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ジュウヤクを作ってみました



「それに、椿にしたって僕が人脈を使うにしても、ここに呼ぶわけにもいかない。頼めば来る人もいるだろうけど、それじゃ日数がかかるからね」

「まぁ、確かに」


 そうか、別にユートさんの人脈と言っても、方法を探してくれる人達がここに来るわけじゃないか。

 ならちょっとだけ安心だ。

 椿油の抽出法がわかった後に、こうこうこういう人が関わって……なんて教えられて、冷や汗を流す事はあるかもしれないけど、今は考えないで良さそうかな。


「んじゃまぁ、ジュウヤクの見た目だけど……」

「ふむふむ……」


 とりあえず、作るにしても明日にして、ユートさんからジュウヤクの見た目など詳細を教えてもらいながら、屋敷に入った。

 少し長話をし過ぎたけど、レオやリーザは部屋で退屈していないだろうか?

 あと、クレアもか……寝る前のハグもまだだし。

 いや今日は、お風呂場での事があったし、お互い恥ずかしくなってしまいそうだから、なしかな?


 ――と思っていたけど、クレアは俺の部屋の前で待っていた。

 素振りで汗をかいて、まだお風呂に入っていないからと言っても、それでも構わないとハグを要求。

 何やら、俺の胸に顔をうずめて鼻を鳴らしていた気がするけど……気のせいだろうか。

 汗臭く思われていなかったらいいんだけど……。



 翌日、朝食も含めて諸々の用を済ませた後、ジュウヤクや椿を作るため庭の隅へ。

 ついでに、ヤイバナの事があるので念のため、レオやフェンリル達に話をした。


「それじゃ、レオ達は離れてくれー!」

「ワフ」

「グルゥ、グルル!!」

「ガウワフ、ガウ!」

「ガウゥ……!」


 俺が大きな声で注意を促すと、頷いて逆側の隅へと向かうレオ。

 フェンリル達は、フェリーもフェンもリルルも、それからフェルや他の庭にいたのも含めて、我先にと争うように屋敷の外壁を飛び越えて逃げて行った。

 ヤイバナの臭いが、トラウマにでもなっていたのだろうか……今日作るジュウヤクは悪臭を放つらしいけど、ユートさんの話だとそこまできつくないはずだし、その説明はしたのになぁ。

 まぁ、仕方ないか。


「師匠、頑張って下さい!」

「ははは、うん。なんとかやってみるよ」


 拳を作って期待した目を向けるミリナちゃんに、苦笑しながら答える。

 ミリナちゃんは、俺が薬草を作るとあって絶対に見たいと付いてきた。

 ジュウヤクはミリナちゃんが薬にするわけじゃないけど、まぁ勉強のためにだろう……もしかしたら『雑草栽培』を見たいからとか、自分が知らない植物を見たいからかもしれないけど。

 でも、どれだけ意気込んでもギフト任せなところがあるからなぁ、作れるように俺自身がちゃんと考える必要はあるが、気を張る必要はほとんどない。


 ちなみに、臭いの事も説明していたからか、ミリナちゃんはヤイバナの時と同じく口周りに布を巻いてマスク代わりにしている。

 手袋代わりの使い捨ての布も持っていて、準備万端だ。

 フェンリル達にそこまでしなくても、と考えていた俺もそうなんだが。

 他に、ユートさんも一緒にいるけどそちらは特に装備はなしだ……まぁ、作ったジュウヤクとかを包むためと思われる布は持っているけど。


 さらに、俺がユートさんの頼みで新しい薬草を、と聞きつけたというか俺やユートさんが話したので、クレアやエッケンハルトさん達だけでなく、使用人さん達や従業員さん達が集まり、屋敷の窓からこちらを見ている。

 こちらまで来ないのは臭い対策だろう。

 セバスチャンさんは、ヴォルターさんと話しながらも興味津々というのがありありとわかる様子で、こちらを見ていたりもする。

 皆に注目されているけど、こんな中で『雑草栽培』を使うのも慣れたな……最初の頃は緊張していたりもしたけど、今はそれもない。


「兄貴の能力……話には聞いていましたが、見るのは初めてで……なんか、緊張してきました!」


 さらに、ミリナちゃんの隣には同じく期待する、というか目を輝かせているニックがいる。

 本人は緊張すると言っているけど、期待している方が勝っている気がするのは気のせいじゃないだろう。


「ニックが緊張する必要は一切ないんだけど、そういえば見せた事はなかったか」


 考えてみれば、今まで『雑草栽培』で作った薬草を運んでもらっていたけど、直接見せるのは初めてだったか。

 能力を知っている人に対しては隠す必要がないから、見たいなら見せるけど……ユートさんと同じく無防備だ。

 まぁ、大丈夫だろう。


「それじゃとりあえず……ってそういえば、どれくらい必要か聞いていなかったっけ?」


 しゃがみ込み、手を地面に突こうとしたところでそういえば数を聞いていなかったなと、ユートさんを窺う。


「そう言えばそうだね。んー、できれば百とか二百とか欲しいけど、とりあえず無理のない範囲で二十くらいかな。できた分は、順次僕の方で送るよう手配するよ」

「わかった」


 百や二百か……一つのジュウヤクで、洗卵に必要な消毒薬がどれくらいになるかわからないけど、生で食べられる卵を流通させるなら、大量に必要なのは当然か。

 ギフトは過剰使用してはいけないので、とりあえずやり過ぎない程度に作っていこう。

 今日はこれまでに、しばらくやっていなかったヘルサルなどに卸す薬草作りもしてニックに渡したので、


「じゃあ……ん」


 数を確認し、改めて手を地面に突いてジュウヤクを頭に思い浮かべて、『雑草栽培』を発動。

 他の植物と変わらず、何もないはずの地面から芽が出て伸び、葉を付けて十字の花を咲かせた。


「おぉ、すげぇ……! これが兄貴の能力!」

「間違いなく、それがジュウヤクだね」

「確かに、見た事はあるかな」


 一つのジュウヤクが花を咲かせたところで手を離し、成長を止めさせ、大きく反応しているニックは置いておいて、ユートさんに顔を向けると頷いてくれた。

 ジュウヤク……ドクダミの葉は先が尖り、ハートのような心臓のような形で柔らかく、十字型の花も柔らかい。

 花に触れた感触では、他の草花と違って葉に近いから花弁と言うには少し違うのかもしれないが、とにかく日本で道端に生えている、見た事のある植物なのは間違いない。


「んー、匂いはないかな?」


 マスク代わりの布を外して匂いを嗅いでみるけど、悪臭を放つと聞いていたわりには特にこれと言った臭いは感じない。

 当然ながら、植物特有の青臭い感じの臭いはするけど、これを悪臭というのは違う気がするなぁ――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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