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建築費用の確認をしました



「はぁ……わかった。えっと、一応聞いておくけど、この匂い……というか椿の花の匂いでいいんだな? それと、変な効果があったりもしないよな?」

「グルゥ、グルルゥ!」


 溜め息を吐いた後、改めて聞いてみるとブンブンと何度も首を上下させて肯定するフェリー。

 匂いにも、成分というのがあって何かしらの作用をもたらすものだってあるからな、危険かどうかは確かめておく必要がある。

 特に、さっきあれだけ興奮したフェンリル達を見ているから、体に悪い作用とかがあったら大変だし。

 フェリーの様子から、好きな匂いってだけで危険はないみたいだし、大丈夫そうだ。


 しかし……フェンリルが寄って来る匂いとなると、椿油を一般にも普及させるのは考えなきゃいけないかもしれない。

 この屋敷やランジ村にいる人達は、近くにフェンリルがいて慣れているけど……多くは獰猛な魔物として恐れられてもいるわけで。

 そんなフェンリルが、目の前に現れたら驚くなんてもんじゃないからなぁ。


「とりあえず、フェンリル一体につき一つの花が行き渡るように作るから。とりあえず、作り終えるまでおとなしくしているようにしてくれよ? さっきみたいにされたら、作れる物も作れなくなる」


 まぁ何度か作ったので、集中はあまりしなくてもできるとは思うけど……さすがに揉みくちゃにされたら、『雑草栽培』を使うどころじゃない。

 間違えてフェンリル達に発動させてしまう心配はないが。


「グル!」


 いい返事だ。


「リーザ、ありがとう助かったよ。そういえば、リーザは椿の匂いは大丈夫だったのか?」


 フェンリル達のいる所へ戻り、一喝をしているフェリーを眺めながら、通訳してくれたリーザを褒めつつ聞いてみる。


「んー、好きな匂いだと思う。けど、フェリー達みたいにはならないよ?」

「そうかぁ」


 好きは好きだけど、興奮する程じゃないって事か。 

 嗅覚は鋭いけど、好みは人間に近いのかもしれないな。

 ジュウヤクの匂いは俺達と同じように、臭いと感じたようだし……一応デリアさんにも聞いてみたけど、リーザと同じ答えだった。

 まぁとりあえず、レオはしばらくリーザに近付いてもらえないだろう。


 少なくとも、体に付いたジュウヤクの匂いが取れるまでは。

 もし匂いが取れず、リーザに逃げられてレオが落ち込むようなら、もう一度お風呂に入れた方がいいのかもな。



 ――ジュウヤクと椿を作り終え、休憩を挟んで執務室へ。

 フェンリル達用の椿は、一番香りの強い花だけが必要なので他の部分は採取だけして保管。

 椿一つで結構な数の花を付けるため、二つ作ってそれぞれのフェンリルに行き渡るようにした。

 一体に付き一輪渡すと、尻尾を激しく振って喜んでいたから、作った甲斐があるな。


「ふんふふ~ん」

「……リーザ、ご機嫌なのはいいんだがもう少し尻尾を落ち着かせような?」

「は~い」


 素直な返事だけど、あんまり尻尾の動きは変わっていない。

 今リーザは、椅子に座る俺の膝の上に座って機嫌良く二つの尻尾を揺らし、耳も悲しみではなく喜びを表す意味でペタンと倒している。

 楽しそうにしているのは俺としても嬉しいんだけど、揺れる尻尾が時折俺の顔に被さったりしているからなぁ……まぁ特にやる事がないから、いいだけど。

 書類仕事は昨日までで終わらせられるのは終わらせたから、確認する書類も数枚程度だし。


「ねぇねぇパパ、これはなに~?」


 俺がリーザの頭越しに見ていた一枚の紙、それに興味を持った様子で、こちらを見上げながら聞かれる。


「ん~? これはな、フェンリル達が休むための場所を作る費用が書かれているんだ。どれにどれだけお金がかかったか、ってわけだな」


 建築費用の見積もりというか、資材などにかかった費用の概算が書かれているんだけど……これが驚く程安い。

 まぁ廃材の再利用もしているうえに、木材には困っていないし他から買わなくても十分過ぎる程にある村だから、なんだけど。

 人件費は手伝ってくれている村の人達はともかく、従業員さんは給料として出すので別計上だし、一番お金がかかっているのは釘などの金物だな。


 道具とかは、借りたり多くの人が持っているので、そちらも新しく買う必要はなかったみたいだし。

 多少の家の修繕や、日曜大工的な事はほとんどの人ができるらしく、従業員さんが引っ越してくる時の荷物に入っていたり、村の人達もそれぞれ持っているみたいだった。


「んむ~……難しい。よくわかんない」

「ははは、まだデリアさんから勉強を教えてもらう前だからな、仕方ない」


 紙に書かれている事を見て、首を横に倒すリーザ。

 まだ読み書きも教えていないわけで、読めない文字ばかりだからわからなくても当然か。


「それにしても、本当に建物を建てるだけだと安いんですね」


 同じ執務室にいるアルフレットさんに話し掛ける。

 今見ている書類を持ってきたのもアルフレットさんだ。


「はい。公爵領内でもこの辺り……フェンリルの森付近や、ランジ村北の森付近では、木材を使えばかなりの安価で建てられます」


 以前、数枚の葉を付けたロエ一つの販売額が、家を建てられるくらいだと聞いた事はあるけど、この分だと俺が考えているよりも大きな家が建ちそうなくらい、建築費用が安い。

 まぁ実際には、建築してもらう人手を雇ったり、廃材ではなく新しい木材を用意する必要があるため、厳密にはもっと費用が掛かるんだろうが。

 ……大きさだけで言えば、数十体のフェンリルが一度に入って休める大きさの建物のため、そこらの家よりかなり大きいけども。


「木材に適した木々のある森から離れれば、それだけ費用が掛かります」

「でしょうね……」


 木材を運ぶ輸送費が上乗せされるからだろう。

 土地の少ない街中じゃないし、木材の安い場所に居を構えられたのは幸運かもしれない。

 何か新しい建物を作るにしても、安くできるわけだからなぁ……今の所、何か作って欲しい建物はないけども。


 そんな風に、リーザを構いつつのんびりと書類を見ていると、執務室の扉がノックされた。

 結局匂い事情でお風呂に入る事になってしまったレオが、戻ってきたのかな? そのわりには、レオの鳴き声が聞こえないが……。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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