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ジェーンさんに見られていました



「わかった、気を付けるよ。クレアが悲しんだりしないようにね」


 差を付ける、というのはもしかしたら言葉が悪いかもしれないけど……ちゃんとクレアを特別扱いしないとな。

 特別扱いしているとわかるように、接するよう気を付けよう。

 クレアは間違いなく、俺にとって特別なんだから。


「そういうわけで、もっと信じてもらえるようにこうして……」


 クレアとの事になると、すぐに調子に乗ってしまう俺。

 髪を撫でる手は止めずに、もう片方の手でクレアを抱き寄せ……。


「んんっ!」

「あ……」

「ジェーン、いたのですね……」


 ようとしたら、廊下の隅から聞こえるわざとらしい咳払い。

 ジェーンのものだった。

 よくよく考えれば、リーザの部屋と執務室は同じ二階なわけで……完全に二人の世界に入り込んでしまっていたけど、ついさっき話したジェーンさんがいるのは当然の事。


「申し訳ありません、クレア様、旦那様。私の事は目に入らなかったかもしれませんが……只今リーザお嬢様がお勉強中ですので。もし続きをなされる場合は、どちらかの寝室に入ってと……」

「寝室……っ!」 

「っ! き、気を遣わないで大丈夫よ! それと、ごめんなさい」


 リーザが部屋で勉強を頑張っているのに、俺はその外の廊下で何をしているのかと。

 ついでにボソッと付け加えられた寝室という言葉に、妙な意識をして反応してしまう。

 クレアもそれは一緒だったようだ。


 別邸にいた頃からだけど、浮かれている部分も間違いなくあって、周囲に人がいるのも関係なく二人の世界に入り込む癖は、気を付けないといけないな。

 そのうち、ラブ結界とかユートさんやエッケンハルトさん辺りに言われそうだ……いや、名称は今適当に考えたし、相変わらずセンスはないけど。


「はぁ……アルフレットも旦那様くらい積極的だったら……」

「それは、アルフレットさんに直接言って下さい」


 さすがに夫婦間の事を俺は関与しないから、溜め息を吐きながら言われてもなぁ。

 それに、アルフレットさんは一部変な知識を持っていたり、間違っていたら落ち込んだりもするけど、基本的に冷静な人だから、難しいんじゃないだろうか?

 いや、冷静な人が積極的にならないわけじゃないとは思うけど、アルフレットさんがと言われると想像できない。

 あと夫婦というか愛の形は人それぞれってやつだ、余計な事を言わない方がいいだろう。


「タクミさんは、ジェーンが羨ましがる程なの……?」

「もちろんです、クレア様! 旦那様のように、周囲の目があっても愛情表現をする男性というのは……!」


 興味を持ってしまったのかクレアが質問をすると、激しい反応を返すジェーンさん。

 なんとなく、ここに居づらい空気というか……女性同士の談義が始まりそうな雰囲気を感じる。


「あーえっと……なんというか、俺は仕事があるから~……」


 そーっとクレアから離れて、執務室の扉を開けながら中に体を滑り込ませ、一応クレア達には断りの言葉を残して逃げた。

 執務室の扉を閉める直前、ジェーンさんが何かを語りながらクレアを反対方向のクレア用の執務室に引っ張っていくのが見えた。

 クレアは興味深そうに聞いている様子だったが、俺には蟻地獄に引きずり込まれるように見えたりもした――。



「アルフレットさん、キースさん、ライラさん。これでどうですか?」

「確認いたします」


 執務室にて、紙に書いた図案をアルフレットさん達に見せる。

 絵心とかないから、不格好になってあまり自信はないけど、一応頭を捻って何度も書き直したものだ。

 何を書いたのかというと、以前クレアに言われた印章に使うための図案だ。

 印章と言われてすぐ思いつくのは、日本でのハンコで名前を使って……と考えていたんだけど、こちらでは図とか簡易的な絵な事が多いらしい。


 似たような物では、公爵家の紋章とかだな。

 一応、名前を図にしてという事もあるらしいけど、俺の場合は文字を書くと自動的にこちらの文字に変換されるという不思議な現象がある。

 そのため、とにかく意味のある文字を書くといくら崩していても、こちらの文字になってしまうので名前を使う事はできなかった。

 まぁこだわりがあるわけじゃないというか、図や絵をどうするかと頭を悩ませるくらいだったから、名前じゃなくてもいいんだけど。


「これは、ラモギでしょうか?」

「はい」


 俺が渡した紙を覗き込んだライラさんに聞かれる。

 大分簡略化というか、線画になっているけどやっぱり一番思い入れのあるラモギを図にする事にした。

 この世界に来て、クレアと出会うきっかけになった薬草だし、多くの人を助けてくれたうえ、これまでで一番作った数も多いからな。


「左右に伸びたラモギの間に描かれているのは、水滴ですか」


 今度は、キースさんが図案を見て呟く。


「水滴は、薬のイメージですね。薬が必ずしも液体というわけではないですけど、なんとなくそっちの方が想像しやすいかなと」


 わりと、ミリナちゃんの作った薬のうち、液体の体力回復薬に引きずられているような気はするけど、他の薬も液体である事がほとんどだ。

 錠剤やカプセル剤が作れないから、液体になるのも当然なんだけどな。

 液体以外だと粉末の物はあるけど、それはラモギでも表している事に……と俺の中で無理矢理拡大解釈をしておく事にした。


「まぁ、不格好なのでそれを下書きとして、誰かに清書してもらった方がいいとは思いますけど」


 水滴もラモギも、線が歪んでいてさすがにそのままでは印章には使えそうにない。

 そもそも、印章は小さいので簡略化されているのをさらに簡略化して、わかるようにしないといけないんだけども。


「成る程。薬草や薬を作り出すとしては、相応しいかと。クレア様にも、確認をしてもらいます」

「そうですね、お願いします。クレアの方にも、何か案があるようならそちらでもいいんですけどね」


 薬草畑や薬を売り出す商会になるわけだけど、あくまでクレアとは共同運営だから俺が一人で決めていい事じゃないからな。

 まぁクレアなら、反対しそうにはないけど確認は必要だ。

 もしかしたら既にクレアの方でも考えているかもしれないけど……クレアが考えるとしたら、レオやシェリーを象った印章になるかな?




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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