聞こえる、屋敷すら震わせる怒号が少しずつ音量を下げ、聞こえなくなっていくのに首を傾げた。

 それとほぼ同時、部屋の扉が外からノックされて返事をすると、外からライラさんの声が。

 少し考えて、入室の許可を出す……起き抜けだけど、男だし特に気にする必要はないよな、ライラさんは別邸にいた頃もお世話役だった事もあり、何度も寝ぐせが付いたままの姿を見られているし。

 まぁ、女性に見られるというのが少し恥ずかしくもあるが。


「申し訳ありません、旦那様。声は聞こえていたと思われますが……」

「そうですね。驚いて起きました。レオやリーザもこの様子で」


 部屋に入るなり頭を下げるライラさんに、レオとリーザの様子を示して見せる。

 怒号がほとんど聞こえなくなったけど、まだ耳を塞いでいてさっきとあまり変わらない状態だ。


「レオ様、リーザお嬢様、申し訳ありません。驚かせてしまいましたか……大丈夫です、今セバスチャンさんが止めに行ったので」

「ワフゥ」

「ライラお姉さん……」


 謝りつつ、俺と同じようにレオとリーザを撫でるライラさん。

 手が増えた事でか、怒号が聞こえなくなってきたからか、安心して顔を上げるレオ……それでも、ちょっと情けない顔だったけど。

 リーザも、安心したようだ。 

 しかしレオ、マルチーズだった頃からだけど、相変わらず大きな音や声は嫌いなんだなぁ。


 まぁ、今回は寝ている時に突然だったから驚いてというのもあるだろうけど。

 マルチーズの頃は、大きな音……特に雷が鳴ると、ブルブル震えて俺にすり寄ってきたものだ、懐かしい。

 今も、雷は苦手なのかな? いやでも、初めてラーレと会った時、撃ち落とすために電撃みたいな魔法を使っていたから、大丈夫になったのかもしれないが。

 おっと、それよりもまずはライラさんとさっきの怒号に関してだな。


「そういえば、もうほとんど声が聞こえませんね? 一体、何があったんですか?」


 セバスチャンさんが行ってくれているなら、すぐになんとかなるだろうし、聞こえなくなったので収めてくれたんだろうけど、どうして朝から怒号が響く事になってしまったのか。

 ちなみに誰が、とは聞かない。

 だって、あんな屋敷を震わせるほどの怒号を発せられる人なんて、一人しかいないからな。

 昨日は庭でだったけど、屋敷内で響かせるとこうなるのか……。


「朝早くに起きたティルラ様とシェリーが、庭でじゃれ合っていたのですが、そこにマリエッタ様が起きてきたのです」

「マリエッタさん、あんまり寝ていないだろうに朝早いなぁ」


 昨日は俺が退室した後も客間でクレアと話していただろうに、起きるのが早くて寝不足になっていないか少し心配だ。

 まぁ、少しでも寝れたのなら一日くらいならなんとかなると、二日以上の徹夜を経験した事のある俺は思ってしまうが。

 もしかしたら、染みついた習慣とかで目が覚めたのかもしれないな。

 ティルラちゃんとシェリーは、他のフェンリル達やラーレとかと遊んでいたんだろうな、朝早く起きてというのは別邸にいる頃からよくあった事だし。


「最初は、ラーレやシェリー達を交えて話す程度だったのですが、ティルラ様がマリエッタ様に……ラクトスでこの先やろうとしている事を話したようなのです」

「この先って事は、スラムとかそういう?」

「はい。そして、スラムに関してなら自分が詳しいからと、マリエッタ様が張り切ったようです。私は見ていませんが、見た者が言っておりました」


 そういえば、高齢だろうし怒り過ぎるのもいけないと考えて、昨日のうちには伝えないよう、セバスチャンさんやクレアと話していたっけ。

 まぁ、スラムの事を話す程度なら、そこまで怒られはしないとは思うけど、ティルラちゃんにはそのことを言っていなかったな。

 一応翌日になっていて、その日じゃないからというのは屁理屈か。

 というか、マリエッタさんは止めなかったのか……可愛がっている孫が、スラムに関わるのに難色を示すのではと俺は考えていたが。


 まぁ、セバスチャンさんがいるし、安全面はできる限り十分に考慮しているとわかったからかもな。

 あと、ラーレがティルラちゃんを守るのであれば、そうそう危険な事なんてないだろうし。

 スラムをよく知るマリエッタさんだから、どんな危険があるかなどもわかっていて大丈夫と判断したのかもしれない。

 ……孫に頼られたいから、というだけだったりはしないと思う、多分――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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