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魔力の塊の話を聞きました



「さ、さすがシルバーフェンリル。うん、他の何者にもできないはずの事をやってのける、そこにしびれる憬れるぅ! というわけで、本来は妖精のフェヤリネッテしか触れないってわけ」

「……まぁ、突っ込みはしないけど」

「ワッフ……」


 勢いで誤魔化すユートさんを、レオと共にジト目で見る。

 色々言いたい事はあるけど、言うと話が進まないし、これもとりあえずシルバーフェンリルだからって事にしておいた方が良さそうだ。

 ちなみに、レオのジト目にはもう変な物を投げて来るな、という意思がこもっているように見えた。


「それで、その魔力の塊? に触れる事ができると何か……」

「ううん、特に何もないよ?」


 被せ気味に言って、楽しそうに笑うユートさん。

 何もないのに、なぜそこまで笑う事ができるのか……。


「魔力の塊はただ圧縮した魔力を外に出すだけで、放っておいたら勝手に霧散して消えるだけだし……強いて言うなら」

「言うなら?」

「お腹が膨れる? 妖精限定だけど」

「……本当に、意味はないんだ」


 美味しそうに食べているんだから、確かにお腹が膨れるのかもしれないけど……フェヤリネッテとか妖精以外には、特に意味のある事じゃないんだと納得。

 まぁ、どす黒い球だからもし人間も食べられるとしても、食欲はわかないけど。


「とりあえず、妖精に触れるのはなんでなのなかーって。調べてみたかったんだよね」

「単純な興味って事なんだ」

「うん。別に何かのために役に立てたいとかでもないし、研究者でもないからね」


 興味から、調べてみたいと思っただけみたいだ。


「調べるとしても、フェヤリネッテが嫌がるような事は……」

「もちろんしないよ。僕はそういうの嫌いなんだよね。対象の気持ちとかを無視して、自分のために調べるとかっての。マッドサイエンティストじゃないからさ」

「ならいいけど……」


 見る限り、魔力の塊を食べているフェヤリネッテは楽しそうだし、ちょっと調べてみるくらいはいいのかもしれない。


「もうフェヤリネッテも、レオやフェンリル達とかここにいる皆と同じように、仲間みたいなものだから。害するような事がなければ……あと、前みたいに変質者のように追いかけなければ、かな」

「変質者とは失礼な、あれは逃げる誰かを追いかけるための正式な作法なのに」

「そんな作法、土の中にでも埋めてしまった方がいいと思う」


 変質者的な追いかけ方や叫びに、正式な作法なんてあるわけないし。


「はぁ……それにしても、魔力の塊の……うぷ!」


 溜め息を吐きながら、魔力の塊について聞こうと思ったら、顔面に柔らかい何かがぶつかった。

 ふっかふかのタオルのような、マットのような感触で顔全体を塞がれる。


「仲間なのよう! そう言ってくれて嬉しいのよう!」


 この声と喋り方、フェヤリネッテか。


「フェヤリネッテ、突然抱き着いてこないでくれ。驚くから」


 指でフェヤリネッテの毛? をつまんでペリッと剥がす。

 さっきまで魔力の塊に夢中だったのに、話を聞いていたのか……よく見てみると、クレアもニコニコして俺を見ていた。

 皆の事を仲間みたいなものなんて、聞かれていたのが少し恥ずかしい。

 まぁ、着々と食事の準備が進む中で、多くの人がもうテーブルについているし、誰にも聞かれていない方がおかしいか、声を潜めていたわけでもないし。


「妖精の私も受け入れてくれた、タクミには感謝しかないのよう。ゲルダちゃんの事も、よろしくして欲しいのよう!」

「ちょ、ちょっとフェヤリネッテちゃん!?」


 これまで、心配そうにフェヤリネッテを見ていたゲルダさんが、驚き戸惑う。

 どす黒い得体のしれない物を食べていたから、心配そうにしていたんだろうけど……それを出したのがユートさんだから、見るだけしかできなかったんだろう。


「はいはい、わかったから。ゲルダさんにはいつもお世話になっていて、感謝しているよ。ほら、いいから魔力の塊を食べていなさい」

「はーい、わかったのよう」

「はぁ……もう、フェヤリネッテちゃんったら」


 摘まんだままのフェヤリネッテを、テーブルに転がっている食べかけ……三分の一くらい欠けている魔力の前に置く。

 ゲルダさんは、溜め息を吐きながら胸を撫でおろしていた。


「それでユートさん、話の続きだけど。あの魔力の塊って、なんであんなに黒いんだ?」

「あれはねぇ、僕の魔力の色なんだ。人には……というより、魔力を持っている者には全て色がある……と言われているよ」

「言われている? 確かめたわけじゃないんだ」


 興味を持って、魔力の塊に触れる妖精を調べたいのに、その辺りは調べていないのか。


「うーん、確かめたくても確かめられないかな。魔力の塊っていうのはね……」


 ユートさんによると、魔力を圧縮して塊とするだけでもそれなりに魔力の扱いに長け、魔法を使い慣れている人にしかできないとか。

 さらに、多くの魔力も必要なのでほとんどの人には不可能だと。

 体内に秘めた魔力の量で言うと、クレアがギリギリで、ティルラちゃんなら魔力の扱いに習熟すれば、一日一個くらいは出せるだろうとの事だ。

 ティルラちゃんは以前イザベルさんのお店で、ギフトの有無を調べる時に魔法具を壊してしまったくらいの魔力がある。


 それくらいで可能になるのなら、ほとんどの人には不可能だという事。

 だから、例が少なくて本当に人によって色が違うのか、はっきり言える程確かめられないと。

 ちなみにユートさんは、ギフトの副効果で無限の魔力があるからこそできる……まぁ、使い過ぎると倒れるから、本当の意味では無限じゃないんだけど。

 ともかく、長く生きているユートさんでも、魔力操作の習熟度、魔力量の二つの要素を満たして、塊を出せたのはユートさん自身以外に、二人くらいしか見た事がないらしい。


「その見た事のある人は、あんなどす黒くて食欲をなくすような色じゃないと?」

「食欲をなくすなんてひどいなぁ。でも、そうだよ。性格とか、髪の色とかが関係しているのか……僕が自分以外で見たのは、それらしい色だった」


 いやだって、フェヤリネッテが齧っている魔力の塊をよくよく見ると時折、黒色が蠢いているように見えるし……絶対に食べたいとは思わない。

 フェヤリネッテ、後でお腹を壊さないかな? 人間用だから妖精に効くかわからないけど、一応後で腹痛対処用の薬草を用意しておいた方がいいかもしれない、と真剣に思うくらいだからなぁ――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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