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また同じ事が起こる可能性がありました



「ワフ?」

「どうしました、タクミさん?」

「どうされましたか?」


 思わず漏れた俺の声に、レオだけでなくクレアやセバスチャンさんも反応する。


「いやその、もしかしたらマリエッタさんがまた怒りそうなことが一つあったなぁと……ティルラちゃんと、別邸にエルケリッヒさんが行くって……」

「あ……そ、そういえば……お婆様には何も相談せず、お爺様が決めてしまっていました。取り消す事ができないわけではないでしょうけど……」


 マリエッタさんからすれば、ラクトスのスラムに働きかけるティルラちゃんの補助とはいえ、別邸に行くというのはこの屋敷に来たのと同じく、勝手に決めた事になるんだろう。


「大奥様の事ですから、自分も行くと言い出しそうではありますが……これはまた、もう一波乱ありそうですな。とりあえず、今日のところは伝えないよう気を付けた方が良さそうです。こういうのもなんですが、お年を召されているので一日に何度もというのは少々心配ですからな」

「そ、そうですね……」


 見た目は、クレアの母親と言っても通用するくらい若いけど、実際はそれなりの年齢だろうからなぁ……血圧とか血管とか、怒り過ぎて色々な事が心配だ

 ただ、マリエッタさんの体調を慮ってすぐに伝えない、というのもそれはそれで燃料投下にならないかという心配もあったりする。

 エッケンハルトさん達への怒りようを見ていると、相手の反論は許さず、ただただ相手に詰め寄る形だから、こちらの言い分を聞いてくれなさそうだし。


「なんにせよ、もう一度同じ事が起こってもおかしくないと、覚悟はしておいた方がいいですね」

「は、はい。そうですね……」

「意味があるかはわかりませんが、私は被害が広がらないよう努めましょう」

「エルケ、ハルト、聞いてんのか!! お前たちはいつもいつもいつもいつも! 面白そうだとかで勝手に決めて……!!」

「いや、それはしかし……」

「さ、さすがに全て面白いかどうかでは……」

「反論は聞かないと言っているだろうがっ!!」

「「「はぁ……」」」

「ワフゥ……」


 響き続ける、マリエッタさんの理不尽な説教のような何かを聞きつつ、俺とクレア、セバスチャンさんとレオの溜め息が重なった。

 ……勝手に決めて、とも言っているからそこでも怒っているんだよなぁ。

 ティルラちゃんと別邸へという件は、この先必ず波乱というか再びマリエッタさんの怒りを買う事間違いなしな気しかしなかった――。



「タクミさん、お見苦しい部分をお見せして、申し訳ございません」

「いえ……まぁ、はい」


 あれから、セバスチャンさんの言う通り体感で三十分も経たないうちに、怒りが静まったマリエッタさん。

 最後には説教というか、罵倒に近い感じになっていたのはともかくとして……幾分かスッキリした様子のマリエッタさんに謝られる。

 さっきまでの荒れた雰囲気から一転、客間で話していた時のような、気品のある雰囲気に戻っているんだけど、落差が激しくて俺としては苦笑しつつ頷くしかない。

 あれが、俺に向けられないよう気を付けないとなぁ。


「それにしても、使用人だけでなく他の者も含めて、共に食事をするのですね?」

「あ、はい。一緒の方が仲良くなれそうというか、打ち解けやすいでしょうから」


 マリエッタさんが来訪しても、夕食は変わらず皆と一緒にだ。

 もちろん、料理人さんも含めて配膳などもあるため、全ての人ではないのはいつもの通りだけど。


「タクミ殿は、分け隔てなく接する事を望んでいますからな。私達だけでなくユート閣下も、使用人も、雇っている者達もあまり関係ないようです、母上」


 マリエッタさんの隣、エッケンハルトさんとエルケリッヒさんが怒られた事の名残か、少しだけ体を固くしながら座っている。

 ユートさんは少し離れた場所で、お腹を押さえているけど……いつもならこちらの近くに座るのに、珍しいな。

 マリエッタさんが苦手なのかな?

 ちなみに、お腹を押さえているのはマリエッタさんの怒号を聞いて庭に来てから、大爆笑をし続けたせいだ。


 あの状況で笑えるのはある意味すごいと思うが、それで腹筋が痛くなったらしいのは自業自得でしかないため、筋肉回復薬草などは渡していない。

 ルグレッタさんから、溜め息を吐きながら止められたのもあるけど。


「そのようね。貴族である事を誇りに、公爵としての責務はあれど驕らず、不必要に権威を振りかざさない……リーベルト公爵家の理念にも合っているわ。私達にはできず、タクミさんだからこそできたのでしょう」

「うむ。同じように考えたとしても、我々では中々難しい事もあるからな」


 そういうものだろうか? 俺としては、むしろエルケリッヒさん達公爵家の人達が、そうしたいと言えばできる気がするけど。

 まぁ、何かしらのしがらみとかもあるのかもな。

 そもそも、貴族家に生まれたら使用人さん達とは別々に食事をするのが当たり前すぎて、逆に一緒にという発想にいたらない、なんて事もあるのかもしれないが。


「それにしても……」


 そんな事を話して、配膳が終わり夕食が始まった頃、目を細めてとある席に視線を向けるマリエッタさん。

 そこには、腹筋の痛みはどこへやら、ハンバーグをご飯の上に乗せて掻き込むユートさんの姿があった。

 ハンバーグとご飯か……目玉焼きがあればロコモコができるな、なんて関係ない事が頭に浮かんだけど。

 卵はこれからに期待だな、ジュウヤクの消毒液ができれば作れるだろう……っと、それはともかくマリエッタさんだ。


「どうしてここに、ユート閣下が我が物顔でいるのでしょうか?」


 単純に、ユートさんがいる事が気になっただけか。

 一応、テオ君やオーリエちゃんに関しては、怒りが静まった後エッケンハルトさん達が説明したみたいだけど、ユートさんに関しては話していなかったのか。

 客間で話していた時、テオ君たちがレオにくっ付いていた時は、レオが気に入った村の子供を連れているんだと思っていたらしい。

 リーザも同じくだけど、フェンリルに腰を抜かした時子供達と遊んでいたから、そう思っていたとか。


 テオ君とオーリエちゃんを、マリエッタさんがわからなかったというのは少し驚いたけど……エルケリッヒさんが家督を息子のエッケンハルトさんに渡したのは十年以上前の事らしいから、無理もないのかもしれない。

 ただテオ君には会った事があるらしいが、それも赤ん坊くらいの頃らしく、当然テオ君は覚えていないし、成長したテオ君を見てもマリエッタさんがわからなかったのも仕方ないか――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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