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木材の用意も大変なんだと実感しました



「一体何が……あぁ、ささくれかぁ。うわぁ、結構深く刺さってるな。っ……!」


 痛みの原因はと思って手の平を見てみると、小さな木材のささくれが親指の付け根辺りに刺さっていた。

 そりゃ痛いわけだな、なんて納得して平気な方の手の指先で摘まんで、一気に抜いた。

 深めに刺さっていたので抜く時も少し痛かったけど、刺さったままにはできないからな。


「よく見てみると、結構ささくれ立っているんだな」


 木材はかんな掛けはされておらず、積み重なっている木材は小さなささくれがそれなりにあった。

 このままの木材を使うと、今の俺みたいに誰かが触って刺さってしまう危険があるな……。

 道具を借りる時に、鉋を見かけなかったからもしかしたらないのかもしれないけど、対処をしていったりするんだろうか?


「すみません、ガラグリオさん。ちょっと聞きたいんですけど……?」

「そっちは……! こっちに持って……! すみません。なんでしょうかタクミ様」


 疑問に思ったら、まず聞いてみるのが一番だ……テオ君にも同じような事を言ったからな。

 という事で、作業する人に指示を飛ばしていたガラグリオさんに近付き、声をかける。

 邪魔しちゃったかな。


「あっちに積み上がっている木材に、結構なささくれがあったんですけど……」


 一応、心配させないように俺の手に刺さった事は隠して、ガラグリオさんに聞いてみる。

 ほんの少しだけ血が玉になっているくらいで、痛みももうほとんどないから、唾でもつけておけば治るくらいだし。


「あぁ、あれですか。あちらはまだ処理前なんです。伐り出したばかりの物や、しばらく放っておいた木材は仕方ない事なんですけど、毛羽立ってしまって」


 処理前なら、ささくれがあるのも当然か。

 これからなんらかの方法で、取り除くつもりなんだろう。


「そうなんですか。処理っていうのは、どういう事を? あ、もしお邪魔なら後ででいいんですけど」


 単純な興味から、ガラグリオさんに聞いてみる。

 忙しいなら今すぐじゃなくてもいいとは、念のため言っておく。

 建築作業を遅らせたくはないからな。


「いえ、さっきの指示出しで、しばらくは何もしなくて良さそうですから。それで、処理ですけど……あちらをご覧下さい」

「……?」


 ガラグリオさんが示した方を見てみると、そちらでは数人がかりで木材に対して作業をしているようだった。


「あれは……やすり掛けですか?」

「はい。大まかに削って、細かい部分はやすりを掛けて滑らかな表面にします。こういった作業までというのは、私も経験がありませんでしたけど……村の人達がよく知っていました」


 ガラグリオさんも、ランジ村の人から聞いたのか。

 経験者とはいっても、さすがに専門知識とかはなかったみたいだけど、そこは村の人がフォローしてくれていたようだ、ありがたい。

 勝手に俺が雇った人からと考えて、ガラグリオさんに頼んだからな。


「あぁ、最近建物を建てる事が多くて、手伝ってもいたみたいですからね」


 今俺達が住んでいる屋敷、村の入り口にある宿、児童館を始めとして村に新しく来た人達が住めるように作った家等々。

 全部ではないだろうけど、ある程度手伝っていたら交流も生まれて、専門的な知識が少しは入って来るんだろう。

 特に、ランジ村では木材加工が主な産業だったわけだし……建築とは関係なしに、ささくれを取り除く処理法は、元々知っていたのかもな。


「そういえば、いくつかの段階で木材を別けてあるんですね」

「そうですね、フェンリルに運んでもらった木材がまず一段階目として、そこからささくれなどの処理を終えた物や、用途によっても別けています」


 俯瞰してみると、木材が積み重なっているのがいくつかあり、処理がしてあるかどうかなどによって別けてあるのがわかった。

 すぐに使える木材は一番近くに、フェンリル達が他の場所から運んできた未処理の木材は、ひとまず一番離れた場所に。

 ガラグリオさんが言っている用途というのも、長さや太さなどによって別けれられているみたいだ。

 まぁ、柱として使う木材と、壁板にする木材は当然違うし、考えてみれば当然か……木の種類も違う物があるみたいだから。


「結構、力がいるんですね……!」

「ちょっとしたコツがあるんですよ、こうして……」


 ガラグリオさんと話した後は、俺も木のささくれ処理に参加。

 やすり掛けは繊細な作業らしかったので、大まかにできそうなナイフを使った削り作業。

 剣の鍛錬で、少しくらいは刃物の扱いに慣れた……と思っていたけど、当然ながらの別物で少しだけ苦戦。

 一緒に作業する人に教えてもらいながら、なんとかこなしていく。


「……ちょっと、リーザが使っているナイフに似てるなぁ」


 なんて、しばらく作業を続ければ独り言をつぶやく余裕も生まれた。

 木を削るためのナイフは、リーザが持っているグルカナイフと形が似ていて、あれを小さくしたような物だ。

 それを、木の表面に沿って滑らせるように、皮を剥ぎ取るように使って削っていく。

 大型ではないけど、枝打ちにも使えそうなナイフだなぁと思っていたら、それはそれで別の道具があるらしい。


 必ずしも専用の道具を使わなければいけないわけでもないらしく、今俺が使っているナイフでも、時折枝打ちをするみたいだけど。

 木を伐採するのに斧など大型の刃物が必要で、薪や木材のどちらかでも処理が少し違う部分があるので、それぞれに合った道具を使うとも聞いた。

 一つの木材を使えるようにするだけでも、色んな道具があるんだなぁ……と感心しきりだ。


「タクミ様、そろそろ休憩なさっては?」

「いえ、もう少し……ちょうど、面白くなってきたところなので……」


 釘打ちよりも、削る作業の方が俺の性に合っていたのか、ガラグリオさんからの声掛けにも首を振る。

 流れる汗を拭って、再びナイフを使う手を動かす。

 釘を真っ直ぐ打てた時の爽快感に近い感覚も良かったが、ささくれを削ってやすり掛けの作業が、少なくできそうな上々の仕上がりになった時は、達成感すら感じるくらいだ。


 全身を使いつつ、没頭できるような作業が俺の性格的に向いているのかもしれない、なんて思い始めたくらいだ。

 日が傾いてきたから、ぼちぼち作業を切り上げるタイミングだろうけど、もう少しやっていたい。

 もしかすると、最近は色々と考える事が多かったから、こうして無心で作業ができるのが楽しくなっているのかもしれないな――。




読んで下さった方、皆様に感謝を。


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