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1591/1998

クレアは特別な能力を持っているみたいでした



「それで……えぇっと、タクミさんがクレアの事をどう呼ぶか、だったかしら?」

「いえお婆様、私やお父様の人を見る目について、です」

「あぁそうだったわね。年を取ると忘れっぽくなっていけないわ。そうね……クレアもハルトも、私が驚くくらい人を見抜く力があるわ。本人達はあまり自覚していないようですけれど。いえ、ハルトはある程度自覚して、それを有効に使っている節もあるかしら」


 それは、見どころのある人に訓練をさせるという、趣味に通じる話だろうか。

 エッケンハルトさんは商才もあるという事だから、そちらでも生かされているのかも。


「私は、特別には思えないのですけれど……なんとなく、その人の事を見ていればどんな人かわかるだけで」

「それが既に、特別なのよ。ね、タクミさん?」


 こちらにウィンクして見せるマリエッタさん。

 これはあれか、俺からクレアを誉めろと言っているようなものか。

 クレアの能力を認めて、褒めるのに躊躇いはないからいいけど……意外とお茶目な事をするんだなぁ。


 ウィンクした時のマリエッタさんは、少しだけ幼く見えた。

 俺の倍以上は生きている人に対しての感想としては、かなり失礼かもしれないが。


「見ただけでどんな人か、内面がわかるのはそれだけで特別だよ、クレア……んー。うん」


 最後、またクレアがむくれないよう、さんを付けそうになったのを堪える。

 マリエッタさんの前で呼び捨てをするのは、なんだか照れくささも感じるが、また話が変に逸れちゃいけないからな。


「エッケンハルトさんもそうみたいだけど、クレアが特別だから、こうして俺がここにいるとも思える。それに、ライラさん達もそうだけど使用人さん達も……」


 クレアが選んだ使用人さん達、ライラさんもそうだけどその人達のおかげで、色々助かっているからな。

 自分がどう見えているのかはともかく、クレアが信じてくれたからこそ、俺は公爵家の人達、使用人の人達にも受け入れられたんだ。

 フィリップさんのような護衛さん達にも。

 人を見抜く力……さすがに全てがわかるわけではないと思うが、それでも善人か悪人かの見極めができるだけでも、十分に能力と言えるだろう。


「あ、ありがとうございます……?」


 無自覚な能力を褒められて、頬を赤く染めながら戸惑うクレア。


「ハルトから受け継いだ、とも言えますが……どちらかというとクレアの方が、人を見抜く力は上でしょうね」

「私が、お父様より?」

「そうなんですか? 同じ物かと思っていたんですけど」

「元は同じかもしれないわ。クレアが受け継いで生まれて、成長する過程で能力も育ったとも考えられるわね。ハルトのは、相手が悪人かどうかを見抜く力。クレアはそれに加えて、見た者の性根がわかる……といったところかしら。さすがに私は当事者ではないから、どのように見えているのかはわからないけれどね」


 つまり、エッケンハルトさんの能力にプラスアルファを付け加えたのが、クレアだって事なのか。

 性根がわかる、善人か悪人かという事の他にも、その人の心がどのように向いているのかまでわかる、というものが想像できる。

 つまり、真面目かどうかとかちゃんと働くかどうかとか……善人だからって、そのすべてが働き者かはわからないからな。

 ただそれって、能力というのは間違っていないけど、特殊能力……それこそ……。


「なんだか、ギフトみたいだ……」

「え、ギフトですか? いえ、さすがにそんな大きな事では……」

「ふむ、成る程。タクミさんはそう評しましたか。私と同意見ですね」

「え、お婆様!?」


 思わず口を突いて出た言葉に反応する、クレアとマリエッタさん。

 マリエッタさんも、クレアの能力がギフトのようだと思っていたらしい。


「こういった話をするつもりではなかったのだけれど……私はねクレア。ギフトが発現したらしいティルラではなく、あなたがギフトを持っているのではないか、とずっと考えていたのよ」

「私が、ですか? ですけど、私自身を調べた時には、ギフトがあるなんて事は……」


 調べたというのは、イザベルさんの店にあった魔力を調べる水晶玉……魔法具で魔力を調べた時の事だろう。

 いつの事だかはわからないけど、魔力を測定する意味で調べていたらしいし。

 あれがあれば、俺やティルラちゃんの時のようにギフトの有無だけでなく、その能力やギフト名などもわかるはずだから。


「よく考えてみてクレア。色々と伝え聞いてはいるけれど、ティルラは元々魔力を調べた時に、ギフトを持っているかはわからなかったわ」

「そういえば……」

「ティルラちゃんの時の事を考えると、はっきり発現していなければ、調べてもわからないのかもしれません」

「えぇ、私はそう考えているわ。事実、これまでギフトを所持する人物として、歴史に残っている人達の全てが、特殊な能力を持っている。何かしらの影響を受けている、と判明してから調べてギフトがあるとわかったみたいね」


 歴史上にどれだけの人数がいるのかはわからないけど、ユートさんやジョセフィーヌさんは俺と同じ異世界からで、ギフトを持つ条件に当てはまるから最初から持っていた。

 だから、ギフトを持っているかという疑いがあるかどうかに関わらず、確実に調べれば持っていると判明しただろう。

 それに対し、遺伝などでティルラちゃんのように受け継がれた場合、後々に発現する事があるらしく、何かしらの事を成したり影響が疑える時点で、ほとんど発現しているようなもの。

 それまでに調べても判明していなかったのが、改めて調べてようやくわかるんだろうな……それこそ、ティルラちゃんの時のように。


「あくまでも憶測だけれど、もしかするとクレアにギフトが発現する可能性というのも考えられなくないわ。今は無自覚で、本当に発現しているというわけではないのでしょうけど」

「わ、私が……ギフトを……」

「ちょっと、クレアには重かったかしら? ティルラのように、幼い時分なら前向きに受け入れられたのかもしれないけど。タクミさんとの事があるクレアには、すぐに受け止められないかしら」


 呆然とした様子のクレアに、少しだけ申し訳なさそうな表情のマリエッタさん。

 天真爛漫なティルラちゃんだからこそ、突然自分にギフトがあるとわかっても、簡単に受け入れられたのはあるのかもしれない。

 俺は異世界だというのもあって、多少そういうものかという考えがあったけど、それでも最初は自分の能力だと、自分の力の一部みたいに思えるようになるのにすぐにとはいかなかったからな――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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