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ユートさんがいる事を疑問に思ったようでした



「んぐんぐ……あがごも……」

「閣下、口の中の物を飲み込んでから話して下さい。行儀以前に、汚いです」


 マリエッタさんに答えようとしたんだろうけど、口にハンバーグとご飯を一緒に詰め込んでいたため、まともに話せずルグレッタさんから注意されていた。

 ちょっとだけ、中身が出そうになっていたから、確かにルグレッタさんの言う通り汚い。


「んぐっ! ふぅ……我が物顔っていうのはちょっと酷いと思うよ、マリエッタちゃん」

「……その呼び方は、止めて下さいと以前から申しているはずですが?」

「おっと、ごめんごめん。そうだったね」


 口の中の物を水で流し込んだユートさんが、息を吐きつつマリエッタさんへ不満そうに言った。

 マリエッタさんは呼ばれ方に不満があったらしく、そちらも不満顔。

 まぁユートさんは、クレアとかレオもちゃん付けだからなぁ……実年齢でユートさんにかなう人が存在するかも怪しいわけで、女性は大体ちゃん付けで呼ぶ感じなのかも。

 例外としてルグレッタさんがいるけど。


「そういえば、どうしてずっとここにいるんだろう? 迷惑とかじゃないけど……色々と教えてもらっているし」

「え、タクミ君もそれを言うの!?」

「いやだって、結構自由に色んな所を旅している、みたいな事を言っていたのに、なんだか馴染んでるから」


 助けてもらっている面もあるのは間違いないけど、ユートさんがここに留まる理由はないなぁと、今更ながらに思う。

 いや、俺という同じ日本人がいる事や、レオがいるのも関係してはいるんだろうけど。

 国内を遊びまわ……旅して見て回っている自由な人でもあるみたいだから、そのうちフラッとどこかへ旅立ったりするのかなぁ、くらいには思っていたが。


「え~、あれだけ意気投合して、心の友にもなったのに酷いなぁ」

「……そんなものになった覚えはないんだけど」

「タクミさんは、ユートさんとは砕けた口調で話すのですね?」

「まぁ、そこはね。ちょっとタクミ君は僕にとっても特別だから、僕の方からそうして欲しいってお願いしたんだ。ね?」

「ね? と言われても……」


 しかもウィンク付きで言われても、顔をしかめるしかできないからやめて欲しい。

 極々一部、女性の使用人さん数人がにわかに色めき立ったような気がするから。

 テオ君やユートさんと仲良く話していると、何故か妙に使用人さんの……特定の女性からの視線が絡みつくような気がするんだよなぁ。

 気のせいだとは思うけど。


「とにかく、タクミ君に興味があってね。ちょっとしばらくここにいて観察させて欲しいなって。だから、もうしばらくいると思うよ」

「もうしばらくですか……」

「うん。何年くらいになるかはわからないけどね」


 と、そういったユートさんに、俺も含めてクレアやエッケンハルトさん達が大きく反応した……もちろん、マリエッタさんも。

 数か月、とかならまだしも年単位が出るとは誰も考えていなかったからな。


「あはは! 嘘嘘、冗談だよ。どれくらいいるかはまだ決めていていないけどね」


 ユートさん流の冗談だったのか……。

 生きている年数の桁が文字通り違うため、冗談でも出て来る単位が年になるのは、ある意味ユートさんだからだろうか。

 冗談ではないと思わされるくらい、生きている人だからなぁ。

 ともあれ、マリエッタさんとも旧知の仲の様子のユートさん、どれくらい前に知り合ったのかはわからないけど、ユートさんの容姿が変わらない……具体的には年を取ったように見えない事を、マリエッタさんが不思議に思っている様子はない。


 後でエルケリッヒさんにこっそり聞いてみたんだけど、ユートさんに関する詳しい事は当主と一部の許された人のみが知る事で、マリエッタさんには伝えていないらしい。

 だけど、エルケリッヒさんとの話やその他の事から、ある程度は察しているとか。

 さすがに日本からとか、建国主だとかまではともかくとしてだ。


「もしかして、ユート閣下はタクミさんを取り込もうと……?」

「え? あ、違う違う。個人的に仲良くしたいし、仲良くなれてるとは思うけど、取り込もうなんて考えていないよ。そもそも、そんな事をしても僕には意味がないからね」


 まぁ、仲良くないわけじゃないか。

 同じ日本人だから親近感はあるし、ある程度遠慮なく接するようになれているから。

 それはともかく、俺を取り込むって……まぁレオやらギフトやらがあるから、マリエッタさんがそう考えたのかもしれないな。

 その後は夕食を進めながら、なんだかんだとマリエッタさんがユートさんにお小言を言いつつ、役割がなんだとか話していた。


 役割? と疑問に思ったが、それはユートさんが国内を見て回る事に対してらしい。

 国外にも行く事があるらしいけど、国内をユートさんが回るのはそれなりに意味があるんだとか。

 自由気ままに旅をしているだけかと思っていたけど……何やら、個人として回る事で身分のあるなしに関わらず、国では発覚させにくい悪事を見つけたりとか、そういう事みたいだ。

 どこぞのちりめん問屋のご隠居かな? と頭に浮かんだけど、ユートさん以外には通じないので口には出さなかった。


 ……絶対、時代劇の事を思い出したかで、そういった役割を持たせるようにしたんだろうなぁ。

 紋所ではないけど、大公爵と王家の紋章も持っているみたいだし。 

 ちなみにそのユートさんだけど、マリエッタさんからのお小言はルグレッタさんのとは違うようで、苦手そうにしている。

 相手とか、言い方によって違うのだろうか……これまでは男性相手、特に俺相手でもおかまいなしだったのに、ユートさんでも特殊な趣味方面ではなく苦手に思う事ってあったんだなぁと、ちょっと面白い。


「僕の事よりさ、ほらこれ。ニャックって言うんだけど……」

「ニャック……? 聞いた事がありませんね。ふむ……変わった食感ですが、特別美味しいという程でも。私は、このお味噌汁というのが気に入りました」


 ブレイユ村の特産になりつつあるけど、これまではただの保存食扱いだったためか、マリエッタさんはニャックを知らないようだ。

 まぁエッケンハルトさんやエルケリッヒさんも、俺から聞いて実際に食べるまでは、どんなものか知らなかったから当然でもある。

 ブレイユ村で作られている事や、その名前は聞いた事があったらしいが。

 それが今や、カナートさんからどれだけ仕入れるかの交渉をするくらいになっているけど――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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■7巻書影■mclzc7335mw83zqpg1o41o7ggi3d_rj1_15y_1no_fpwq.jpg


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