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ダンデリーオン茶が売れそうでした



「それは良い事。では、これくらいの量を……」


 微笑んで、マリエッタさんが欲しいダンデリーオン茶の量を提示。

 譲り受けるとかではなく、ちゃんと対価を払っての購入という事なので、交渉というか商談になるのか。

 まぁ俺としては、個人的に飲む程度なら譲るのでもいいんだけど……薬草畑の販売品目には含まれていないし。

 けど、マリエッタさんが提示した量がちょっと問題かな。


「お婆様、急に大量にはさすがに……」

「んーっと、用意できなくはないですけど、ちょっと相談が必要かと……そうですね、そういった事の担当は使用人のキースさんに任せていますので」


 提示された量は、十人単位の人が毎日飲んで数か月はなくならないだろう、という数だった。

 欲しい物に対して、一度にできる限り求めようとするところは、ちょっとクレアと似ているかなと思う……ニャックの時なんて、ラクトスに売りに来ていたカナートさんから買い占めるのに近いくらいだったし。

 ともあれ、そういった話は全てではないけどキースさんを通してでなければ、俺が怒られそうだ。

 薬草畑に直接関係しているわけではないけど、俺の使用人、そして事務的な事や経理に関してお願いしているからな。


「全てを任せているわけではありませんけど、相場の事や商談などはキースさんに話すようにしているんです」

「成る程、そうですか……わかりました。では明日にでも、キースと話しをする事にしましょう」


 ニヤリと笑ったマリエッタさん。

 キースさんには悪いけど、マリエッタさんとの商談をまとめて欲しい……もちろん、必要なら俺も同席するけど。

 というか、俺がギフトを使って作る物なので、俺も話くらいは聞いておかないとな。

 どれくらいの価格で売るかとか、どれくらいの量を売るかなど、把握しておかなきゃいけない事もあるし。


 あと、ないとは思うけど大量に作らなきゃいけなくなったら、大変なのは俺になるわけだから。

 ちなみにその後の話で、最初に大量のダンデリーオンを求めたのは、ただ吹っ掛けに近い様子見だったらしい。

 商談や交渉において、難色を示すだろう大袈裟というか大量の注文をして、話し合いで本当に欲しい量を引き出すための手段だとか。

 初めに多く言っておけば、段々と少なくしていく事で本来の目標設定してある数を引き出しやすい、という俺でも聞いた事がある交渉術ってところかな。


 俺相手に、そういった探り合いのような事はしなくても……薬草畑に関する事ではないし、とは思ったけどマリエッタさん曰く癖になっていてつい、と謝られた。

 もちろん相手を見ての事で、沸点が低くて吹っ掛けたらすぐに怒りそうな相手にはやらないよう気を付けている、とも笑っていたけども。

 クレアも同意していたけど、俺は温厚な人物として認識されているようだ。


 できるだけ落ち着いて、冷静に……という心掛けは多少なりともあるけど、自分が温厚なのかはよくわからないな。

 まぁ、悪い事として言われているわけじゃないから、素直に受け取っておこう。


「今の話でも出ましたが、使用人達は役に立てていますか? 公爵家からの使用人を雇っているようですが」

「はい、皆知らない事の多い俺をフォローしてくれて、凄く助かっています。身の回りのお世話もしてくれていますし……最初は、誰かにお世話される事に慣れませんでしたけど、ははは……。でも、今では少しくらいは慣れましたかね?」


 次に振られた話は、雇った使用人さん達の事。

 別邸にいた使用人さんと、本邸から来た使用人さんをそれぞれ雇っているので、マリエッタさんも知っている人が多いんだろう。

 というか、全員知っていてもおかしくないか。

 別邸の使用人さんも、元は本邸で働いていた人達なわけだし……この場にいるエルミーネさんも、マリエッタさんとは顔見知りのようだから。


「ふふ……タクミさん、最初はライラやゲルダ相手にも戸惑っていましたものね?」

「まぁ、これまでは自分の事は自分でやるしかなかったからね」


 笑うクレアに苦笑する。

 日本では、一部のお金持ちは使用人さんというか家政婦さんというか、身の回りの世話や部屋の掃除などをしてくれる人を雇っているかもしれない。

 けどただのブラック企業勤めの俺では、とてもじゃないが雇えないからな。

 まぁ、レオの事もあったから定期的に大家さんとか、伯母さんとかが訪ねてくれたりもしたし、レオの面倒を見てもらう事はあったけど、それくらいだ。


「護衛とかも必要な場所じゃなかったし、フィリップさんとかの護衛さんが一緒に行動をするっていうのも、最初は驚いたよ」

「タクミさん、自分の身を守る必要があるとお父様に言われた時、護衛を雇うのではなくお父様に剣を習う事を選択していましたからね。まぁ、あれはお父様の押しの強さもありましたが」


 誰かに守ってもらう、という感覚がなかったからなぁ。

 何度も頼りになるレオに任せる場面があり、クレア達との暮らしに慣れたから、今では違和感はなくなったけど。

 この世界に来てすぐの頃は、自分でできるのなら自分で対処しなきゃと考えてもいたから、エッケンハルトさんに剣を習ったんだ。

 レオも勧めてくれたし。


「ハルトの悪い癖ね。若者を育てるという意味では悪くないのだけれど、ちょっと趣味に走り過ぎね。昔からそうだったのよ。私が注意しても、抜け出して街で知り合った人を連れて来て……もちろん、ハルトが見込んだ人物だから、怪しい人や悪い事を考える人はいなかったのだけれど。それだけが、唯一の救いかしらね」


 エッケンハルトさん、昔から同じような事をしていたんだ。

 フィリップさん達のように、護衛兵になる人を見出して訓練をするよりも前にもなんて。


「まぁ、そのハルト自身がまだまだ未熟だったせいで、教えるのはほとんど公爵家に所属する兵だったのですけどね」

「ははは……」


 いつ頃からかはわからないけど、エッケンハルトさんだって未熟だった時期があって当然。

 それでも連れてきた場合は、本人ではなく別の人に任せたらしい。

 ある意味で、自分にできない事は他の人に頼る事ができると、いいように取る事もできる、かな?




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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