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クレアの気持ちに照れてしまいました


 

「いえ……そんな事は、ないのですけれど……でも、でも……」

「クレア?」


 でも、でも、と繰り返すクレア。

 心配になって、俺もマリエッタさんもクレアの様子を窺う。

 呆然としていたクレアはだが、段々と目に光が灯っていくように、喜びに溢れる表情になって行った。


「私、タクミさんと同じになれるんですね!?」

「え、えっと……き、気にするところはそこなのクレア? 私はてっきり、大きな力を手に入れたと考えて表情を明るくしていったのだと思ったんだけれど……」

「俺は、ティルラちゃんと同じようにギフトを……と考えたのかと思いました」


 俺もマリエッタさんも、クレアの表情が変わるのを見て本人の考えとは別の事を考えていたみたいだ。

 魔力も多く、ギフトも持っているティルラちゃんに対して、姉として嫉妬とまでは言わなくても、複雑な感情を抱いていておかしくなかったのに。

 それが、少しでも解消されたのかな? と思っていた。


「だって、タクミさん……深刻な様子ではありませんでしたけど、時折悩んでいたようですから」

「え……そうかな?」

「はい。いえ、本当にそうかはタクミさんに確認していないのでわかりませんけど、なんとなく悩んでいるのかな? って。ギフトに関連した話になると、深く考えていらっしゃる事が多いですし」

「まぁ、それは確かに……」


 ギフトというか、『雑草栽培』については考える事が多い。

 どんな物を作るかだけでなく、どう使うかとか。

 ただ、自分でも悩んでいるという程ではないと思うし、有効に使えて誰かのためになれればいいなってくらいだ。

 あぁだから、クレアは深刻な様子ではないと言ったのか。


「それに、ギフトの過剰使用で倒れる事もありましたから。きっと、タクミさんはその事についても、苦しんだんじゃないかって……私は倒れる瞬間を見ていましたが、見ているだけしかできません。当事者であるタクミさんの苦しみや悩みをわかってあげられるのは、結局同じギフトを持った人じゃないかって考えていました」

「苦しんでいるって程では、ないんだけどね。でも、そうかぁ」


 俺の気持ちに寄り添えるから、クレアは喜んだのかもしれない。

 まぁ、確かにあの倒れる瞬間の事は、今思い出しても少し怖くはあるけど……でも、苦しんでいるという程じゃないんだが。

 とはいえ、心配されているのもわかって心苦しいというのはあったか。

 あとどれだけギフトを使うと危険になるか、というのはまだ慣れていないのもあって手探り状態だったからな。


「クレアはクレアで、ギフトという特別な能力を持つタクミさんに、どうより添えられるかをかんがえていたのね」


 笑みを深めてクレアを優しく見つめるマリエッタさん。


「それは、まぁ。だって悔しいじゃないですか」

「悔しい? それは、ティルラの方にギフトが発現した事かしら?」


 少し恥ずかしそうにするクレアに、マリエッタさんが首を傾げて聞く。


「それもないとは言いませんが……その、タクミさんはいつも一緒に、と言って下さいます。一緒に、歩幅を合わせようとしてくれるのがわかるんです。言葉でも、行動でも」


 歩幅を合わせて一緒に、とクレアが言うのはもちろん外を歩いている時の事ではない。

 いやまぁ、一緒に歩く時にはできるだけ歩調も合わせて歩くようにしているけども。


「中々いないわね、そう言ってくれる男性は」

「そ、そうですかね?」


 こちらに視線を向けるマリエッタさんに、ちょっと照れて頬をかきながら答える。

 付き合う、恋人、という事はつまり一緒に歩んで行こうとしている、と俺は考えている。

 伯父さんと伯母さんという、仲がいい例が近くにいたからだけど、ともかくそんな二人に憧れる気持ちと、俺なりの男女間でそうできればという考えでもある。

 まぁ、まだまだ初心者と言えるだろうし、自分でも大袈裟に考えていてむしろそれは結婚して夫婦になってからだろう、見たいに考える事もあるけど。


 それはともかく、どちらかがどちらかに付いて行くとかではなく、できるだけ一緒に色んな事を経験して、様々な事を感じて行けたらな、と思って言っている言葉だ。

 ……やっぱり、まだ恋人同士になったばかりの俺達には、重い事かもしれないが。


「だからこれでまた一つ、タクミさんとの一緒が増えたって事です。それが私には、一番嬉しいんですよ」

「そ、そうなんだ……ね」


 さすがに、そう真っ直ぐ言われると照れてしまうな。

 いつもは俺や他の誰かが、よく赤くなって照れるクレアをからかったりするのに、こういう時真っ直ぐな言葉を紡げるのもクレアらしいのかも。

 クレアの気持ちが、ものすごく嬉しい……まったく、敵わないなぁ。


「ほほ、タクミさんも照れているわね。若い二人がそうしているのを見ると、若返るような気持にもなるわ」

「お婆様まで、セバスチャンやエルミーネと同じような事を……」


 セバスチャンさんが似たような事を言っていたのは聞いた覚えがあるが、エルミーネさんもなのか?

 そう思って、エルミーネさんの方を見てみると、マリエッタさんに同意するようコクコクと頷いていた。

 しかもその表情は明るく、楽しそうだ。


「全ての人がとは言わないけれど、この年になると……いえ、もっと下の年齢の頃からだけど。若い男女の初々しい姿や仲がいいところを見ているとね、微笑ましく思えてしまうものなのよ。一部の者は、それが趣味になっているのもいるようだけれど、ね?」

「……」


 ちらりと、言葉の最後にエルミーネさんの方を見るマリエッタさん。

 何も答えず、いそいそとお茶のおかわりの用意をしているエルミーネさんは、その問いかけを肯定しているように見えた。

 そんな趣味があったのかあの人……いやまぁ、ユートさんのような傍迷惑な趣味ではないし、俺がとやかく言う事でもないし、趣味は自由だけど。


「とはいえ、いくらクレアとタクミさんの二人で、一緒がいいと言ったとしても、同じになる事はないわよね? ギフトで同じ能力、というのがあり得るかはともかく、クレアとタクミさんでは違い過ぎるもの」


 俺のギフトは『雑草栽培』で、植物に関する能力。

 近い能力や同じ能力のギフトはあるのかもしれないけど、人を見る能力というのは『雑草栽培』とはかけ離れているんだから――。



読んで下さった方、皆様に感謝を。


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