魔法を学ぶ相手を提案されました
「色が人の性格とかを示す、なんて事はよくある話かな」
「こちらではそういった話は少ないけど、そうだね」
人の性格や運命、考え方などなどを示す考えは日本にもあった。
占いとかでよく活用されていた印象かな。
この色のあなたは、こういう性格でこういう生き方が合っているとか、恋愛はこういう人がお似合いだ……みたいな。
それと同じわけではないけど、魔力の塊が人によって違うのなら、その人の人となりとかを示しているのかもしれない。
「魔力の性質と人の内面は似ているのかもね。いや、外見とかもそうかもしれないけど。髪の色とも同じだったし」
「髪の色……」
俺とユートさんは純粋な日本人なので、標準的な黒髪黒目だ。
だとしたら、できないけどもし魔力の塊を俺が出しても、どす黒い蠢く球が出て来るって事か。
……ユートさんの性格が黒いから、なんて失礼な事を頭の片隅で考えていたけど、自分もそうかもとなるとちょっと嫌だな。
「まぁ見た回数が少なすぎて、偶然そうだったかもしれないってくらいなんだよね」
少ない例だから、断言はできないって事か。
何はともあれ、俺には魔力の塊とやらを出せる程じゃないみたいだし、出してもあまり意味はない物なら、気にする必要はなさそうだ。
……フェヤリネッテの様子を見ていると、出せる人が近くにいた方がいいのかも、と思うくらいだな。
「そういえば、タクミ殿はそれなりの魔力を持っているんだったか?」
エッケンハルトさんから、思い出したように聞かれた。
「え、あ、はい。そうですね。ラクトスのイザベルさんにギフトのついでに調べてもらいましたけど」
確かあの時、頑張れば一角の魔法使いになれるかもと言われたんだっけ。
ティルラちゃんの魔力を調べた時の印象が強くて、自分の事はほとんど忘れていたけど……ギフトの方があの時は重要だったからな。
魔法は確かに憧れる部分もあるし、色々使ってみたいと思ったりはするが、今の所必要になる事がない。
以前、クレアに色々と属性的な呪文を教えてもらったくらいだし、なんとなく頼れるのは一番練習した明りの魔法だし。
「ふむ、それならこの機会にユート閣下から学んでみるのもいいのではないか? タクミ殿自身の、選択肢も増えるかもしれん」
ユートさんはさっきの話にあった、魔法の球を出せる条件の通り、扱いに慣れているみたいだから教えてもらう相手としてはいいのかもしれない。
「ん? タクミ君に魔法をかぁ、うん、全然いいよ!」
「軽いなぁ。でも、いいんですか? まだ剣の方も未熟ですし……」
エッケンハルトさんに言われて、少し考える素振りを見せたユートさんだけど、すぐに頷いて請け負ってくれた。
ただ、まだまだ未熟だとしか思えない剣の鍛錬もあるし、魔法にかまけていていいのだろうか、という思いもあったりする。
「未熟な場合、魔法でどうにか戦闘を切り抜けるよりも、剣などの武器を使った方が手っ取り早い。というのは確かにあるのだがな。タクミ殿の話を聞いているうちに、組み合わせというのも悪くないのではないかと思ってな」
「組み合わせ……でも、俺の話ですか?」
特に、魔法に関する話とかをエッケンハルトさんにはしていないんだけど。
「いや、タクミ殿からではなくクレアや他の者達から、タクミ殿の事を聞いたのだが……」
かなり前に、ランジ村でオークの襲撃にあった時だけでなく、フェンリル達の散歩中に屋敷近くで魔物と遭遇した時などの話を聞いて、エッケンハルトさんなりに考えた事らしい。
他にも、エッケンハルトさんと一緒に魔物と戦うため、森に行った時の事もある。
あの時も、やっぱり使い慣れている明りの魔法を使って、注意を引き付けたり怯ませたりなどもしたから、その事もあるんだろう。
あと、一応ヴォルフラウ関係でデウルゴと戦った時もか。
「もちろん、強力な魔法となると魔力の操作や長い呪文を使わなければならず、剣を振るうのにそんな余裕はないだろう。だが、ちょっとした隙を狙って、もしくは隙を作るために魔法を用いるのは、良い方法ではないかとな」
「成る程……」
明りの魔法に頼っているのも、練習したおかげで少しの集中と短い呪文で使えるからなのが大きい。
そこから、目を眩ませて隙を作って剣を振るう……というのが現状の俺の常套パターンになっている。
「選択肢、と言ったのはこれまでのタクミ殿の戦い方、そしてこれまで以上に合った戦い方を模索する時期かもしれんと、そう考えてもいるからだ」
「俺に合った戦い方……」
「もちろん、これは剣を教えている私の考えだ。レオ様がいるだけでなく、フェンリル達がこれだけいる状況だ。複数の国相手でも、大量の魔物が迫ったとしても、タクミ殿が戦う必要はないかもしれん」
まぁ、複数の国を相手とか、大量の魔物を相手にするつもりは一切ないから、真剣にこれ以上の戦いの技術を求める必要は、俺にはない可能性が高い……と思う。
この先絶対に一人になったり、その状況を何者かに狙われたりしないという保証はないし、そもそもがもしもに備えて剣を習い始めたけど。
「ふーん、武器と魔法をね。それじゃ、タクミ君には無詠唱魔法を教えるのもいいかもね。ちょっと使えるようになるまで過酷だったりもするし、根気もいるけど、僕から見たらタクミ君に合っていると思うし」
俺とエッケンハルトさんの話を聞いていたユートさんが、あっけらかんと言う。
「無詠唱魔法……そういえば、以前セバスチャンさんが説明しかけてたっけ」
別邸に行ってすぐ、初めてこの世界での魔法について、説明を受けた時に言っていたはずだ。
ただ途中で、元気になったティルラちゃんが入って来たので中断したままだった。
魔法関連のギフトを持っていて、詳しいユートさんがそう言うなら俺に合っているのかもしれない。
ただ……。
「過酷とか、根気がいるとか、難しそうなんだけど……」
「そりゃそうだよ。魔法を使う上で、一種の到達系でもあるからね。まぁ大艦巨砲主義的なのを魔法に求めているんだったら、違う方向性だけど。でも剣と組み合わせるなら無詠唱魔法がお勧めだね」
わからない言葉が出て来て、俺以外の人達が首を傾げているじゃないか。
「大艦巨砲主義って……」
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